
「盗撮」「つきまとい」「待ち伏せ」、そして「加害予告」。芸能事務所ゼロイチファミリアが、所属タレントをめぐって確認している行為を公表した。すでに警察や弁護士にも相談しているという。同社は2025年にも所属タレントへの攻撃について警告していたが、今回は使われている言葉も対応も一段踏み込んでいる。
「待ち伏せ」まで確認、事務所が警告
ゼロイチファミリアは9月23日、「所属タレントに対する誹謗中傷等への対応について」と題した声明を発表した。同社には桃月なしこ、十味、天羽希純、岸みゆ、まるぴらなど、グラビアやアイドル、俳優として活動するタレントが所属している。声明では、誹謗中傷や人格を傷つける投稿、事実と異なる情報、根拠のない噂や憶測の拡散を確認していると説明。さらに脅迫や加害予告、プライバシーを侵害する情報の投稿、盗撮、つきまとい、待ち伏せ、私生活への過度な接触まで挙げた。
事務所はすでに警察へ相談し、弁護士とも連携して各事案への対応を進めている。悪質なケースでは投稿やアカウント、DM、メールなどの証拠を保存し、発信者情報開示請求を含む民事・刑事双方の法的措置を取る方針だ。問題の投稿やアカウントが後から削除された場合も、保存した証拠をもとに対応を続ける場合がある。一方、正当な意見や批評は対象としていない。今回、事務所が線を引いたのは、批判と人格攻撃だけではなく、ネット上の行為と現実の生活への侵入との境界でもある。
「待ち伏せ」の先で実際に起きた事件
今回の声明で特に目を引く「待ち伏せ」は、過去に重大事件へつながっている。2016年5月、東京都小金井市で音楽活動をしていた冨田真由さんが、ライブ会場付近でファンだった男に刃物で襲われ、一時重体となった。事件前にはSNSへの執拗な書き込みやつきまといがあり、冨田さん自身も警察へ相談していた。事件当日、男はライブ会場付近で待ち伏せし、冨田さんを襲撃。翌年、殺人未遂などの罪で懲役14年6月の実刑判決を受けた。
2025年3月には東京・高田馬場で、ライブ配信中だった「最上あい」こと佐藤愛里さんが路上で刺され死亡した。被告と佐藤さんの間には約250万円をめぐる金銭トラブルがあり、2026年の裁判では、被告がナイフを用意して待ち伏せしたと指摘された。東京地裁は懲役16年を言い渡している。2つの事件の背景は異なるが、相手の居場所へ近づき、「待ち伏せ」の先で重大な結果が起きた点は共通する。ゼロイチファミリアが今回、この言葉を具体的に挙げたことが重く見える理由でもある。
昨年は「誹謗中傷」、今年は「加害予告」「待ち伏せ」
ゼロイチファミリアが所属タレントへの攻撃について警告したのは今回が初めてではない。2025年、当時アイドルグループ「#Mooove!」で活動していた石原さきは、事務所規定などに抵触する重大な違反行為が確認されたとしてグループを脱退し、活動を休止。同年11月に活動を再開すると、本人や事務所へ寄せられた意見の中に「過度に攻撃的な表現」「将来の活動を一方的に否定する内容」「事務所に対する強制的な要請」があるとして、事務所が注意を呼びかけた。「攻撃的な誹謗中傷」「人格を否定する発言」「過度な強要」を控えるよう求めている。
それから約10カ月。今回の声明には「脅迫」「加害予告」「盗撮」「つきまとい」「待ち伏せ」が並んだ。2025年は石原の活動再開をめぐる警告、今回は所属タレント全体を対象にした声明で、2つの案件が直接つながっているとは公表されていない。それでも同じ事務所の声明を比べると、今回の警戒対象がSNS上の発言から、タレントの安全や私生活にかかわる行為まで広がっていることが分かる。
ストーカー相談2万2881件、禁止命令は過去最多
警察庁によると、2025年に全国の警察が受理したストーカー事案の相談は2万2881件。前年から16.9%増え、5年ぶりに2万件を超えた。ストーカー規制法に基づく禁止命令は3037件、同法違反の検挙は1546件で、いずれも過去最多となった。「つきまとい」や「待ち伏せ」は、芸能人だけに起きる特殊な問題ではなく、警察が日常的に対応する規模まで広がっている。
芸能人やアイドルの場合は、SNSに加えてライブ、イベント、撮影会など、ファンと直接会う機会もある。本人が発信する写真や動画、イベント予定から行動範囲が見えることもあり、ファンとの近さが活動を支える一方で、その距離を越える危険も生まれる。毎日のようにSNSで見ている、何度もイベントで会っているという感覚と、本人の私生活へ近づくことは別の話だ。
なぜ今回はここまで踏み込んだのか
2025年の警告に並んでいたのは「誹謗中傷」「人格否定」「過度な強要」だった。2026年は「脅迫」「加害予告」「盗撮」「つきまとい」「待ち伏せ」まで加わり、事務所は警察への相談、弁護士との連携、証拠保存、発信者情報開示請求、刑事・民事双方の法的措置まで明記した。今回、誰がどのような被害を受けているのかは公表されていないが、事務所が「複数確認している」とした行為を見ると、対応の対象がSNS上の誹謗中傷だけではないことは明らかだ。
小金井の事件では、SNSへの執拗な接触やつきまといの先に待ち伏せがあり、襲撃へ発展した。現在は全国のストーカー相談も年間2万件を超えている。その状況でゼロイチファミリアが選んだのは、実際に危害が加えられてからではなく、その前から証拠を残し、警察や弁護士を入れる対応だ。「誹謗中傷をやめてほしい」から、「待ち伏せや加害予告には法的措置も辞さない」へ。今回の声明で見えてくるのは、タレントを守るために事務所が動き出すラインが、より早い段階へ移っているという現実だ。



