
一つの企画が、完成という着地点にたどり着けないまま静かに幕を下ろした。人気グループWEST.とバンダイの育成玩具「たまごっち」がタッグを組んだコラボ企画「WEST. たまごっちプロジェクト」である。30日、公式アカウントは同企画の終了を発表した。
グループの活動終了に伴う決定であり、商品が世に出ることはついになかった。だが発表を受けたファンの反応は、怒りでも失望の連鎖でもなかった。そこにあったのは、叶わなかった夢への惜別と、企画そのものへの感謝だった。
WEST.活動終了に伴い、コラボ企画も終幕へ
30日午後、「WEST. たまごっちプロジェクト」の公式アカウント(@WEST_tmgc)は、一枚のお知らせ画像を投稿した。そこに記されていたのは、企画終了の報である。
投稿によると、WEST.のグループ活動終了に伴い、コラボ企画「WEST. たまごっちプロジェクト」も終了することとなった。発売を心待ちにしていたファンへ向けて、公式は「このようなお知らせとなり誠に申し訳ございません」と謝罪の言葉を添えている。
お知らせの文面は、終始丁寧なものだった。昨年のプロジェクト解禁時から寄せられてきた応援への礼、そしてサポートに携わった関係各所への謝意が、飾らない言葉でつづられている。そして公式アカウント自体も、翌10月1日木曜の23時59分をもってクローズすると告げられた。「ここまで見守っていただきましたこと、本当にありがとうございました」——短い一文で、お知らせは結ばれている。
一年近くにわたって進められてきた企画が、商品という形を結ぶことなく終わる。その事実だけを取り出せば、ファンにとっては落胆の知らせに違いない。だが、この投稿に寄せられた反応は、そうした予想とは異なる色合いを帯びていた。
「育てたかった」——叶わなかった夢への惜別
お知らせの投稿には、数多くのファンが言葉を寄せた。その多くに共通していたのは、非難ではなく、静かな寂しさと感謝である。
あるファンは「WEST.を育てることは叶いませんでしたが、発売を楽しみにしていた姪っ子ちゃんのためにたまごっちをポチりました」と、コラボ商品の代わりに通常のたまごっちを購入したことを明かした。別のユーザーは「たまごっち、めちゃくちゃ楽しみだったので残念ですが、企画だけでもしていただきありがとうございました」と、実現しなかった商品への未練をにじませつつも、企画への礼を述べている。
「たまごっちしたかったよ〜」「WEST.育てたかった」という素直な心情の吐露も相次いだ。グループの7人をたまごっちのキャラクターとして「育てる」という企画のコンセプトそのものが、ファンにとっては大きな魅力だったことがうかがえる。
なかには、企画の途中終了を余儀なくされた運営側の事情に思いを寄せる声もあった。「進めていた企画を途中で終えなければならない状況になってしまったことが、ファンとしても申し訳ありません」「どのような感じにするかなどを考えている7人の姿を見られて幸せでした」——完成品を手にできなかった悔しさよりも、企画が動いていた時間そのものを慈しむような言葉が並んだ。
コラボ相手にWEST.を選んだことへの感謝
反応のなかで印象的だったのは、企画の「立ち上げ」そのものへ向けられた感謝である。
あるファンは「プロジェクトの立ち上げと、コラボにWEST.を選んでいただいて、ありがとうございました。わくわく企画するメンバーを見られたこと、幸せでした」とつづり、たまごっちの今後の発展を願う言葉を添えた。数あるコラボ候補のなかから自分たちの推すグループが選ばれたこと、その事実自体をファンは喜びとして受け止めていた。
「ちゃんと終了のお知らせを届けてくれてありがとうございます。こんなにワクワクしたプロジェクト初めてだったので、叶わないのは残念ですが、楽しみな気持ちにさせてもらえたことに感謝です」という声も見られた。終わりの報せを、逃げずに正式なお知らせとして届けたこと——その一点を評価するファンの姿勢は、運営と応援する側との間に築かれていた信頼をうかがわせる。
もっとも、すべてが穏やかな惜別だったわけではない。企画が途中で頓挫したことに対し、「ただただ違約金えぐいだろうな、という感想しか出てこない」と、コラボ中断に伴う経済的な事情を推し量る現実的な声もあった。華やかな企画の裏で動いていたであろう契約や費用に、思いを馳せるファンもいたということだろう。
「育てる」という企画が残したもの
そもそも「WEST. たまごっちプロジェクト」は、昨年に解禁されて以降、ファンの期待を集めてきた企画だった。グループのメンバーをモチーフにしたたまごっちを「育てる」という体験は、アイドルとファンの関係性を、育成という双方向的な形に置き換える試みでもあった。
その企画が、グループの活動終了という決定的な事情によって、完成を見ないまま終わることになった。企画を進めていた制作陣にとっても、これは望んだ結末ではなかったはずだ。お知らせ文に込められた謝罪と感謝の言葉の丁寧さは、関わった人々がこの企画にかけていた思いの深さを、逆説的に物語っている。
コラボ企画やキャラクター商品は、その多くが華やかな発表とともに始まる。だが、始まったすべてが完成にたどり着くわけではない。今回のように、外的な事情によって道半ばで終わる企画も存在する。そうしたとき、どのように幕を引くのか——その姿勢こそが、企画を支えたファンの記憶に最後に残るものなのかもしれない。
商品は世に出なかった。それでも、7人を「育てる」日々を思い描いた時間は、確かにファンのなかに存在した。叶わなかった企画に、これほど多くの感謝が寄せられたという事実そのものが、この一年が無意味ではなかったことを静かに証明している。公式アカウントが閉じられる10月1日23時59分をもって、一つの夢は正式に幕を下ろす。だが、そこに込められた思いまでが消えるわけではないだろう。



