
愛犬のそばを離れられず、片付けも手続きも進まない。被災地でそんな飼い主を支えるため、犬の一時預かりが始まる。
犬の殺処分ゼロを目指す「ピースワンコ・ジャパン」(運営:認定NPO法人ピースウィンズ・ジャパン)は、令和8年熊本地震で被災した人とその犬のために、熊本県宇城市の「ウイングまつばせ」で犬の日中一時預かり支援を8月17日から開始した。
避難所と自宅を往復する飼い主たち
ピースワンコは、7月28日に発生した地震の直後、7月29日からペット支援チームを現地に派遣してきた。避難所や防災拠点、個人宅を回りながら、被災した人と犬への物資支援やニーズ調査を続けている。
そのなかで浮かび上がったのが、ペットをめぐる切実な状況だった。愛犬を自宅に残したまま1日に何度も避難所と自宅を往復する飼い主や、片付けや手続きのために犬のそばを離れられず生活再建が進まない世帯が確認された。慣れない環境での長時間のケージ生活や車中泊で、体調を崩す犬や猫の姿も見られている。
生活再建の時間を確保するために
犬の日中一時預かりを行う宇城市は、断水の被害が特に大きいエリアであるとともに、家屋の倒壊・半壊・一部損壊が相次いだ氷川町や美里町にも近く、生活再建に多くの支援が必要な地域だ。
大切な家族である犬のそばを離れられないために、仕事や自宅の片付け、罹災証明などの手続き、買い出し、通院、そして休息の時間さえも十分に取れずにいる人が少なくない。犬を安心して預けられる環境をつくることで、被災した人が1日でも早く安全な避難生活へ移り、生活を再建していけるよう後押しする狙いがある。同団体は環境省や宇城市と連携し、新たに設置されるトレーラーハウスで支援を行う。
約2000頭を保護する経験を生かす
支援を担うのは、犬と向き合う経験を積んだスタッフだ。ピースワンコは現在、約2000頭の保護犬を保護し、日々人馴れトレーニングを行っている。野犬や咬傷犬と呼ばれた犬、人を怖がるようになった元飼い犬など、さまざまな背景を持つ犬に一頭ずつ根気強く向き合ってきた。今回はそうした経験豊富なスタッフが、日中一時預かり支援のスタッフとして常駐する。
災害時の実績もある。令和6年能登半島地震の際には、珠洲市と調整してペット同伴専用の避難所を運営し、犬猫の日中一時預かり支援を約6か月間行った。その経験を生かし、健康観察や必要なサポートを行いながら犬を預かる。
「わんわんデイケアハウス宇城」の概要
施設の名称は「わんわんデイケアハウス宇城」。場所は宇城市松橋町大野の「ウイングまつばせ」内で、対象は熊本地震で被災した人が飼育する犬だ。8月17日に始まり、時間は午前8時30分から午後6時まで、料金は無料である。
日中の間、動物専門のスタッフが常駐して犬を預かる。仕事や自宅の片付けなどで預けたい人は気軽に声をかけてほしいとしている。受付時間や預かり可能頭数は、避難所の運営状況や当日の状況により調整される。
被災者とペットのストレス軽減へ
長引く避難生活のなかで住環境が大きく変わり、被災者もペットも大きなストレスを抱えている。ピースワンコは、少しでもその軽減となるサポートができればと考えているという。
ピースウィンズ・ジャパンは1996年設立の国際協力NGOで、緊急災害支援チーム「空飛ぶ捜索医療団」の運営や、犬猫の殺処分ゼロを目指した保護・譲渡活動などに取り組んできた。ピースワンコ・ジャパン・プロジェクトは全国11か所のシェルター・譲渡センターで活動し、これまでに5500頭以上の保護犬を譲渡してきた。同団体は引き続き、被災した人とその大切な家族である犬に寄り添い、必要な支援を届けていくとしている。



