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人口60人の島に猫80頭、移動手術車「おの猫号」が愛媛・魚島へ

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特定非営利活動法人 西日本アニマルアシスト
画像出典:特定非営利活動法人 西日本アニマルアシスト プレスリリース

住民の数より猫のほうが多い。瀬戸内海の中央部に浮かぶ愛媛県上島町魚島地区は、人口約60人に対して約80頭の猫が確認される島だ。

この島で、特定非営利活動法人 西日本アニマルアシストが移動手術車「おの猫号」を使った地域猫プロジェクトを始める。動物病院も車両の搬入手段もない離島に、獣医療を届ける試みである。

 

役場への相談から始まった現地調査

きっかけは、住民から魚島役場へ繰り返し寄せられた野良猫に関する苦情や相談だった。役場の担当者から相談を受けた西日本アニマルアシストは、現地調査と住民アンケートを実施。個体数や島内の分布状況、苦情の詳細などを調べ、地域課題を分析した。

同法人は広島県尾道市に拠点を置き、野良猫の不妊去勢手術や地域猫対策、移動手術車の運営に加え、高齢者支援や地域支援にも取り組む団体である。調査では、繁殖による頭数の増加や生活環境への影響が甚大だとする声が多数寄せられ、餌やり行為を問題視する声も相次いだ。給餌者と苦情を抱える住民、その双方の折り合いをどう図るかが問われていた。

 

動物病院も車も入れない島

魚島地区には動物病院がない。加えて、車両を島へ搬入できないという制約もある。不妊去勢手術を受けさせること自体が極めて困難な環境にあり、繁殖を十分に抑制できないまま、住民生活や地域環境に深刻な影響を及ぼす課題へと発展していた。

離島という地理的特性から動物医療へのアクセスが限られ、繁殖対策を継続的に実施することが難しい。頭数が増えれば苦情も増え、しかし手を打つ手段がない。そうした袋小路が長く続いてきた。

 

ごみ運搬のチャーター便で手術車を運ぶ

この状況を打開する手段が、意外なところにあった。魚島役場の協力を得て、住民の生活ごみを運搬するチャーター便を活用し、移動手術車「おの猫号」を島へ搬入するのである。車両を持ち込めない環境下で、行政との連携によって実現した全国的にも珍しい取り組みだ。同法人が把握している範囲では、移動手術車をチャーター便で離島へ搬入して不妊去勢手術を実施するのは国内初の見込みだという。

手術は、3名の獣医師と愛玩動物看護師らで構成された獣医療チームが現地に赴いて実施する。工程は7月22日の資機材搬入に始まり、25日・26日に捕獲、27日・28日に不妊去勢手術を行う。事業の申請主体は島民で構成された魚島地区地域猫活動の会が担い、魚島役場の職員も事務局窓口として地域との調整にあたる。住民と行政、専門家がそれぞれの役割を分担する体制だ。

 

手術で終わらせない社会実験として

本事業は、不妊去勢手術を実施して終わりではない。手術後も継続して猫の生息数や地域への影響を調査・検証し、「離島で野良猫問題は解決できるのか」という社会実験として、その成果を継続的に発信していくとしている。

また、プロジェクトを契機に新たな猫の遺棄が発生することを防ぐため、魚島地区地域猫活動の会、魚島役場、漁業協同組合、島民、同法人が連携し、旅客船や自家用船舶による遺棄防止に向けた見守りや啓発活動にも取り組む。手術という対症療法だけでは、島に猫が持ち込まれ続ける限り問題は繰り返されるためだ。

 

全国の離島へ広げるモデルケースに

全国には、動物病院がなく十分な不妊去勢手術を受けることができない離島が数多く存在する。医療過疎地域へ直接獣医療を届けるという発想は、魚島に限った話ではない。 西日本アニマルアシストは、今回のプロジェクトを全国の離島へ展開可能なモデルケースとして位置付けている。

一過性の活動ではなく、離島が抱える野良猫問題を解決するための実証モデルとして育て、成果を全国へ発信していく考えだ。小さな島で始まる試みが、同じ悩みを抱える各地の離島にとっての手がかりとなるかが注目される。

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ライター:

Sacco編集・ライター。企業に直接出向く取材が中心。扱う記事はサステナビリティ、ウェルビーイング関係が多め。

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