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芸能事務所の倒産が1〜8月で16件 年間最多を8カ月で更新 テレビ広告の地盤沈下とSNS時代の「事務所不要論」

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芸能プロダクションの倒産が急増している。

帝国データバンクの調査によると、2026年1〜8月の「芸能プロ」の倒産は16件に達し、通年で過去最多だった2016年の15件をわずか8カ月で上回った。

このペースが続けば、年間で初めて20件台に乗る可能性がある。

背景にあるのは、地上波テレビを収益の柱としてきた従来型マネジメントビジネスの行き詰まりと、SNSを足場にタレントが単独で活動できるようになった構造変化だ。

「実力のある若手に事務所は不要」とも言われ始めた業界は、いま何が起きているのか。

 

8カ月で過去最多を更新した倒産件数

帝国データバンクが8月21日に公表した「芸能プロ」の倒産動向(2026年1〜8月、速報値)によれば、負債1000万円以上の倒産は16件。通年ベースでの過去最多は2016年の15件で、その記録を8カ月で超えた形だ。同社は、このペースが続けば通年で初めて20件台に達する可能性があると指摘している。

倒産した事務所には、知られた名前も並ぶ。アイドルグループ「…そして、消え逝くキミ達と。」を運営していたBEILエンターテインメント(東京都台東区)、はしのえみさんらが過去に所属した佐藤企画(港区)、俳優の布施博さんが代表を務めていた馬力屋(あきる野市)、壇蜜さんが過去に所属したフィット(渋谷区)、A.L.C.Atlantis(港区)などである。タレント個人の知名度と、それを支える会社の財務体力は別物だという当たり前の事実が、あらためて可視化された格好だ。

 

倒れているのは「小さく、若い」会社

倒産の中身を見ると、業界全体が一様に沈んでいるわけではないことがわかる。帝国データバンクが2020年以降の倒産73件を分析したところ、資本金1000万円未満の小規模事業者が57件と約8割を占めた。業歴では設立10年未満が40件と5割を超える。

つまり、体力の乏しい新興事務所から順に脱落しているという構図だ。芸能プロダクションは在庫を持たず、設備投資も比較的小さいため参入障壁は低い。しかし収益は所属タレントの稼働に直結し、育成には時間がかかる。看板タレントが1人抜ければ売上が一気に消える依存構造を抱えたまま、運転資金の薄い状態で走り続けることになる。

同社は倒産要因として、テレビ局の制作費削減や視聴行動の動画シフトに加え、創業者の死去や体調不良、マネージャーの離職、特定タレントへの依存度の高さといった内部要因も挙げている。属人的な経営が多い業種であることが、外部環境の変化に対する脆さにつながっている。

 

テレビが稼げなくなった——広告費の逆転

構造変化を最も端的に示すのが広告費の推移だ。電通が2026年3月に発表した「2025年 日本の広告費」によると、総広告費は8兆623億円(前年比105.1%)と4年連続で過去最高を更新した。だが内訳を見ると景色は一変する。

インターネット広告費は4兆459億円(同110.8%)に達し、構成比50.2%と初めて総広告費の過半数を超えた。一方、テレビメディア広告費は1兆7556億円で前年比99.7%と横ばい圏。新聞・雑誌・ラジオを含むマスコミ四媒体は2兆2980億円(同98.4%)で減少が続いている。市場全体が拡大するなかでテレビだけが取り残されている状態であり、その原資で成り立ってきた出演料単価が上がる理屈はない。

Webコンテンツ案件やSNS案件が増えても、1件あたりの単価は地上波の番組出演やCMに及ばないことが多い。マネジメントフィーを売上の一定割合で受け取るモデルである以上、単価の低下はそのまま事務所の収益減に直結する。

 

「事務所は不要」なのか——公取委の指針と大手のIP転換

拡散した投稿は「実力ある若手に事務所は不要」と論じたが、制度面の変化もこの流れを後押ししている。公正取引委員会は2019年以降、芸能分野で移籍や独立の妨害、芸名の使用制限などが独占禁止法上問題となりうるとの見解を示し、2024年12月には実演家と芸能事務所の取引実態調査報告書を公表した。同報告書によれば、契約を全て書面で行っている事務所は約6割にとどまり、約3割は全て口頭だった。権利の利用許諾について「一切許諾しない」または「許諾しないことがある」と答えた事務所も約3割にのぼる。

こうした不透明さが問題視されるなかで、タレントが自らSNSやYouTubeで発信し、案件を直接受ける選択肢が現実的になった。専属・包括管理型の日本式マネジメント契約から、非専属で自由度の高い欧米型エージェント契約へという指摘が出るのは、この文脈による。

もっとも、事務所の役割がなくなるわけではない。帝国データバンクは、大手を中心にタレントマネジメントからIPビジネスへの転換が進んでいると分析する。ライブ運営、グッズ、ファンクラブ、SNSを垂直統合して収益を組み立てる形だ。誹謗中傷への対応をはじめとする危機管理の重要性も増しており、個人では担いきれない領域は確実に残る。問われているのは事務所の要否ではなく、何を担う会社として存在するのかという再定義である。

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ライター:

東京都出身。一日中ネットに張り付いている。

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