
授業で子どもたちが手づくりした石けんが、海を越えて途上国の衛生教育を支える。特定非営利活動法人なかよし学園プロジェクトが、広島県神石高原町立三和小学校の児童が制作した石けんをネパールの学校現場へ届け、現地の子どもたちとともに手洗いを学ぶWASH教育を実施した。
4億人超の子どもが手洗い環境を持たない世界で
同法人によると、WASHとはWater(水)、Sanitation(衛生設備)、Hygiene(衛生習慣)を指す国際協力・公衆衛生分野の重要概念だ。世界では今なお、多くの子どもが学校で安全な水や衛生的なトイレ、石けんを使った手洗い環境に十分アクセスできていない。WHO・UNICEFの報告では、世界で6億4600万人の子どもが学校で基本的な手洗い設備を利用できていないとされる。
今回の取り組みは、三和小学校の児童が自ら制作した石けんを、なかよし学園がネパール・ルパンデヒ郡の教育施設へ届け、現地の子どもたちと「なぜ手を洗うのか」「石けんを使うことで何が変わるのか」を学ぶ授業として実施したものだ。CDC(米疾病対策センター)は、石けんを使った手洗い教育が地域の下痢症を23〜40%、呼吸器疾患を16〜21%減らすと示している。
日本の子の学びが、ネパールの子の健康を守る教材に
授業では、現地の子どもたちが三和小学校の児童が作った石けんを手に、実際に手洗いを体験した。水だけでなく石けんを使って手のひら、指の間、爪の周りまで丁寧に洗うことを実践し、なかよし学園は手洗いを単なる衛生指導ではなく「自分の命を守る」「友達や家族の健康を守る」「学校全体の安心につながる」行動として伝えた。
地域で学び、考え、手を動かして作ったものが、国境を越えてネパールの子どもたちの健康教育に活用される。三和小学校の児童にとっては、自分たちの学びが社会と世界につながる経験となり、ネパールの子どもたちにとっては手洗いの大切さを体験的に学ぶ機会となった。なかよし学園の事務局長は、日本では当たり前にある石けんを現地の一人ひとりが大事そうに受け取り、手洗いをしながら笑顔になる子や友達に洗い方を教える子の姿を見て、学びが確かに世界に届いていると感じたと語る。
ルワンダの「AOGA SOAP」から続く広島発の連鎖
なかよし学園はこれまでにも、広島県三次市立青河小学校の児童が探究学習で制作した石けん「AOGA SOAP」をルワンダに届け、現地で手洗い授業を実施してきた。今回の三和小学校の取り組みは、その実践をさらに発展させたものだ。
同法人が重視するのは、支援物資を届けることだけではない。日本の子どもたちが学び、作り、考えたものが世界の教育現場で使われ、その反応が日本の学校に戻ってくることだという。この循環によって、日本の児童も自分たちの学びが世界の誰かの健康や未来に役立つことを実感できる。支援する側とされる側を分けるのではなく、互いの存在を知り学び合う関係をつくる取り組みだ。
小さな石けんから広がる、世界とつながる学び
なかよし学園の「世界とつながる学びプロジェクト」は、日本の学校で普段行われている学びや制作活動を、世界の教育支援につなげる取り組みだ。児童が作った石けんは単なる贈り物ではなく、「自分たちの学びが世界の子どもたちの健康を守る」「地域の学校で生まれた教材が国際協力の現場で使われる」という教育的価値を持つ。
代表理事の中村雄一氏は「石けんは小さなものに見えるかもしれないが、世界の学校現場ではその小さな石けんが子どもたちの命を守る大切な教材になる」とコメントしている。同法人は今回のネパールでの様子を三和小学校へフィードバックし、児童が自分たちの制作物が世界でどう活用されたかを学ぶ機会につなげる。教室で生まれた小さな行動が海を越えて誰かの命や健康を守る、その経験を各地の学校に広げていく考えだ。WASH教育は単なる手洗い指導ではなく、感染症予防や学校出席率の向上、災害時の衛生確保にも関わる。身近な石けんは、それを知識から行動へ変える入口になる。



