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蔵内勇夫議長「日本で一番悪い男」の軽さ 福岡県議会2000万円金銭授受疑惑の深すぎる闇

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蔵内勇夫
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総理官邸で高市早苗総理に地方の要望を伝えた直後、蔵内勇夫・福岡県議会議長を待っていたのは、政策についての質問ではなく、自身をめぐる金銭授受疑惑への追及だった。総理から何か言葉を掛けられたのかと聞かれた蔵内氏は、「頑張れというような目で見ていただいたと思います」と答え、ネット上の批判については「日本で一番悪い男が蔵内勇夫だと言われている」と口にした。全国の都道府県議会議長を代表する人物が、議長ポストをめぐる約2000万円の告発を背負いながら、自虐を交えて記者の輪を抜けようとする。その軽さは、疑惑そのものよりも、長年権力の中心にいた政治家の感覚を生々しく映していた。

 

 

議長になるために動いたとされる2000万円

疑惑を告発した吉松源昭県議は、2020年に議長へ就任するまでの間、蔵内氏を含む自民党県議団の幹部らに約2000万円を渡したと証言している。名目は他会派の議員を交えたゴルフや会食の費用で、資金を用意するため知人から借金もしたという。吉松氏が使ったのは「カツアゲ」「みかじめ料」という、地方議会の舞台裏とは思えない言葉だった。金を出さなければ議長になれず、会派内で不利な立場に追い込まれる。その圧迫感が、政治家同士の穏やかな根回しではなく、逃げ場のない要求として語られた。

蔵内氏は金銭を受け取ったことも支払ったこともないと否定しており、現在の争点は、吉松氏の告発と蔵内氏側の否定のどちらを、証言や録音、資金の流れが裏付けるかにある。ただ、すでに露わになったものもある。県民から直接選ばれた県議が、同じ県議である会派幹部を「上司」のように捉え、役職を得るために逆らえないと感じていたことだ。

県議会の議長は、本会議で議員の投票によって選ばれる。ところが、その前に会派幹部が候補者を決め、他会派への根回しを仕切り、必要な費用まで候補者に背負わせていたのなら、議場で行われる選挙は形だけになる。表では一人一票を持つ議員が、裏では有力者の意向に従い、誰を議長にするかが先に決まっている。問題は2000万円を誰が受け取ったかだけではない。福岡県議会の役職が、議員の評価や政策ではなく、序列とカネで配られてきたのかという疑いである。

 

「ドン」は命令しなくても周囲を動かす

県議会には、知事が提出する予算や政策を審議し、県行政を監視する役割がある。しかし、議員が県庁よりも会派幹部の顔色を気にし、次の役職や選挙での支援を失わないことを優先していたのなら、行政に厳しい目を向ける余裕などなくなる。県民へ向けるべき視線は、議会内で最も力を持つ人物へ吸い寄せられ、誰も明確に命令されていないのに、その人物が望みそうな結論へ先回りして動く。

地方政治の「ドン」は、怒鳴り声や露骨な命令だけで生まれるのではない。逆らえば損をすると考える議員、昔からの慣例だと飲み込む議員、波風を立てずにやり過ごす職員が、本人の周囲に見えない壁を築いていく。やがて名前を出さなくても意向が通り、本人が席を立っている間も周囲が同じ方向へ動くようになる。蔵内氏が長年にわたって影響力を保ってきた背景には、一人の強さだけでなく、逆らわない方を選び続けた側の沈黙もあったはずだ。

 

海外視察と県営公園に浮かぶ公金と人脈

県議会への批判を強めたのは、議長ポストをめぐる金銭授受疑惑だけではない。福岡県議会では3年間に25回の海外視察が行われ、3億円近い公費が使われたとされる。蔵内氏は視察を今後も続ける考えを説明する中で「海外旅行」と口にし、職員に指摘されて「海外活動」と言い直した。県民が納めた税金で渡航する側の口から「旅行」という言葉が滑り出た瞬間、視察の成果や必要性より先に、公費を使う側の感覚が透けて見えた。

さらに、蔵内氏が推進してきたワンヘルス政策と、地元の筑後市に整備された筑後広域公園をめぐり、公園の指定管理者グループに蔵内事務所の元秘書が代表を務める企業が含まれているとの報道も出た。県は外部有識者による委員会で適正に選定したと説明するが、議長人事をめぐる金銭授受の告発に加え、海外視察に巨額の公費が投じられ、地元の県事業からも議長周辺の人脈が浮かび上がった以上、「手続きは適正だった」という言葉だけで県民の疑念を押し戻すのは難しい。

適正な選定だったのなら、応募した事業者、審査項目、採点結果、政治家との関係をどこまで確認したのかを開けばいい。疑われた後に必要なのは、「問題はなかった」と繰り返すことではなく、誰が見ても同じ結論にたどり着ける資料を示すことだ。議長人事、海外視察、地元の大型事業が同じ人脈の周辺で重なったとき、県民が見ているのは一つひとつの手続きではない。福岡県政全体を覆う力の流れである。

 

蔵内議長が決める「蔵内議長の調べ方」

金銭授受疑惑の調査をめぐっても、福岡県議会の権力構造は隠れなかった。吉松氏や複数の会派は、議会から独立した第三者委員会による調査を求めているが、蔵内氏は時間がかかるとして否定的な考えを示し、弁護士など外部有識者が全議員から聞き取る方式を進める方針を示した。9月までに問題をまとめ、県議会を前進させることが自分の役割だとも語っている。

しかし、疑惑の中心にいる議長が、調査する人間、調べる範囲、結論を出す期限にまで関われば、外部の弁護士を入れても独立性は薄れる。証言が食い違ったときに何を根拠に判断するのか、録音や資金記録をどこまで確認するのか、報告書を省略せず公開するのか。そこを議長側が握ったままでは、どのような結論が出ても、自分たちに都合のいいところで幕を引いたという印象が残る。

潔白を示したいなら、調査を急がせるより、調査のハンドルから手を離す方が早い。ところが、蔵内氏は自らを「日本で一番悪い男」と呼ばれる存在として語りながら、その自分を誰がどう調べるかまで決めようとしている。ここに、今回の疑惑が単なる金銭トラブルでは終わらない理由がある。

蔵内氏が辞任すれば、騒動はいったん静まるかもしれない。しかし、一人を悪役にして議場から追い出し、残った議員たちが何も知らなかった顔をすれば、同じ仕組みは残る。現金の慣例を知っていた者、役職を受け取りながら口を閉ざした者、力のある人物に従って自分の立場を守った者も、この県議会をつくってきた。「日本で一番悪い男」は、一人では生まれない。周囲が逆らうことをやめ、沈黙に値段が付き、最後には本人が自分を調べる方法まで決められるようになった。その椅子を壊さないまま座る人物だけを替えても、次のドンは同じ場所から立ち上がる。

 

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ライター:

Webライター。きれいごとだけでは済まない現実を、少し距離を置いて綴っています。

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