
食品工場から出る残りかすを、虫の力で飼料用のタンパク質に変える。生命産業のベンチャー、GoldenHarvestが、その実証実験を横浜市で始める。
市のスタートアップ支援制度「TECH-PoC」に採択され、アメリカミズアブを使って食品残渣を飼料に変える取り組みの効果を検証する。
横浜市「TECH-PoC」に採択
同社によると、GoldenHarvestは2026年8月27日、横浜市のテック系スタートアップ実証実験等支援助成「TECH-PoC」に採択された。実証の期間は8月27日から2027年2月末まで。市から上限200万円の経費助成を受ける。横浜は日本有数の食品産業の集積地であり、食品工場から出る残渣も多い。その残渣を資源として生かす仕組みを、実際の現場で試す。
食品工場からは、調理や製造の過程で日々大量の残渣が出る。その多くは廃棄物として処理され、処理には費用も環境への負荷もかかる。捨てるしかなかったものを、価値ある資源へと転換できれば、工場にとっても地域にとっても利点がある。横浜という大都市を舞台に選んだのは、残渣の発生量が多く、循環の効果を確かめやすいからでもある。
アメリカミズアブで残渣を三つの資源に
実証の核となるのが、アメリカミズアブ(BSF)という昆虫だ。同社によると、この虫に食品工場の残渣を食べさせることで、飼料用のタンパク質に変える。対象とする残渣は、調理系や醸造系、菓子系など複数の種類にわたる。残渣の種類ごとに、どれだけ効率よく変換できるか、できあがる飼料タンパクの品質はどうかを計測する。産み出されるのは三つの資源だ。飼料用タンパクの「BSFミール」、動物性の油脂「BSF油」、そして有機堆肥の「フラス」。捨てられていた残渣が、余すことなく資源に生まれ変わる。
アメリカミズアブは、成長が速く、生ごみや残渣を効率よく食べて育つことで知られる昆虫だ。その幼虫は栄養価が高く、養殖魚や家畜の飼料として世界的にも注目されている。狭い場所で短い期間に育てられるため、限られた土地でも運用しやすい。捨てられる残渣を、いわば虫が食べて資源に変えるという、自然の力を生かした仕組みである。
飼料の輸入依存を減らす狙い
背景には、日本の飼料をめぐる課題がある。同社によると、日本の飼料は輸入への依存度が74%に達する。一方で、国内には飼料に使える食品残渣が年間500万トンあるとされる。この残渣を飼料に変えられれば、輸入に頼る構造を和らげ、国産で循環する代替タンパクの供給網をつくる道が開ける。2025年4月には、BSFミールが飼料の規格に追加されており、制度の面でも追い風が吹いている。鍬裕介代表取締役は「本実証で取得する残渣種別の変換・品質データは、国産・循環型の代替タンパク供給網を設計するための基盤となります」とコメントした。
飼料の多くを輸入に頼る構造は、為替や国際情勢の影響を受けやすく、価格の変動が畜産農家の経営を揺さぶる。国内で調達できる代替タンパクが増えれば、こうしたリスクを和らげられる。食料安全保障の観点からも、身近な残渣を飼料に変える技術への期待は大きい。
花と緑を育てる循環へ
GoldenHarvestは、2024年に設立された生命産業のR&Dベンチャーで、BSFを使った食料安全保障や資源循環の技術開発に取り組んできた。東京大学大学院農学生命科学研究科との共同研究や、2026年6月の農林水産分野のSBIRフェーズ1採択など、研究の実績を積み重ねてきた。
同社は、今回の実証で得たデータを、GREEN×EXPO 2027(2027年3月開幕)でも展示・発信する予定だ。食品残渣から生まれた堆肥が花や緑を育てるという、循環のモデルを描く。 食料の多くを輸入に頼る日本にとって、身近な残渣を資源に変える技術は、持続可能な食のあり方を考える手がかりになる
まずは残渣の種類ごとのデータを丁寧に積み上げることが、実用化への近道となる。虫の力を借りた小さな循環が、どこまで大きな仕組みに育つのかが注目される。



