
空を舞ったパラグライダーの生地が、犬の飼い主が持ち歩くポーチに生まれ変わる。京都府の亀岡市が、役目を終えたパラグライダーの素材を再生し、犬のフン袋を入れるマナーポーチをつくる「POO POO POUCHプロジェクト」を始めた。
廃棄素材とアート、市民参加を掛け合わせ、犬のフン放置という身近な課題に、前向きなかたちで挑もうとする取り組みだ。
「犬と暮らしやすいまち」への一歩
同市によると、プロジェクトは「犬と暮らしやすいまち亀岡」事業の一環だ。犬のフンの放置は、多くの自治体が抱える悩みでもある。亀岡市はこれまでの「してはいけない」という注意喚起から、「持ち歩くことが誇らしくなる」前向きなマナー啓発へと発想を切り替えた。フンを放置しないよう呼びかけるだけでなく、飼い主が自然とマナーを守りたくなる仕掛けを、アートと環境、経済の三つの視点から考える。地域の課題を、明るく前向きに解こうという発想が根底にある。
軽くて丈夫な廃棄素材を再生
ポーチの素材となるのは、役目を終えたパラグライダーの生地だ。軽く、丈夫で、水をはじく性質を備えており、屋外で使うポーチに向く。捨てられるはずだった素材に、新しい使い道を与えるアップサイクルの発想である。デザインは、かめおか霧の芸術祭にゆかりのあるデザイナー、YUKO KIMOTO氏が監修する。同市によると、自治体が主導し、アップサイクルした素材で犬のフン対策のマナーポーチを開発する事業は、2026年8月時点で日本初だという。将来的には商品化し、ふるさと納税の返礼品にすることも目指す。

パラグライダーの生地は、傷んで飛行に使えなくなっても、素材そのものは十分に丈夫なことが多い。それをただ廃棄するのではなく、地域のデザイナーの手でポーチへと仕立て直す。環境への配慮と、身に着けたくなる見た目を両立させたことが、この取り組みの特徴だ。持ち歩くことが後ろめたさではなく、ちょっとした誇りになるよう工夫されている。
市民とつくり、フェスタでお披露目
開発には市民も加わる。22日には、亀岡市保津町のCircular Kameoka Labでワークショップを開き、愛犬家がマナーポーチを試作する。参加費は無料で、定員15名の募集はすでに締め切られた。試作したポーチは、10月24日に京都・亀岡保津川公園で開かれる「亀岡わんわんフェスタ2026」でお披露目される。会場では試作品を展示して来場者の意見を募るほか、パラコードを使ったストラップづくりのワークショップも行う。
行政が一方的に配るのではなく、飼い主自身が開発に関わることで、実際に使いたくなるポーチへと近づける狙いがある。ワークショップやフェスタを通じて市民の声を取り入れ、形を固めていく。つくり手と使い手が一緒に育てるプロジェクトとして進める考えだ。愛犬家が集まる場でお披露目することで、取り組みへの共感を広げることも見込む。
環境先進都市が描く「共生」のかたち
亀岡市は、レジ袋の提供を禁じる条例を施行し、有機農業を進めるなど、環境先進都市を掲げてきた。犬との共生をめぐっても、セブン-イレブン・ジャパンと全国で初めて「犬との共生」を含む包括連携協定を結び、PR犬「マギーちゃん」が一日市長犬を務めるなど、ユニークな施策を重ねてきた。
市に登録された犬は約5600頭にのぼる。多くの犬と飼い主が暮らすまちだからこそ、マナーをめぐる工夫が暮らしやすさに直結する。フンの問題を、飼い主を責めるのではなく、楽しく前向きに解決しようとする姿勢が、今回のプロジェクトにも通じている。
犬のフンの放置は、注意を呼びかけるだけでは解決が難しい問題として、各地で長く残ってきた。啓発の言葉を重ねるよりも、飼い主が進んでマナーを守りたくなる仕組みをつくる方が、結果につながるという考え方だ。 廃棄素材が、アートの力で持ち歩きたくなるポーチに変わる。小さなポーチの取り組みが、環境と地域、そして人と犬の関係をどう変えていくのか。亀岡市の実験が注目される。



