
家計負担の軽減が期待される一方で、町の弁当屋が「店頭価格は変えず減税分を利益に充てる」と公言する事例が報じられ、注目を集めている。
物価高と資材高騰が続く中、小規模飲食・弁当店の経営実態と減税がもたらす経済効果は。
「値下げしません」町の弁当屋が宣言した本音
東京・板橋区の弁当店がテレビ取材に応じ、「値下げはしません。少しでも利益に」と語った。
材料費や容器代の高騰で利益がほぼ出ていない現状を指摘し、減税分を価格に反映させず手元に残す方針を明らかにした。
同様の声は名古屋のワンコイン弁当店や他の中小店からも聞こえる。
税率が下がっても価格据え置きを選ぶ事業者が少なくない実態が浮かび上がっている。
店主らは「下げるのが筋だが、値上げしたくても十分にできていない分、値下げもしづらい」と口をそろえる。
減税の恩恵を消費者に還元するよりも、まず経営を維持する優先順位が高いことがうかがえる。
なぜ小規模店は減税分を利益に回すのか
小規模店の多くは年商1000万円以下の免税事業者だ。
税率が8%から1%に下がると、これまで益税として残っていた分が減り、売上が実質的に目減りする。
加えて食材や油、包装資材、光熱費が軒並み上昇しており、値下げする余裕がない。
価格転嫁が難しい薄利経営の中で、減税分を利益確保の手段にせざるを得ない事情がある。
大手チェーンがキャンペーンで値下げする可能性はあるが、個人・零細店では据え置きが広がる公算が大きい。
農家でも同様の動きが見られ、資材高騰を理由に販売価格を維持する声が複数確認されている。
減税は消費者向けの施策だが、現場では事業者の収益改善に使われるケースが目立つ見通しだ。
物価高で続く閉店ラッシュの現実
帝国データバンクによると、2025年の弁当店倒産は55件に達し、2年連続で過去最多を更新した。
米価や食用油の高騰、人手不足、コンビニ・スーパーとの競争が重なり、中小店の淘汰が進んでいる。
特にコメの仕入れ価格は数年前のほぼ2倍に達した時期もあり、弁当1個あたりの原価を大きく押し上げた。
食用油や容器などの包装資材も3〜4割上昇し、低価格帯を主力とする個人店ほど採算が取れなくなっている。
飲食業全体でも2026年上半期の倒産は東京商工リサーチ調べで509件と、1997年以降の集計で過去最多水準となった。
資本金1000万円未満の零細店が全体の9割近くを占め、原材料と人件費の上昇を価格に転嫁できないまま閉店を余儀なくされるケースが相次いでいる。
弁当店の業績では2025年度に赤字企業が4割を超え、減益を合わせると6割超が悪化したとのデータもある。
会議や法要などの大口受注の減少、テレワーク普及による事業所向けランチ需要の低下も追い打ちをかけ、地域の日常を支える店舗が静かに消えていく状況が続いている。
消費税減税の経済効果はどこまで期待できるか
家計負担は1世帯平均で年間5万円超の軽減が見込まれる。
一方、シンクタンク試算では個人消費の押し上げは0.4〜0.5兆円、実質GDP押し上げは0.2〜0.3%程度にとどまる。
食料品は必需品で需要の価格弾力性が低く、価格が下がっても消費量が大きく増えないためだ。
さらに事業者が価格を据え置く動きが広がれば、消費者への恩恵は試算より小さくなる。
2年間の時限措置である点も、持続的な景気押し上げ効果を限定的にしている。
財源は年間約5兆円規模とされ、赤字国債に頼らない方針が示されているが、具体的な確保策は今後の焦点となる。
物価高が続けば減税効果は1年程度で相殺される可能性も指摘されている。



