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銀座ティファニービルが400億円暴落…投資家が逃げ出す「ある契約」

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ティファニービル
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東京・銀座の中央通りとみゆき通りが交差する超一等地にそびえ立つ、ひときわ目を引くガラス張りのビル。アジア最大級のブティックである「ティファニー銀座本店」を擁するこのランドマークを巡り、いま不動産市場に激震が走っている。

 

ブルームバーグの報道によれば、ビルのオーナーである黒澤グループは当初1,200億円という強気の値付けで売り出していたものの、数カ月にわたって買い手がつかず、現在は3分の1となる「最低800億円程度」のオファーに応じる姿勢を示しているという。実に400億円ものディスカウントだが、それでもなお投資家たちは手をこまねいている状況だ。

銀座の一等地にある象徴的ビルが、なぜここまで買い手から敬遠されているのか。その深層には、不動産のプロたちを凍りつかせる「ある契約」と、高級ブランドの帝王が求めた過剰な美学があった。

 

インフレ下で裏目に出た「25年間家賃固定」の罠

投資家たちが真っ先に顔を曇らせる最大の要因は、ティファニー(LVMH傘下)と結ばれている賃貸借契約の内容だ。同ビル内の区画について、ティファニーはなんと「25年間の固定賃料」でリース契約を締結している(コロナ禍のタイミングでまとめられた長期契約と見られる)。

現在、世界的なインフレに伴い、日本国内でも借入コストの上昇や日銀の利上げ観測が高まっている。本来、インフレ環境下における商業不動産投資の最大の妙味は「物価や地価の上昇に合わせて賃料を引き上げ、利回りを底上げすること」にある。

しかし、四半世紀にわたって家賃がビタ一文上がらないとなれば話は別だ。借入金の金利負担ばかりが膨らみ、収益は一切伸びないリスクを25年間も背負わされることになる。不動産投資家にとって、この「25年固定」という足かせは、もはや旨味どころか致命的な敬遠材料にしかならない。

 

アルノー会長の“執念”が奪ったビルの収益性

さらに事態をややこしくしているのが、建物そのものの構造だ。

開発時のファイナンスはみずほ銀行がノンリコースローン(不動産から生じる収益のみを返済原資とする融資)を組成したが、設計にあたってLVMHグループのトップであるベルナール・アルノー会長兼CEOは現場に異例の執念を見せていた。建設中には自ら何度も来日し、ファサード(外観)のガラスデザインを決めるためだけに、6階建て相当の実物大模型(モックアップ)を莫大な費用をかけて2度も作らせている。

その美学の代償は大きかった。公道に面した壁面を美しい二層ガラスにするため、構造を建物の内側に切り込まざるを得ず、結果として「建物の有効貸床面積が削られる」という事態に陥ったのだ。床面積が狭くなれば、当然ながら得られる賃料収入の上限も下がる。

また、外観から構造に至るまで徹底的にティファニー仕様に特化しているため、将来万が一退去した際に他のテナントへ転用する(潰しを利かせる)ハードルが極めて高い。「普通のかっこいい商業ビルにしておけば、1,200億円のまますんなり売れたかもしれない」と関係者がため息を漏らすほど、美しすぎるブランドビルゆえの使いづらさが露呈している。

 

ブランドの“波動”と同居テナントの「苦笑い」

では、このビルに身を置く現場の人々はどう受け止めているのか。

ビルの上層階には、コスメディカルクリニックシンシアやルクスクリニックといった美容医療クリニック、レディースアートネイチャーなど美をテーマにしたテナントが名を連ねる。世界的ハイブランドと同じビルに入居することは、自社のステータスを高め、上質な顧客を呼び込む強力なブランディング効果(波動)をもたらしているのは確かだ。

しかし、その華やかさの裏には重い負担がのしかかる。入居しているあるテナント関係者に以前、別取材の際に「素晴らしい立地に入居されていますね」と声をかけると、「(こういった場所に入れる)貴重な機会をいただけてありがたい」と誇らしげに語る一方で、話題が平米数と賃料のバランスに及び「大変そうですね」と話した途端、その表情は一変。何とも言えない「苦笑い」を浮かべ、言葉を濁した。

銀座一等地かつ超一流ビルの看板を背負い続けるためのコストは、現場にとって決して楽な数字ではない。

 

オーナー側には差し迫った資金需要があるわけではないため、最終的に売却自体を見送る選択肢も残されているという。とはいえ、400億円の大幅値引きを余儀なくされた事実は、利上げ局面を迎えた日本の不動産市場のシビアな現実と、巨大ブランドの思惑に翻弄される開発ビジネスの歪みを鮮烈に物語っている。

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寒天 かんたろう

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ライター歴26年。月刊誌記者を経て独立。企業経営者取材や大学、高校、通信教育分野などの取材経験が豊富。

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