
人気YouTuberグループ「雨来ズ。」が、8月に大炎上したメンバー・そうたのセクハラ騒動について、自作自演だったと明かした。女性にしがみつき、土下座して交際を迫るように見えた動画も、リーダーによる異例の謝罪も、すべて事前に計画された演出だったという。暴露系アカウント「DEATHDOL NOTE(デスドルノート)」まで巻き込み、関連投稿は累計約5000万回表示されたとグループは説明している。世間の怒りを利用して知名度を上げるという大胆な仕掛けは、どのように実行されたのか。騒動の舞台裏から、SNSの炎上が生まれる仕組みが見えてきた。
雨来ズ。そうたのセクハラ動画 女性への土下座も演技だった
11月4日、チャンネル登録者約59万人のYouTuberグループ「雨ニモマケズ、ダーウィンは来ズ。」、通称「雨来ズ。」が、8月のセクハラ騒動の真相を明かす動画を公開した。動画のタイトルは「【社会実験】SNSの炎上は意図的に作れるのか検証したらまんまと釣れたww」。問題の映像を撮影した経緯や、炎上を拡大させるための計画が紹介されている。
発端は8月27日、TikTokに投稿された動画だった。東京・六本木のバーで、メンバーのそうたが女性の足にしがみつき、女性が帰ろうとするとエレベーター前で土下座する様子が映っていた。動画は暴露系アカウント「DEATHDOL NOTE」に転載され、一気に拡散。女性への迷惑行為として批判が殺到し、複数のネットメディアも騒動を取り上げた。
ところが、女性は事前に撮影を了承した協力者で、嫌がる様子も演技だったという。そうたが女性に執拗に迫る姿は、第三者が偶然撮影した迷惑行為に見せかけたものだった。さらに、騒動が広まった後の対応まで計画されていたことが判明した。
狙いは六本木のバーの宣伝 デスドルへの拡散も計画済み
企画を考えたのは、雨来ズ。のリーダー、モトダリョウタだった。グループが六本木にオープンする「BAR雨。」の宣伝を兼ね、そうたを意図的に炎上させることを思いついたという。企画会議では「そうたを炎上させたら勝ち」という目標を掲げ、実際に被害や迷惑を生まないことをルールに設定した。そうた本人も、批判されるなら気持ち悪い、面白くない、恥ずかしいといった内容がよいと話していた。
撮影場所にも工夫があった。自分たちの店で騒動を起こせば印象が悪くなると考え、知人のバーを借りて問題の動画を制作。まずTikTokに投稿し、そこからXへ拡散させる筋書きを描いていた。特に期待していたのが、著名人の問題行動などを取り上げる暴露系アカウントの存在だった。
狙い通り、動画はDEATHDOL NOTEに転載された。モトダはその展開を喜び、自らの作戦を高く評価したという。グループの説明によれば、デスドルノートによる投稿だけで3200万回を超える表示を記録した。
雨来ズ。が利用したのは、SNS利用者の怒りだった。女性に執拗に迫るYouTuberの映像は嫌悪感を呼びやすく、影響力のある暴露系アカウントが取り上げれば、さらに多くの人に届く。批判するために投稿を引用した人も、知人に知らせた人も、結果的に動画の拡散に加わった。
しかも、第三者による告発という形で広がったことで、グループ自身が発信する宣伝とは異なる注目を集めた。雨来ズ。は、炎上によって知名度が上がる仕組みを逆手に取ったのである。
リーダーの謝罪まで台本通り アンチコメントも利用
騒動をさらに大きくしたのが、モトダによる謝罪投稿だった。問題の動画が拡散してから約2時間後、モトダはXに「お詫び」と題した文章を公開。そうたの行動について謝罪する一方、本人の酒癖の悪さや過去の問題行動を列挙し、視聴者に厳しい批判を求めた。
一般的な謝罪とは大きく異なる内容に、SNSでは驚きや反発が広がった。メンバーを守るどころか突き放し、アンチコメントまで促す対応に、炎上を収束させる気があるのかと疑問の声も上がった。
しかし、この謝罪文も計画の一部だった。モトダは今回の動画で、問題を起こした人物を身内が厳しく批判する構図をつくれば、騒動が収まりやすくなるという考えを説明している。さらに、謝罪投稿に集まった人々を過去の動画へ誘導することまで計画していた。
そうた本人も、炎上を深刻に受け止めている様子ではなかった。動画内でモトダから気持ちを尋ねられると、注目を浴びる状況を楽しんでいたことを明かした。DEATHDOL NOTEから「知名度B」と紹介されたことも喜んでいたという。
一連の関連投稿は約8本に及び、グループの説明では累計表示回数が約5000万回に達した。騒動が大きくなるほどモトダは手応えを感じ、計画通りに進んでいることに満足感を示していた。
世間がそうたの行動を批判し、リーダーの対応を疑問視している間、本人たちはその反応を観察していた。謝罪によって騒動を終わらせるのではなく、謝罪そのものを新たな話題にする。批判も心配も、すべて拡散の材料になっていた。
炎上を見抜けなかったSNS 報道まで宣伝に利用された
雨来ズ。が仕掛けた炎上は、視聴者だけでなく、暴露系アカウントやネットメディアまで巻き込んだ。8月の騒動では、女性に迷惑行為をしたYouTuberが、リーダーからも厳しく批判されているように見えた。しかし、その映像も謝罪文も、すべて事前に用意された演出だった。情報を拡散した人々は、知らないうちに雨来ズ。の宣伝に協力していたことになる。
当時から炎上商法を疑う声は存在した。動画が拡散したのは、BAR雨。のオープン記念イベントを間近に控えた時期だったからだ。それでも、映像には女性が嫌がる様子が映り、リーダーも謝罪していた。実際に問題行動が起きたと受け止めた人は少なくなかった。
暴露系アカウントには、通常の報道機関とは異なる発信の自由度がある。その一方、影響力が大きいほど、誤った情報を広げた場合の影響も大きくなる。今回のように、当事者自身が問題行動を演出し、第三者に告発させる仕組みをつくれば、投稿を見た人が真偽を見極めることは難しい。
メディアも同様だ。拡散された動画と当事者の謝罪を根拠に記事を制作すれば、仕掛けられた情報を事実として伝えてしまう危険がある。今回の告白によって、8月の騒動を報じた記事は、当時の説明を見直す必要が生じた。女性が実際にセクハラ被害を受けたという前提や、リーダーが本気で謝罪したという受け止め方は、グループが明かした舞台裏と食い違う。
さらに、こうした炎上は怒りや嫌悪感が強いほど拡散されやすい。批判する人が増えれば投稿の注目度が高まり、さらに多くの人の目に触れる。雨来ズ。は、批判を集めること自体を目的に据え、その反応を宣伝に利用した。問題を追及しているつもりの人々が、仕掛け人の狙い通りに動かされていたのである。
5000万表示の成功と引き換えに 雨来ズ。が失うものは
炎上の真相を明かした動画には、DEATHDOL NOTEが企画に乗せられたことを面白がる声や、モトダの発想力を評価するコメントが寄せられている。一方、実際に心配した視聴者もおり、モトダはそうした人々に申し訳なかったと話した。演出だと知って仕事の声をかけてきた経営者もいたという。
雨来ズ。は今回の企画で、関連投稿の累計約5000万表示という大きな注目を集めた。モトダにとっては狙い通りの結果だったのだろう。しかし、その代償として考えなければならないのが、視聴者との信頼関係だ。本気で心配した人も、怒りの声を上げた人も、結果的には宣伝に利用された。
これまで雨来ズ。を知らなかった人に名前を覚えてもらうという意味では、大きな成果を上げたことになる。一方、今後グループが本当の問題に直面した際、視聴者はその説明をどう受け止めるだろうか。一度でも謝罪を演出に利用すれば、次に発信する謝罪まで疑われる可能性がある。
さらに厄介なのは、この手法が成功例として広まることだ。批判されるほど知名度が上がり、謝罪さえも新たな話題になる。今回のように炎上を計画して拡散させる手法が繰り返されれば、視聴者は本当の被害を訴える投稿に対しても疑いを持つようになるかもしれない。
雨来ズ。が仕掛けた一連の騒動は、SNSで集まる怒りや心配が、いかに簡単に宣伝へ転換されてしまうかを示した。暴露する側も、批判する側も、情報を伝える側も、仕掛け人に利用される可能性がある。約5000万表示という数字以上に重いのは、誰かを心配し、問題を正そうとした人々の気持ちまで、計画の一部に組み込まれていたことだ。



