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ESGとブロックチェーン(企業価値とESG #10)

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ESG投資において、ブロックチェーンはどのような役割を果たすのでしょうか? ブロックチェーンは、分散型台帳技術を用いて取引の透明性や信頼性を高めることができます。
このようなブロックチェーンの特性を活かし、ESG投資においては、企業のESG活動の透明性を高めたり、ESGに関する情報を共有するプラットフォームとして活用されることが期待されています。本稿では、ESGとブロックチェーンの可能性についてご紹介します

ESGとブロックチェーンの相性

ESG投資は、企業の環境、社会、ガバナンスの3つの側面を考慮した投資手法であり、近年注目を集めています。一方でブロックチェーンは、分散型台帳技術であり、改ざん耐性があるため、情報の透明性や信頼性を高めることができます。このように、ESGとブロックチェーンは、共通する目的を持っており、相性が良いでしょう。

ESGとブロックチェーンの相性については、次のような事例が挙げられます。

ESG情報の透明性と信頼性の向上:

ブロックチェーンを活用することで、ESG情報を分散型台帳上に記録・保存することができます。これにより情報の改ざんが困難となり、情報の透明性と信頼性が向上するでしょう。

具体的には、企業がESGに関するデータをブロックチェーン上に記録することで、投資家はいつでも簡単に、かつ信頼性の高い情報を入手できるようになります。また、政府やNGO等がESG評価の基準をブロックチェーン上に記録することで、評価の透明性と信頼性が向上します。

ESG投資の効率化とコスト削減:

ブロックチェーンを活用することで、ESG投資の効率化とコスト削減が期待できるでしょう。

具体的には、ブロックチェーンを活用した取引プラットフォームを構築することで、ESG投資の取引プロセスを自動化・簡素化することができます。これにより、投資家は取引手数料の削減や、取引の迅速化・効率化を図ることが可能です。
また、ブロックチェーンを活用した投票プラットフォームを構築することで、ESG投資における投票権の行使をオンラインで簡単に行うことができるようになります。
これにより、投資家は投票手数料の削減や、投票の利便性の向上を図ることができます。このようにESGとブロックチェーンは、共通する目的を持っており、相性が良いとされています。

今後、ブロックチェーンの技術革新が進むことで、ESG投資のさらなる発展が期待されるでしょう。

ESGとブロックチェーンの課題

ESGとブロックチェーンは、それぞれ課題を抱えています。ESGにおいては、目標の数値化が困難であることや、目標に対する達成度の測定がしにくいことが挙げられるでしょう。これはESGが、企業の社会的責任を考慮した投資手法であるため、目標の設定や達成度の測定が、単純な数値で表現できないことが原因です。例えば、環境(E)の観点では、温室効果ガスの排出量削減や、再生可能エネルギーの導
入などの目標を設定することになります。しかし、これらの目標は、企業の規模や事業内容によって達成が難しい場合や、単純な数値で表現できない場合があります。

また社会(S)の観点では、人権尊重や労働環境の改善などの目標を設定することになります。しかし、これらの目標は、企業の文化や風土によって達成が難しい場合や、単純な数値で表現できない場合があります。

一方のブロックチェーンにおいては、エネルギー消費量が大きいことや、スケーラビリティの問題が挙げられます。ブロックチェーンは分散型台帳技術であり、多くのノードが同時に処理を行うため、エネルギー消費量が大きくなることが問題となっています。

例えばビットコインは、ブロックチェーン技術を採用した暗号資産です。ビットコインのマイニングでは膨大な計算処理を行うため、大量の電力消費が発生します。その結果、ビットコインのマイニングによる環境への負荷が問題視されています。

また、ブロックチェーンのスケーラビリティの問題は、ブロックチェーンが処理できるトランザクション数に限界があることが原因です。このため、ブロックチェーン上で大量のデータ処理を行うことが難しい場合があり、その結果ブロックチェーンの活用が制限される場合があります。

このように、ESGとブロックチェーンは課題を抱えていますが、それぞれの課題に対する解決策も存在します。ESGにおいては、目標の設定や達成度の測定を容易にするために、以下の取り組みが考えられます。

  • 国際的な基準や指標の整備
  • データの標準化と共有
  • テクノロジーの活用

例えば、国際的な基準や指標の整備により、ESGの目標をより具体的かつ数値化しやすくなります。また、データの標準化と共有により、複数の企業間でデータを比較・分析しやすくなり、目標達成度をより客観的に評価できるようになるでしょう。

さらに、テクノロジーの活用により、データの収集・分析を自動化したり、目標達成度をリアルタイムで把握したりすることが可能になります。

ブロックチェーンにおいては、エネルギー消費量の削減や、スケーラビリティの向上のために、以下の取り組みが考えられます。

  • ブロックチェーン技術の改良
  • エネルギー効率の高いハードウェアの開発
  • データの圧縮技術の活用

例えば、ブロックチェーン技術の改良により、トランザクションの処理方法を効率化することで、エネルギー消費量を削減することができます。
また、エネルギー効率の高いハードウェアの開発により、ブロックチェーンネットワークのエネルギー消費量を削減することができるでしょう。さらに、データの圧縮技術の活用により、データのサイズを小さくすることで、スケーラビリティを向上させることができます。

ESGとブロックチェーンは、それぞれの課題を解決することで、融合による大きな可能性が生まれます。

例えばESGにおいては、ブロックチェーンを活用することで、目標の設定や達成度の測定をより容易にすることができます。また、ブロックチェーンによって、企業のESG活動に関する透明性と信頼性が向上し、ESG投資の拡大につながる可能性があるでしょう。

一方のブロックチェーンにおいては、ESGの観点を取り入れることで、より持続可能なブロックチェーン技術の開発につながる可能性があります。例えば、エネルギー消費量の削減や、環境への負荷の軽減など、ESGの観点を取り入れることで、ブロックチェーン技術の社会的受容性を高めることができます。

ESGとブロックチェーンの課題解決に向けた取り組み

ESGにおける課題解決に向けた取り組みとしては、次のようなものが挙げられます。

ESG目標の数値化や達成度の測定:

ESG目標の数値化や達成度の測定は、企業のESG経営の進捗を評価する上で欠かせません。しかし現状では、ESG目標の設定や測定方法が統一されていないため、企業間で比較することが難しいという課題があります。

AI技術を活用することで、ESG目標の設定や測定方法を客観的に評価し、より正確な数値化や測定が可能になるとされています。例えばAIを活用して、企業の環境負荷量や社会貢献活動の効果を算出することができるでしょう。

ESG情報の透明性や信頼性の向上:

ESG情報の透明性や信頼性の向上は、ESG投資の拡大やESG経営の推進のために重要です。しかし現状では、ESG情報の開示が不十分であるという課題があります。

ブロックチェーンを活用することで、ESG情報を公開し、投資家が透明性と信頼性の高い情報に容易にアクセスできるようにすることが可能になるでしょう。ブロックチェーンは改ざんが困難であるため、ESG情報の信頼性を高めることができます。

以下に、ESGとブロックチェーンを活用した具体的な取り組み例をいくつか紹介します。

ESG目標の達成度を測定するプラットフォーム:

株式会社三菱UFJ銀行は、ESG目標の達成度を測定するプラットフォーム「ESGアセスメントプラットフォーム」を開発しました。このプラットフォームでは、AIを活用して、企業の環境負荷量や社会貢献活動の効果を算出することができます。

ESG情報の開示・管理プラットフォーム:

株式会社ブロックチェーン・ラボは、ESG情報の開示・管理プラットフォーム「ESGプラットフォーム」を開発しました。このプラットフォームでは、ブロックチェーンを活用して、ESG情報を公開し、投資家が透明性と信頼性の高い情報に容易にアクセスできるようにすることができます。
ESGとブロックチェーンを活用した取り組みは、まだ始まったばかりです。今後、以下の課題を克服していくことが重要になるでしょう。

ESG目標の設定や測定方法の統一:

AI技術を活用したESG目標の数値化や測定を進めるためには、ESG目標の設定や測定方法の統一が必要です。各企業が独自の基準でESG目標を設定し、測定方法を採用していると、比較することが難しくなります。

ESG情報の開示の義務化:

ESG情報の透明性や信頼性を高めるためには、ESG情報の開示を義務化することが有効です。しかし現状では、ESG情報の開示は任意であるため、すべての企業がESG情報を開示しているわけではありません。

ブロックチェーン技術の普及:

ブロックチェーン技術は、まだ普及が進んでいません。ブロックチェーン技術を活用した取り組みを進めるためには、ブロックチェーン技術の普及が進むことが重要です。

これらの課題を克服していくことで、ESGとブロックチェーンは、持続可能な社会の実現に大きく貢献することになるでしょう。


ESGとブロックチェーンの未来

ESGとブロックチェーンの未来については、次のような展望があり、ブロックチェーンを活用したESGに関する新しいビジネスモデルの創出が期待されています。

  • ブロックチェーン技術の特徴である「透明性」「信頼性」「追跡可能性」を活用した、
    ESGに関する情報の共有/管理の効率化/高度化
  • ブロックチェーン技術の特徴である「自動化」「セキュリティ」を活用した、ESGに関
    する取引/投資の効率化/安全性の向上

具体的には、以下の分野での活用が期待されています。

  • サプライチェーン管理
  • ESG投資
  • クリーンエネルギー
  • 社会貢献

サプライチェーン管理:

ブロックチェーン技術を活用することで、サプライチェーン上の取引や情報の流れを透明化・信頼性・追跡可能性を高めることができます。これにより、ESGに配慮した原材料や製品の調達や、労働環境の改善など、サステナビリティの向上につながる取り組みを効率的に行うことができます。

例えば、農産物の生産・加工・流通の過程で、ブロックチェーン技術を活用して、生産者の氏名や住所、栽培方法、使用した農薬や肥料などの情報を記録・管理することができます。これにより、消費者は、安心・安全な農産物を選ぶことができるようになるでしょう。

ESG投資:

ブロックチェーン技術を活用することで、ESGに配慮した企業やプロジェクトへの投資をより簡単に、透明性・信頼性高く行うことができるようになります。これにより、ESG投資の普及・拡大が期待されています。

例えば、ブロックチェーン技術を活用したプラットフォームを構築することで、ESG投資家は、ESGの評価基準や投資対象となる企業・プロジェクトの情報を一元的に確認し、投資を行うことができます。また、投資の履歴やパフォーマンスを透明性高く管理することも可能です。

クリーンエネルギー:

ブロックチェーン技術を活用することで、クリーンエネルギーの普及・拡大に貢献することができます。例えば、ブロックチェーン技術を活用したプラットフォームを構築することで、太陽光や風力などの再生可能エネルギーの取引をより効率的に行うことができるでしょう。

また、ブロックチェーン技術を活用したマイクログリッドを構築することで、地域で生産されたエネルギーを地域内で消費する仕組みを実現することができます。これにより、エネルギーの効率化やCO2排出量の削減につながるでしょう。

社会貢献:

ブロックチェーン技術を活用することで、社会貢献活動をより効果的に行うことができます。例えば、ブロックチェーン技術を活用したプラットフォームを構築することで、寄付やボランティアの活動をより透明性高く管理することができるでしょう。

また、ブロックチェーン技術を活用したトークンエコノミーを構築することで、社会貢献活動への参加をより身近なものにすることができます。例えば、森林保全活動に参加した人々にトークンを付与し、そのトークンで商品やサービスの購入などを行うことができます。

このように、ブロックチェーン技術はESGの推進に大きく貢献する可能性を秘めています。今後のブロックチェーン技術の進展と、ESGに関する新しいビジネスモデルの創出から目が離せません。

次回のコラムでは、「ブロックチェーン技術でお金に色をつける?」について解説します。

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ライター:

1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。 プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。 2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から暗号資産投資、不動産投資、事業投資を始める。 現在は、複数の企業で経営戦略チームの一員としてM&Aや企業価値向上、海外進出等に携わるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。

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