
「後継者に」と期待をかけられた29歳が、雇用主を殺し、仲間を生き埋めにした。6月29日、広島県警は広島市南区の無職・倉本幹太容疑者(29)を強盗殺人容疑で逮捕した。倉本容疑者が問われているのは、今年3月9日、三原市の会社敷地に掘った穴に幼なじみの徳田雅希さん(当時29)を埋め、窒息死させた疑いだ。徳田さんは今年2月に東広島市で起きたリフォーム会社社長・川本健一さん(当時49)殺害事件の「共犯者」であり、倉本容疑者が口封じのために手にかけたとみられている。
会社社長・川本健一さんを殺害
2026年2月中旬、東広島市のとある住宅で川本健一さん(当時49)が首を刃物で刺され、自宅に火を放たれて殺害された。川本さんはリフォーム会社を経営しており、倉本容疑者はその従業員だった。
倉本容疑者と徳田さんは「地元の同学年の知人」、つまり幼なじみの関係にあった。警察によると、2人は共謀して川本さんの自宅に侵入し、川本さんを殺害した。テレビ朝日系の報道によると、倉本容疑者はかつて「後継者」として川本さんに目をかけられていたという。その信頼を利用した犯行だ。
動機の根底にあるのは、金銭トラブルだ。倉本容疑者は勤務する川本さんの会社や取引先を相手に、詐欺・横領を繰り返していた。被害総額は1000万円を超え、倉本容疑者はすでに別件でこの詐欺・横領事件についても逮捕されていた。その金の行き先はギャンブルで、損失額は8000万円にも上ったとされる。多重の金銭問題が行き詰まる中で、倉本容疑者は会社の雇用主を殺すという選択をした。
「口封じのため」──幼なじみを生き埋めに
東広島の事件から約3週間後、倉本容疑者は別の犯行に踏み切った。共犯者の徳田さんが警察の捜査線上に浮上したことを察知した倉本容疑者は、徳田さんが警察に自分のことを話すのではないかと恐れた。さらに、徳田さんに対して700万円の借金があり、その返済を逃れたいという動機も重なった。
倉本容疑者には好都合な事情があった。三原市沼田の土地管理者から重機で土地をならす作業を依頼されており、その現場に合法的に重機を持ち込む理由があったのだ。倉本容疑者は作業中に穴を掘り、2026年3月9日、徳田さんを現場に呼び出した。2人で現場に向かった後、倉本容疑者だけが立ち去る姿が付近の防犯カメラに記録されていた。
徳田さんの遺体は同年4月下旬、三原市の会社敷地の地中から発見された。東広島事件の捜査を進める過程で警察が情報を掴み、土を掘ったところに徳田さんが埋められていた。テレビ新広島(TSS)の報道では、広島市南区で記念写真に映る倉本容疑者と徳田さんが並んで笑顔を見せる写真が紹介された──幼なじみであり、共犯であり、そして加害者と被害者になった2人の姿だった。
「私はしていません」──倉本容疑者は否認
6月29日、広島県警本部の岡崎玲史刑事部長は会見で「土中から徳田雅希の遺体を発見した事件につき、本日被疑者を強盗殺人罪で通常逮捕しました」と発表。
逮捕後、倉本容疑者は「私はしていません」と容疑を全面否認している。しかし、複数の物証が存在する。まず、現場に向かう2人の姿と、そこから1人だけ立ち去る倉本容疑者の姿が防犯カメラに記録されている。また、重機で穴を掘る作業を事前に行っていた事実も明らかになっている。東広島の川本さん殺害事件についても「共犯関係にあった」と警察は認定しており、捜査はその全容解明に向けて続けられている。
現場周辺の住民は「『やっとだな』って思いました。あの事件からみんな毎日不安な思いで過ごしていた」と安堵を語った(TSSテレビ新広島)。遺体発見から逮捕まで約2か月、その間、地域住民は犯人が特定されない不安の中での生活を強いられていた。
「後継者」から「加害者」へ──金とギャンブルが生んだ連鎖
川本さんは倉本容疑者を「後継者」として期待し、会社を任せようとしていたとされる。その信頼を逆用して社内・取引先から1000万円超を詐取し、8000万円をギャンブルで溶かした。追い詰められた末に、信頼を寄せてくれた雇用主を殺し、その犯行を共にした幼なじみをも口封じのために生き埋めにした。
幼なじみの徳田さんもまた、川本さん殺害に加担した側の人間だが、最終的には倉本容疑者に利用されて命を奪われた。「共犯者は死んだ人間」──口封じの論理は完結していたはずだったが、防犯カメラが倉本容疑者の行動を記録していた。



