
伝統の味を守る企業ほど見た目の美しさに厳しい基準を設けているが、製造の裏で生じるわずかな規格外品を捨てることなく、まったく新しい体験価値へ昇華させる挑戦が始まっている。
伝統の味わいを新感覚のドリンクへ変えたニュース
三重県志摩市のリゾート施設であるNEMU RESORTが、グループ施設である鳥羽国際ホテルの名物チーズケーキを活用した新たなアップサイクル商品を発売した。名物として長年愛されてきたチーズケーキの製造過程では、焼き目が付きすぎたりヒビが入ったりした規格外品がどうしても発生してしまう。
これらを廃棄することなく活用し、爽やかな清涼感あふれるレモン風味のチーズケーキシェイクへと生まれ変わらせた。
構成要素を一度解体して再構築する独自のアプローチ
他社でも食品ロスを減らす取り組みは進んでいるが、形が崩れたスイーツをそのまま値引き販売するケースが一般的だ。しかし今回の取り組みでは、チーズケーキを一度生地とシナモンの効いたタルト部分に分解し、それぞれの特性に合わせた調理を施している。
生地にはレモンピールやバニラアイスを加えてミキサーにかけ、すっきりとしたシェイクに仕立て、タルト部分はサクサクとした食感を楽しめるサクサクのクランブルとして上に散らした。元の商品の価値を下げることなく、異なる魅力を持った贅沢な一杯へアップサイクルしている点が決定的な違いである。
素材の特性を見つめ直すものづくりの哲学
この背景には、単に資源を大切にするという言葉だけに終わらない、素材の魅力を知り尽くしたプロフェッショナルとしての哲学が存在する。完璧な美しさを求められるホテルクオリティの基準から外れてしまっても、素材本来のおいしさや風味まで損なわれたわけではない。
その素材が持つ可能性をもう一度丁寧に見つめ直し、組み合わせや製法を工夫することで新しい価値を与える。もったいないというネガティブな課題を、おいしいというポジティブな顧客体験に変えていく思考法が根底にある。
規格外を強みに変える発想の転換
ビジネスパーソンがこの取り組みから学べるのは、制約や不具合を価値へと転換する発想の重要性だ。業務の中で生じた不要なアウトプットや一見失敗と思われる事象も、視点を変えて再定義すれば大きな強みとなり得る。
完成形に固執せず一度要素を分解して組み替えてみる思考は、新規事業の立ち上げや既存サービスの見直しにおいても強力な武器となる。



