
災害時、体育館の冷たく硬い床で眠らざるを得ない。そんな避難所の風景を変えようとする取り組みが進む。ダンボールメーカーの洛西紙工株式会社は、京都市の災害備蓄用段ボールベッドとして2025年度に2500台を納品した。
2026年度にはさらに3500台を予定し、2年間で計6000台規模を供給する。京都市と防災協定を結び、製造から梱包、配送までを一貫して担う。
「床で寝る」を当たり前にしない
災害時の避難所では、体育館や公共施設などの床面で生活し、就寝せざるを得ない状況が想定される。床に直接寝る環境では、床面の冷たさや硬さに加え、床付近のほこりや粉じん、立ち座りのしにくさなどが避難者の負担となる。
段ボールベッドによって床から一定の高さを確保することで、床面から受ける負担を軽減するとともに、一人ひとりの生活空間を確保しやすくなる。洛西紙工は、段ボールベッドを単なる備蓄用品ではなく、災害時の避難生活を少しでも安心できるものにするための製品と位置付けている。避難所の環境が心身の健康に影響することは、過去の災害でも繰り返し指摘されてきた。
近年の災害では、避難所の生活環境の質が避難者の健康を左右することが繰り返し課題となってきた。硬い床での雑魚寝は、血栓症やエコノミークラス症候群、感染症のリスクを高めるとされ、床から体を離して眠れる環境の整備は、避難所運営における基本的な備えの一つとして重視されるようになっている。

工具不要、1人5分で組み立て
今回供給する段ボールベッドは、全国段ボール工業組合連合会の推奨規格に沿った設計だ。工具を使わず、1人で5分以内に組み立てることができる。緊急時に、特別な技能や道具がなくても素早く用意できる点が要となる。
床から高さを確保することで床面の冷たさや硬さによる負担を軽減し、ベッド下のケースには衣類や生活用品などを収納できる。平常時は外箱にまとめた状態で保管できるため、自治体や学校、企業、福祉施設などの災害備蓄にも適している。かさばらず備えられることが、日頃の備蓄のしやすさにつながる。
製造から配送まで一貫対応
大量の災害備蓄用品を確実に供給するためには、製品の製造だけでなく、材料の調達、生産計画、加工、梱包、仕分け、配送までを一体的に管理する必要がある。どこか一つが滞れば、必要な時に必要な数量が届かなくなる。
洛西紙工は、京都市西京区の自社工場を中心に、段ボールベッドの製造から梱包、配送まで一貫して対応している。1960年創業のダンボールメーカーとして培ってきた設計・製造技術と、地域に根差した供給体制がその土台だ。平時の備蓄整備に加え、災害発生時にも必要な製品を必要な場所へ届けられる体制づくりを進めている。
防災協定を地域で機能する体制へ
洛西紙工は、京都市との防災協定を通じて、災害時に段ボールベッドなどを迅速に供給できる体制づくりを進めている。今回の納品は、災害発生後の対応だけでなく、平時から製造・梱包・配送の体制を整え、地域の備えを具体化する取り組みの一つだ。
協定を結ぶだけでなく、実際に届けられる体制があってこそ意味を持つ。同社は今後も継続的な供給を通じて生産・物流の対応力を高め、必要な時に、必要な数量を、必要な場所へ届けられる、実効性のある地域防災体制の構築に貢献していくとしている。地元のメーカーが担い手となる備えの形が、他地域の参考にもなりそうだ。
南海トラフ地震などの大規模災害への懸念が高まるなか、自治体は平時からの備蓄拡充を迫られている。地元の製造業者が供給を担うことは、災害時に交通網が寸断されても比較的近い距離から製品を届けられる利点があり、地域内での供給網を持つことの意味は小さくない。



