
海外市場の生活者や文化の文脈を読み解く国際市場調査と、植えた木を一本単位で確認できるEcoMatcher。一見すると異なる二つの事業を、グローカルインサイトは「見えないものを見えるようにする」という共通の役割で捉えている。企業の意思決定と、社会・環境への行動をどう具体的な実感につなげるのか。その取り組みを追う。
見えない価値を、見える形へ
環境への取り組みは、数字だけでは実感しにくいことがある。だが、自分が贈った一本の木がどこに植えられ、どのように育っているのかを家族と一緒に見守れるとしたら、環境をめぐる会話のきっかけにもなる。
グローカルインサイト株式会社の代表を務める中村健介氏は、実際に家族へ木を贈った経験を持つ。木の所在地や成長を一緒に確かめるうち、環境について自然と会話が生まれたという。中村氏が日本アンバサダーを務める植樹プラットフォーム「EcoMatcher」では、植えた木を一本単位で確認できる。写真、GPS、樹種、生産者などの情報がひもづき、植樹の成果を具体的にたどれる仕組みだ。
同社のもう一つの柱は、国際市場調査である。生活者の声や文化の文脈を捉え、企業の意思決定を支援する仕事と、一本の木の情報を可視化する仕事。一見異なる二つの事業には、同社が大切にする共通点がある。それが「見えないものを見えるようにすること」だ。
世界を見るために、現地の生活者と文化を読む
グローカルインサイトは、Globalの視点から調査対象国のLocalなインサイトを提供する国際市場調査機関だ。国内外の企業が商品やサービスを開発する際、対象となる各国市場の生活者や文化、文脈を踏まえながら、成功確率を上げるための良い意思決定を支援している。
調査対象の分担も明確である。二人の代表のうち、中村氏は中国以外のすべての国と地域を担当し、もう一人の代表である司馬氏が中国を担当する。それぞれの対象市場における生活者や文化、文脈を捉え、クライアント企業の判断材料として届けている。
同社が重視するのは、調査結果を提出して終わることではない。顧客から「その後の製品開発やブランド戦略に本当に役立った」と言われたとき、中村氏は何よりうれしく感じるという。長年にわたり継続して依頼する国内外の顧客も多く、信頼関係を大切に積み重ねてきた。
市場調査を通じて同社が見える形にするのは、対象国の生活者の声や、その背景にある文化・文脈である。調査で得た内容が製品開発やブランド戦略に活用され、クライアント企業のより良い意思決定につながることを目指している。
「やって終わり」にしない環境活動を探して
中村氏は市場調査の仕事を通じ、世界中の企業が「より良い製品やサービスを社会へより多く届ける」という思いを抱きながら意思決定する現場を見てきた。一方で、ESGやサステナビリティへの関心が高まるなか、「何をすれば本当に社会の役に立つのか」「活動の信頼性をどう伝えればよいのか」と課題を抱く企業も増えていると感じていた。
中村氏自身も、ESG活動は実施して終わるのではなく、成果が見え、継続でき、信頼される形であることが望ましいと考えていた。そうしたなかで出会ったのがEcoMatcherだった。
EcoMatcherでは、一本一本の木に写真やGPS、樹種、生産者などの情報が付与される。植えた木を確認し、その後も見守ることができる。中村氏は、一本の木にストーリーと証拠を持たせる透明性の高い仕組みに共感し、日本企業が植樹を通じて社会や環境へ貢献する取り組みを支援している。
同社にとってEcoMatcherは、長年携わってきた国際市場調査とは異なる領域に見える。しかし、生活者の声を可視化する市場調査と、企業の社会的インパクトを可視化するEcoMatcherは、「見えないものを見えるようにすること」、そしてより良い選択につなげることの二点でつながっている。
一本の木が、社員や顧客との会話を生む
EcoMatcherの活動では、企業から「環境活動がここまで具体的に見えるとは思わなかった」「植えた木を実際に見ることで、自分たちの取り組みに実感が湧いた」といった声が寄せられている。「わが社とは関係がないと思っていた環境活動にこれほど簡単かつ完璧に取り組めるとは思っていなかった」という言葉も印象に残っているという。
一本一本の木にはそれぞれのストーリーがあり、その内容を社員や顧客と共有できる。中村氏の家族との経験も、その特徴をよく表している。木を贈る行為だけで終わらず、植えられた場所や育つ様子を見守る時間が生まれる。そこから環境についての会話が始まり、数字だけでは伝わらない「つながり」を感じられる。
同社が思い描く活用場面は、環境活動の報告に限らない。記念品や販促品、福利厚生、社員表彰、顧客への感謝など、企業活動のさまざまな場面で「木を贈ること」が自然に選ばれる姿を描いている。また、多くの人が長きにわたる関係性を保ち、育む媒体としても捉えている。
贈られた木は、受け取った後も見守り続けることができる。企業がその木のストーリーを社員や顧客と共有できることも、多くの企業の共感につながっていると中村氏は感じている。木を贈ることが、環境への行動と人との関係を結ぶ場面を生み出している。
正しい理解と小さな一歩を、未来への行動に
グローカルインサイトは、国際市場調査を通じて企業の意思決定を支えながら、EcoMatcherを通じて企業や個人のサステナビリティ活動にも伴走する存在を目指している。市場を理解することと、社会や環境への行動を具体化すること。その両方を見える形にすることが、同社の役割である。
5年後、10年後には、「木を贈ること」が企業活動のさまざまな場面で自然に選ばれ、一つひとつの行動が世界中の森林や地域社会への支援につながる循環を日本でも広げたいとしている。多くの人が苦労や苦痛なく、地球や地域社会に良い活動へ参加できるきっかけをつくることも、その未来像の一つだ。
中村氏は、サステナビリティは一部の大企業だけが取り組むものではなく、企業の規模にかかわらず、自社らしい方法やその人らしい方法で社会や環境に貢献できると考える。
同社が市場調査で届けるのは「社会や生活者の声」であり、EcoMatcherで支えるのは、誰でもすぐに飛び込める形での「未来への行動」である。二つに共通するのは、「より良い未来は、正しい理解と、小さな一歩から始まる」という考え方だ。
生活者の声と企業の社会的インパクトを可視化し、より良い選択につなげる。グローカルインサイトは、国際市場調査とEcoMatcherという二つの事業を通じて、その役割を担っている。




