
人気キャラクター「ちいかわ」とくら寿司のコラボキャンペーンが、従業員による景品の横領という前代未聞の不祥事で幕を閉じた。だが、騒動はそれで収まらなかった。
横領された疑いのある景品がフリマアプリ「メルカリ」に大量出品され、被害者であるはずのファンや一般消費者の怒りの矛先は、いまや出品の場を提供するメルカリへと向かっている。同社が9月7日に公表した声明は、火消しになるどころか、かえって批判の火に油を注ぐ結果となった。
従業員による景品横領で「1万円食べても出ない」異常事態に
くら寿司は8月21日、大人気キャラクター「ちいかわ」とのコラボキャンペーンを開始した。食べ終えた皿5枚を投入すると抽選が始まる「ビッくらポン!」の景品として、フィギュア全5種、缶バッジ全8種、アクリルマグネット全8種を用意し、9月30日までの実施を予定していた。
ところが開始直後から、SNS上には「1万円分食べてもフィギュアが一つも当たらない」という嘆きが相次ぐ一方で、メルカリには5種セットが大量に出品されるという不可解な光景が広がった。店頭ではほとんど出ない景品が、なぜフリマサイトには潤沢に並ぶのか。ファンの間では、従業員による抜き取りを疑う声が急速に強まっていった。
くら寿司は8月31日から事実関係の調査に着手し、9月5日、従業員が景品を横領していた事実を認めて謝罪した。翌6日にはキャンペーンを全面中止し、警察へ被害を相談していることも明らかにした。おわびとして6日・7日の2日間、全品10%割引を実施したものの、失われた信頼を取り戻すには至っていない。
メルカリが公式Xで声明も、具体策は見えず
騒動が一飲食チェーンの枠を超えて延焼したのは、盗品の疑いがある景品が売買される「場」を提供したメルカリの責任が問われ始めたためだ。
メルカリは9月7日、公式Xを更新し、「くら寿司株式会社のキャンペーンに関連して、関連する商品の出品状況の確認や出品者の方へのご連絡など、必要な対応を進めています」と表明した。同社は、盗品など正規ルートではない入手が確実と思われる商品の出品を利用規約で禁止しているとし、申告を受ければシリアルナンバーや商品特徴を照合して該当品を削除すること、警察からの照会には法令に基づき協力することなどを説明。くら寿司と連携し、不正入手が疑われる出品の削除を進めていると強調した。
しかし、この声明はファンが求めていた実効性のある対策とはほど遠いものだった。J-CASTニュースによると、メルカリの投稿には1700件を超える返信が寄せられ、その多くが対応の不十分さを突く冷ややかな声だったという。
「通報しても放置された」後手対応への根強い不信
ファンの怒りを最も強くかき立てたのは、メルカリの後手の姿勢そのものだった。
あるユーザーは、利用規約違反の出品をかねて通報していたにもかかわらず、削除も対応もされず放置され、問い合わせてもテンプレート的な回答で片付けられたと告発した。「事が大きくなったから対応しているだけ」と、企業姿勢を厳しく批判している。別のユーザーも、過去に受けたサポートの対応を引き合いに、利益重視で手数料が美味しいから規制したくないのだろう、と収益構造そのものへの不信を隠さない。
つまり今回の削除対応は、問題が可視化され炎上して初めて動いたものであり、日常的に横行する不正出品には目をつむってきたのではないか。そうした疑念が、声明への冷ややかな反応の底流にある。
「削除ではなくデータ保全を」強まる法的批判と「盗品あっせん罪」の指摘
批判は感情的な不満にとどまらず、プラットフォームの制度設計や法的責任にまで踏み込んでいる。
あるユーザーは、出品を削除するのではなくデータを保持しておくべきだ、違法性が疑われる出品には調査中のタグを付けアカウントごと凍結すればいい、と主張する。証拠を消し去るような対応こそが問題の温床だというのだ。出品を削除して終わりにするだけでは、同じ不正が繰り返されるだけだという指摘である。
さらに踏み込み、盗品と知りながら売買を手助けした以上、盗品等有償処分あっせん罪にあたるのではないか、という声も上がった。「反社すぎる」といった辛辣な言葉も飛び交い、違法出品を実質的に助長し、発覚してから削除するという構図が、メルカリを「闇市」になぞらえる批判へとつながっている。
繰り返される転売騒動、問われるプラットフォームの責任
今回の一件は、くら寿司一社の内部不正であると同時に、キャラクターIPを用いた飲食店コラボと、それに寄生する転売ビジネスの構造的な危うさを改めて突きつけた。
飲食ジャーナリストの山路力也氏はYahoo!ニュースの記事で、マクドナルドが「ちいかわ」ハッピーセットの転売騒動を経て、購入数制限やフリマ各社との出品一時禁止といった対策を重ねてきた経緯に触れ、くら寿司の備えが不十分だったと指摘する。景品だけでなく非売品の販促品まで売られていた点にも言及し、その悪質性に警鐘を鳴らしている。
フリマアプリは、不要品を手軽に売買できる利便性の裏で、盗品や不正品の出口として機能しうる宿命を負う。その前提に立てば、通報頼みの事後対応ではなく、不正の芽を摘む能動的な監視こそが求められる。ファンの信頼という無形の資産を守れるかどうか。今回の騒動は、巨大プラットフォームの覚悟が問われる試金石となっている。



