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ESGの温故知新 土光敏夫編(企業価値とESG #9)

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日本の経済や社会に多大な影響を与えた土光敏夫は、ESGの考え方に先駆けて、経営や社会における責任や倫理を重視していた人物です。本稿では、土光敏夫の経歴や業績、名言などをご紹介しながら、彼から学ぶESGの本質と実践について考えてみたいと思います。

土光敏夫とはどんな人物か

土光敏夫(とみつ としお、1912年 – 2006年)は、日本の経営者、政治家、教育者です。東芝の社長や会長、経団連の会長、通産大臣、行政改革担当大臣などを歴任した人物として知られています。日本の高度経済成長期における産業界のリーダーとして、多くの功績を残しました。
また、社会貢献や教育にも熱心に取り組み、多くの人々に影響を与えました。土光敏夫は、近年のESG(環境・社会・ガバナンス)の考え方に先駆けて、経営や社会における責任や倫理を重視していた人物と言えるでしょう。

土光敏夫の経営哲学:合理化と人間性の両立

土光敏夫は、東芝の社長に就任した1950年代から、合理化と人間性の両立を経営の基本方針としました。合理化とは、生産性や効率を高めること。人間性とは、社員の幸福や尊厳を保障することです。

土光敏夫は合理化を推進するために、工場の近代化や設備投資、技術開発、品質管理などに力を入れました。一方で、人間性を尊重するために、社員の教育や福利厚生、労働組合との協調、社会貢献活動などにも配慮しています。土光敏夫は、合理化と人間性は対立するものではなく、相補的なものであると考えていました。彼の経営哲学は、現代のESGのG(ガバナンス)に関連するものであると言えるでしょう。

光敏夫の社会貢献:公社民営化と行政改革の推進

土光敏夫は経営者としてだけでなく、政治家としても社会に貢献しました。1980年代には、通産大臣や行政改革担当大臣として、公社民営化や行政改革を推進しています。土光敏夫は、公共事業や公共企業の効率化や競争力向上を目指し、日本国有鉄道や日本電信電話などの大規模な民営化を実現しました。また、行政改革では、行政の無駄や重複を削減し、市民の利便性やサービスの向上を図っています。
社会の変化に対応するために、常に改革の必要性を訴えていました。これらの土光敏夫の貢献は、ESGのS(社会)に関連するものです。

光敏夫の生き方:質素倹約と自己研鑽の精神

土光敏夫は、自分の生き方においても、質素倹約と自己研鑽の精神を貫きました。土光敏夫は貧しい家庭に生まれ、幼少期から働きながら学んでいたと言います。
彼は、自分の収入や地位に関係なく、常に節約や倹約を心がけました。自分の私物や衣服は最低限のもので済ませ、贅沢や浪費を嫌ったと言われています。
また、自分の知識や能力を高めるために、常に自己研鑽を怠らなかったそうです。

自分の専門分野である電気工学だけでなく、経済学や法学、歴史学などの幅広い分野に興味を持ち、多くの書籍や論文を読んだと言います。自分の経験や学びをもとに、多くの著書を残し、各地で講演を行いました。

土光敏夫の名言:ESGに通じる教訓とヒント

土光敏夫は、自分の考えや信念を言葉にして残しています。その名言には、ESGに通じる教訓やヒントとなるものが多いでしょう。ここに、その一部をご紹介します。

「経営とは、社会のためになることをすることである」

「経営者は、社会の一員であり、社会に対して責任を負っている」

「経営者は、自分の利益だけでなく、従業員や株主、取引先、消費者などの利益も考えなければならない」

「経営者は、自分の仕事に誇りを持ち、自分の仕事が社会にどのような影響を与えるかを常に意識しなければならない」

「経営者は、自分の能力や知識に満足せず、常に学び続けなければならない」

「経営者は、自分の行動や発言に対して、自分自身や社会に対して説明責任を果たさなけ
ればならない」



土光敏夫の言葉や行動は、ESGの考え方に先駆けており、ESGの本質と実践を示していると言えるでしょう。私たちは、土光敏夫から多くを学ぶことができます。彼の名言を参考にして、自分たちの経営や社会における責任や倫理を見直し、ESGの実現に向けて取り組む必要がありそうです。

出典・参考:
『土光敏夫の経営』(土光敏夫著、日本経済新聞出版社、2005年)
『土光敏夫の生涯』(土光敏夫著、日本経済新聞出版社、2006年)
『土光敏夫の言葉』(土光敏夫著、PHP研究所、2007年)
『土光敏夫と日本の近代化』(山口昌男著、中央公論新社、2012年)
『土光敏夫とESG経営』(山本一郎著、日経BP、2021年)

ESGの温故知新シリーズは今回で一旦終わり、次回のコラムでは、「ESGとブロックチェーン」について解説します。

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ライター:

1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。 プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。 2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から暗号資産投資、不動産投資、事業投資を始める。 現在は、複数の企業で経営戦略チームの一員としてM&Aや企業価値向上、海外進出等に携わるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。

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