
栃木県上三川町で起きた強盗殺人事件は、16歳の高校生4人に加え、20代夫婦の逮捕へと発展した。
事件直前には、現場近くで目出し帽をかぶった男が住民に「がんばってきます」と声をかけていたことも判明している。
警察は、「匿名・流動型犯罪グループ(匿流)」による犯行の可能性が高いとみて捜査を進めており、さらに上位の指示役の存在も視野に入れている。
その背景からは、SNS時代に拡大する新たな犯罪構造が浮かび上がってきた。
田んぼの広がる住宅で起きた強盗殺人事件
事件が起きたのは、5月14日午前9時半頃だった。
現場となった栃木県上三川町は、田んぼが広がる中に住宅が点在する地域だ。最寄りのJR宇都宮線石橋駅からは北東に約3キロ。普段は高齢者が庭先で作業をし、近隣住民同士が顔を合わせるような静かな環境だったという。
その住宅街に突然、複数人が押し入った。
警察によると、住宅に侵入した人物らは金品を物色し、住人の69歳女性が胸を刺されるなどして死亡。家族も負傷した。
現場周辺にはパトカーや救急車が集まり、県警の捜査員が足跡を採取するなど鑑識活動が続いた。
近隣住民からは、「この辺でこんな事件が起きるとは思わなかった」という不安の声が相次いだ。
「がんばってきます」 事件前に住民が目撃していた不審な男
事件前後には、不審な男たちの目撃情報も相次いでいた。
近くに住む81歳の男性によると、午前9時頃、庭先で作業をしていた際、目出し帽をかぶり、上下黒色の服を着た男と出くわしたという。
男は大きな声で、「がんばってきます」と話したという。
男性はその後、近くで強盗事件が起きたことを知り、「問い詰めていたら危害を加えられていたかもしれない。ぞっとした」と振り返った。
事件当日の朝、現場周辺では複数の不審者が目撃されていたとされ、警察は事件との関連を調べている。
実行役として逮捕された16歳の高校生4人
事件後、警察は実行役とみられる16歳の男子高校生4人を逮捕した。
捜査関係者によると、4人はいずれも同学年で、一部は同じ高校に通っていたという。また、知人関係だった少年も含まれているとされる。
その後の捜査で、さらに20代夫婦も強盗殺人容疑で逮捕された。
警察は、この夫婦が事件当日、現場とは別の栃木県内の場所から高校生らへ指示を出していた可能性があるとみている。
また、夫の容疑者については、海外へ出国しようとしていたところを羽田空港で確保したという。
高校生の一部は、「夫婦に頼まれた」という趣旨の話をしているとされている。
警察が注目する「匿流」とは何か
今回の事件で、警察が「匿流による犯行の可能性が高い」とみている点も注目されている。
「匿流」とは、「匿名・流動型犯罪グループ」の略称だ。従来の暴力団のように固定的な組織ではなく、SNSや通信アプリを通じて、その都度実行役を集める犯罪形態を指す。
特徴は、互いの素性を詳しく知らないまま犯罪が行われる点にある。
指示役は匿名で連絡を取り、実行役はSNSなどを通じて集められる。役割ごとに人が入れ替わるため、組織全体の実態が見えにくい。
近年は、いわゆる「闇バイト」と呼ばれる募集をきっかけに、若者が特殊詐欺や強盗事件へ関与するケースも相次いでいる。
警察庁も、匿流型犯罪への警戒を強めている。
なぜ未成年が実行役となったのか
今回、社会に大きな衝撃を与えたのが、実行役とされる4人が16歳の高校生だったことだ。
SNS上では、「高収入」「即日現金」などをうたう投稿が広がっており、若者が犯罪へ巻き込まれるケースが問題視されている。
もちろん、事件の詳しい経緯や、高校生たちがどのように関与したのかについては、今後の捜査を待つ必要がある。
ただ、近年の匿流型犯罪では、実行役として若者が利用されるケースが目立っている。
指示役が直接手を下さず、SNSを通じて実行役へ指示を出す構図は、これまでの組織犯罪とは異なる特徴として指摘されている。
「普通の町」で起きたことの重さ
今回の事件現場は、特別な場所ではなかった。
田んぼが広がり、住宅が点在する静かな地域だった。
しかし、その日常の中に突然、目出し帽姿の男たちが現れ、強盗殺人事件が起きた。
さらに捜査では、現場にいた実行役だけでなく、離れた場所から指示を出していた可能性のある人物や、その上位の存在まで浮上している。
警察は、事件の全容解明に向け、関係先の捜査を続けている。
今回の事件は、一つの住宅街で起きた凶悪事件であると同時に、SNS時代に拡大する「匿名型犯罪」の実態を映し出した事件としても、大きな注目を集めている。



