
川崎駅東口駅前広場で路上ライブをしていたシンガーソングライターKAKERUが、ライブ中に私語を続ける観客に対しマイク越しに「出てって」と注意した動画をXに投稿したところ、大きな反響を呼んだ。
本人は「正式に許可を得ている場所だ」と補足したが、「なら路上でやるな」「公道はお前のものじゃない」といった批判が殺到し、短時間で数百万回の閲覧を記録した。
公共空間で観客の行動を強くコントロールしようとした姿勢が、炎上の中心となっている。
マイク越しの「出てって」と本人の説明
11月7日、KAKERUは川崎駅東口での路上ライブ中の様子を動画で公開した。
動画では彼がマイクを握ったまま「後ろの三人さ喋るんだったら出てってくんない? めちゃくちゃ気分悪いんだけど」と直接呼びかけ、スマホをいじりながら会話を続ける行為を非難している。
「別にここでやんなくてよくない?」「なんでここでやるのよ」と問い詰め、他の観客も嫌な気持ちになると訴えた。
翌8日、炎上が広がると彼は「Xを開いたらプチ炎上していましたが、少し補足させてください」と投稿。
場所は正式に許可を得ていること、注意した相手は初見客ではなく以前から来ている人たちであること、通りすがりの人には同じ対応はしないことを強調した。
さらに「一人でも多くの人に自分の音楽を届けたい」から路上を続けていると説明したが、火に油を注ぐ結果となった。
登録者1136組の中で私語を排除しようとした勘違い
川崎市は2025年8月から駅前広場の路上ライブを登録制(ストリートミュージックパス)とし、4つの指定エリアで正午から午後9時まで演奏を認めている。
KAKERUが「正式に許可をいただいている」と主張する根拠はここにある。
登録制導入前の調査では1週間に約70組が演奏しており、2026年1月末時点では登録者が1136組に達し、1日あたり平均約9組以上が演奏している。
平日は6組前後、土日祝は14組前後と週末に集中する状況だ。
しかし登録制は道路使用許可に基づくもので、演奏場所と時間、音量を一定の範囲に収めるための仕組みに過ぎない。
観客の会話や行動までを演奏者がコントロールできる権利を付与するものではない。
多数のアーティストが入れ替わり立ち替わり演奏する公共空間で、特定の観客の私語を排除しようとするのは現実的ではなく、この点を理解していないとの指摘が相次いでいる。
「なら路上でやるな」が圧倒的多数を占めた理由
投稿に対する反応は批判が圧倒的で、引用やリプライの大半が否定的な内容だった。
「路上はお前のワンマン会場じゃない」「聴きたくない人からすれば勝手に歌っている方が迷惑」といった声が目立つ。
「音楽プロデューサーです」と名乗る人物も「路上を借りていることに感謝しよう」「公共の人に夢を押し付けないで」と注意を促す投稿を行い、大きな支持を集めた。
一部には「聴きに来ている人の時間を大切にするのはわかる」といった擁護もあったが、少数派に留まった。
川崎駅前では以前から路上ライブに対する「うるさい」「邪魔」という苦情が寄せられており、今回の一件はその延長線上で受け止められた側面が大きい。
ファンがいるならライブハウスを借りればいいという指摘
KAKERUは「ファンの大切な時間を同じように大切にしたい」と主張しているが、多くの批判者は「それならライブハウスを借りてやれ」と返している。
彼自身もライブハウスでの活動を行っていると認めている以上、観客の行動を強く管理したいなら有料の閉鎖空間を選ぶのが自然だという意見だ。
路上ライブの魅力は不特定多数の人に気軽に音楽を届けられる点にあるが、同時に私語や無関心な人もいることを前提にしなければならない。
わざわざ足を運んでくれるファンがいるなら、その人たちのためにライブハウスでじっくり聴いてもらう環境を整える方が、双方にとってストレスが少ないとの声が強い。
「96点の人」KAKERUの活動と今後
KAKERUは「96点の人」の愛称で知られ、TikTokでカラオケ採点96点以上しか取れない人として動画を投稿するなど、SNSを活用して活動している。
川崎駅東口を拠点に毎週定期的に路上ライブを行い、オリジナル曲をサブスク配信しているインディーズ寄りのシンガーソングライターだ。
所属事務所を2026年3月末に退所し、現在はフリーとして活動している。
今回の炎上をきっかけに注目を集めた形だが、批判的な声が大半を占める状況が続いている。
本人は「これからも自分の信念を持って歌い続けます」と投稿しているが、公共空間でのマナーと自身の活動方針の折り合いをどうつけるかが問われている。



