
東証スタンダード上場のランドビジネス傘下で、婦人服ブランド「INED(イネド)」などを展開するフランドルが、社員に自社商品を自腹で購入するよう求めていたと報じられた。社内会議では、購入額について「年収の3%から4%ぐらい」とする趣旨の発言もあったという。
年社員が自社の商品を気に入り、自分から買うことに問題はない。では、赤字を補うために社員へ購入を求めた場合はどうか。今回の問題を掘り下げると、「自爆営業」の是非だけではなく、売れない商品を社員に買ってもらうことで、会社は本当に立て直せるのかという経営の問題が見えてくる。
「赤字を補うために」社員へ自社商品の購入を要請
週刊文春によると、フランドルで2026年7月に開かれた社内会議で、社員に自社ブランドの商品を購入するよう求める説明があった。入手した会議音声には、「年収の3%から4%ぐらい」とする趣旨の発言や、値引きされた商品ではなく正規価格で買うことを重視する発言が残っている。社員からは、赤字を補うために自分たちで服を買い、売り上げをつくるよう求められたとの証言も出ている。
フランドルは「INED」などを展開する婦人服会社で、2023年に不動産会社ランドビジネスの傘下に入った。買収後も2期連続で最終赤字となっており、事業をどう立て直すかが課題になっている。今回の社員購入の問題は、そうした状況の中で起きた。
年収3~4%、社員の負担は十数万円規模に
年収400万円の場合、3%で12万円、4%なら16万円になる。500万円なら15万~20万円だ。年間で十数万円となれば、決して小さな負担ではない。特に会社から購入を求められ、断りにくい状況で支払うのであれば、一般的な社員割引で自社商品を買うのとは意味が違ってくる。
会社からの圧力によって社員が自腹で商品を買ったり、サービスを契約したりする行為は「自爆営業」と呼ばれる。問題になるのは、社員が自分の意思で買ったのか、それとも仕事上の立場から断れなかったのかという点だ。労働法に詳しい弁護士も、商品の買い取りを強要し、仕事上必要な範囲を超えていれば、パワーハラスメントに当たる可能性があると指摘している。
社員が買えば売上は増える。でも「人気」は分からない
社員が自社商品を買えば、その分だけ会社の売り上げは増える。例えば100人の社員が10万円ずつ買えば、単純計算で1000万円分になる。ただ、その数字だけを見て「ブランドが売れている」と判断することはできない。一般の客が欲しいと思って買った1000万円と、社員が会社から求められて買った1000万円では、売り上げが生まれた理由が違うからだ。
ここが、自爆営業のもう一つの怖さである。社員の財布で売り上げを補えば、本来見るべき「なぜ一般の客に選ばれていないのか」という問題が見えにくくなる。数字は増えても、商品の魅力やブランドの人気が上がったとは限らない。
親会社は黒字、それでも赤字の子会社をどう立て直すのか
ここで重要なのが、親会社ランドビジネスの状況だ。2026年9月期第3四半期までの連結売上高は206億8100万円で、前年同期比60.9%増。営業利益は37億5900万円となり、前年同期の赤字から黒字へ転じた。不動産関連事業の伸びが、グループ全体の業績を押し上げている。
つまり、「親会社まで経営難だから社員に買ってもらうしかなかった」という単純な構図ではない。グループ全体では利益が出る一方、フランドルでは赤字が続いている。だからこそ問われるのは、買収した事業をどう立て直すのかという経営側の判断だ。商品、価格、店舗、在庫などを見直して一般の客への販売を増やすのか。それとも社員購入によって不足する売り上げを補うのか。両者は同じ「売り上げ」でも、会社を立て直す意味は大きく違う。
アパレルだから「自社商品を買う」のは当たり前なのか
一方で、アパレル業界には他の業種とは少し違う事情もある。販売員が自社ブランドの服を着て店頭に立つことは珍しくない。実際に商品を着ることで客に着こなしを見せられ、商品の特徴も説明しやすくなる。社員自身がブランドを好きになり、商品を使うことは販売にもプラスになる。
しかし、「仕事で商品を知るために着ること」と「会社の赤字を補うために自腹で買うこと」は分けて考える必要がある。社員が自由に選んで買っているのか、購入額の目安を示されているのか、断ったことで不利益を受ける可能性があるのか。自社商品を身につける習慣がある業界だからこそ、どこからが仕事上の必要性で、どこからが社員への負担なのかを明確にする必要がある。
社員を「最後の客」にしたとき、経営は何を見失うのか
フランドルを立て直すために必要なのは、社員に何着買ってもらうかを考えることではない。なぜ一般の客が商品を買わないのか、どの商品が選ばれているのか、価格は合っているのか、店舗やブランドの見せ方に問題はないのか。そこを直さなければ、社員購入がなくなったときに同じ問題がまた表面化する。
売れないときに向き合うべきなのは、「社員がもっと買ってくれない」という問題ではなく、「なぜ一般の客が買わないのか」という問題だ。 社員を最後の客にすれば、一時的に数字は作れるかもしれない。だが、それでブランドが市場から選ばれるようになるわけではない。今回問われているのは、自爆営業の是非だけではなく、赤字の原因と向き合うべき経営が、その答えを社員の財布に求めていないかという点なのである。



