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Mrs. GREEN APPLE「4900円ケーキ」はなぜ売れる? 空箱まで値段がつく“推し活消費”の正体

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クリスマスケーキ
DALLーEで作成

ローソンが9月15日、Mrs. GREEN APPLEとのクリスマスケーキの予約受付を始めた。価格は税込4900円。3〜4人向けとしては決して安くないが、ファンが買っているのはケーキだけなのだろうか。

過去のコラボでは、食べ終わった後の箱までフリマサイトに出品された。食品であるはずのケーキが、箱や限定動画を含めた「推しとの体験」に変わる。4900円という価格からは、いまの推し活消費がどこまで広がっているのかが見えてくる。

 

4900円の中身は、ケーキだけではない

ローソンによると、「Mrs. GREEN APPLE クリスマスケーキ 4号」は直径約13センチで3〜4人向け。ココアスポンジとチョコクリームを使い、メンバーを描いたキャラクターピックが付属する。さらに、箱に記載された専用コードから、メンバーによるクリスマスメッセージ動画を視聴できる。価格は税込4900円。前年の商品は4370円だった。ただし、前年はフルーツとホイップクリームを使った別仕様のため、単純な値上げとは言い切れない。それでも、5000円近い価格は目を引く。

ここで重要なのは、「チョコレートケーキが4900円」とだけ考えないことだ。限定ピック、特別パッケージ、購入者だけが見られる動画まで含めれば、商品はすでに食品だけではなくなっている。

 

「もっと安いケーキ」があっても代わりにならない

通常のケーキなら、価格や大きさ、味を比較できる。同じ4号サイズなら、近所の洋菓子店やスーパーの商品と比べて「こちらの方が安い」と判断することも可能だ。だが、Mrs. GREEN APPLEの限定ピックやメッセージ動画は、別の店では手に入らない。ファンにとって比較対象は「ほかのチョコレートケーキ」ではなくなる。

ここに推し活商品の強さがある。商品そのものの機能ではなく、「ここでしか手に入らないもの」が選ぶ理由になる。価格が少し高くても代替しにくいため、一般商品とは違う基準で判断される。ローソンが売っているのはケーキだが、ファン側から見れば「2026年のクリスマスにMrs. GREEN APPLEとつながった記憶」まで商品に含まれる。

 

食べ終わった「空箱」が商品になる異変

その構造を最も分かりやすく示しているのが、空箱の転売だ。週刊女性PRIMEによると、今年8月に行われたMrs. GREEN APPLEとミスタードーナツのコラボでは、限定テイクアウトボックスがフリマアプリで1000円前後で取引され、中身のない箱が2500円で出品された例もあった。また、過去のローソンとのクリスマスケーキでも、コラボデザインの箱がフリマサイトに出品されていた。

もちろん、出品価格と実際の成立価格は分けて考える必要がある。それでも、通常ならゴミになる包装に欲しがる人が現れること自体が興味深い。箱にアーティストの写真や限定デザインが入った瞬間、それは単なる梱包材ではなくなる。保存したい人、飾りたい人、商品を買えなかったため箱だけでも欲しい人が現れる。推し活によって、これまで「商品ではなかったもの」が商品になるのだ。

 

企業にとって「包装」が広告以上の役割を持ち始めた

これは企業側にも大きな変化をもたらす。通常、箱や包装は商品を守るためのコストだ。食べ終えれば役割を終え、捨てられるのが普通だった。しかし、コラボ商品ではパッケージそのものが購入理由になり得る。つまり、包装は「中身を包むもの」から「中身と一緒に売るコンテンツ」へ変わっている。

人気アーティストやキャラクターとのコラボで、箱のデザインに力が入る理由もそこにある。商品を食べ終えた後まで手元に残れば、ファンとの接点は一度の飲食で終わらない。一方、人気が過熱すれば転売も起こりやすくなる。限定性を高めるほど欲しい人は増えるが、その希少性が二次流通の利益にもつながる。この点は、推し活ビジネスが抱える難しさでもある。

 

物価高でも「好きなもの」まで削るとは限らない

もちろん、4900円という価格を支えているのは推し活だけではない。帝国データバンクによると、2025年冬のクリスマスケーキ平均価格は税抜4740円。原材料、人件費、包装資材、光熱費などの上昇を背景に、ケーキそのものが高くなっている。一方でローソンは今年、税込2600円の「小さなスノーボンブ」も用意している。その反対側にはGODIVAとの税込1万2000円の商品もある。

一つの売り場に2600円と1万2000円が並ぶ状況は、消費者が一律に節約しているわけではないことを示す。日常生活では価格を抑えながら、好きなものにはお金を使う。「全部を我慢する」のではなく、使う場所を選ぶ傾向が強まっている。Mrs. GREEN APPLEの4900円ケーキは、その使い道の一つというわけだ。

 

「推しと過ごしたクリスマス」に4900円を払う

ライブTシャツを原価だけで評価する人は少ない。ツアー会場で買ったTシャツには、その日の記憶が一緒に残るからだ。クリスマスケーキにも同じことが起き始めている。味わって終わる食品に、限定ピック、パッケージ、動画を加える。それによって「何を食べたか」だけでなく、「誰を好きだった時に、どんなクリスマスを過ごしたか」まで残る。

だからこそ、食べ終わった後の空箱にも意味が生まれる。4900円が高いか安いかだけを議論すると、この商品の本質は見えにくい。ファンが買っているのは、13センチのケーキだけではないからだ。食品、グッズ、動画、限定感、記憶。それらが一つにまとめられた商品だからこそ、通常のケーキとは違う物差しで選ばれる。Mrs. GREEN APPLEの4900円ケーキから見えてくるのは、物価高でも衰えない推し活人気だけではない。商品そのものではなく、「好きな存在と過ごす時間」まで売買されるようになった消費の変化なのだ。

 

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ライター:

Webライター。きれいごとだけでは済まない現実を、少し距離を置いて綴っています。

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