
大阪公立大学が科研費69万9631円の不正使用を認定した倉方俊輔教授が、「事実と大きく異なる」と反論した。弁護士を交えた対応を検討し、東京建築祭実行委員長としての活動も当面差し控える。
大阪公立大、旅費69万9631円を不正使用と認定
大阪公立大学は8月24日、大学院工学研究科の倉方俊輔教授について、科学研究費助成事業の旅費69万9631円を不正に使用したとする調査結果を公表した。対象は2019年度から2023年度までの支出で、不正の種別を「旅費の架空請求及び重複受給」と認定した。
大学によると、倉方氏は旅行前に申請した用務を実際には実施していないのに、旅行後の修正報告をせず、当初の申請に基づいて旅費を精算した。また、兼業先から同一旅行の旅費を受け取りながら、科研費からも同じ日の旅費を受給した。
大学の公表資料は件数を明記していないが、毎日新聞は不正使用が「20件程度」、読売新聞は5年間で「20回」と報じている。
発端は2024年12月の内部監査だった。大学は経費精算書の証憑、用務先と兼業先での実態、倉方氏への聞き取りなどを約1年半にわたって調べた。調査委員会は、旅行後の修正申請や訂正報告が十分でなく、実態と異なる精算が続いていたと判断。直接的な動機は特定できなかったとしている。
一方、私的流用は認定されていない。調査委員会は、私的流用を認定できるだけの証拠を得られなかったとした。公表時点で大学が講じた措置はなく、今後、人事委員会で処分を審議する。
日本学術振興会の2026年度版科研費ハンドブックでは、不正使用が認定された場合、一部または全部の返還に加え、1年から10年の研究資金不交付措置があり得るとしている。
倉方俊輔教授は大部分を否定「事実と大きく異なる」
大学の報告書によると、倉方氏は架空請求などの大部分を認めていない。架空請求を認めた旅行についても、申請上の用務ではないものの、研究との関連性がある学会誌の取材に旅費を使ったと説明した。
読売テレビは、倉方氏が1件の架空請求を認める一方、ほかの請求や重複受給については「気づかなかった」「出張先には行ったが記録がなかっただけ」などと説明したと報じている。
倉方氏は8月26日、Xで「大阪公立大学が発表した内容が、事実と大きく異なる」と投稿し、弁護士を入れて対応を検討中だと表明した。ただし、大学の認定のうち、どの旅行や判断を争うのかを示す詳しい反論や資料は公表していない。
東京建築祭は田所辰之助氏を実行委員長代理に
反論と同じ26日、東京建築祭実行委員会は、今後の対応が決まるまで倉方氏が実行委員長としての活動を差し控え、田所辰之助・日本大学教授を実行委員長代理とすると発表した。調査対象の旅費は東京建築祭と関係がないことを、本人への確認で把握したとも明らかにしている。
倉方氏自身も「日本社会を鑑み、『東京建築祭』実行委員長としての活動を当面、差し控えることにしました」とXで説明した。
倉方氏は1971年東京都生まれ。早稲田大学理工学部建築学科と同大学院を修了し、博士号を取得した日本近現代建築史の研究者で、2022年から大阪公立大学大学院工学研究科教授を務める。『建築を旅する』『悪のル・コルビュジエ』『京都 近現代建築ものがたり』などの著書があり、「マツコの知らない世界」「新 美の巨人たち」などにも出演。東京建築祭のほか、イケフェス大阪、京都モダン建築祭、北九州建築祭にも携わってきた。



