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セクストーションとは?あなたも狙われる「裸をばらまく」の脅し 相談3040人、若い男性に広がる罠

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セクストーション
PhotoACより

数分前まで画面の向こうで笑っていた相手から、自分の顔と裸が映った動画が届く。続いて表示されるのは、家族や友人、学校、職場のSNSアカウント。「金を払わなければ全員に送る」。相談が急増するセクストーションは、軽率な人だけが引っかかる特殊な罠ではない。普通の会話で警戒心を解き、性的な画像を握った瞬間に羞恥心を金へ換え、支払えなくなれば銀行口座まで差し出させる。誰にも知られたくないという恐怖が、被害者を犯罪者の手元へ縛り付ける。

 

 

普通の会話から始まる「性的脅迫」

時事通信によると、デジタル性暴力の被害者を支援するNPO法人「ぱっぷす」に寄せられたセクストーションの相談は、2023年7月から2024年3月までの535人から、2024年度には1864人、2025年度には3040人へ増えた。2025年度の相談者は男性が36%、女性が19%、性別不明が45%で、なかでも10代から20代の男性による訴えが目立つという。

セクストーションは、性を意味するセックスと、脅迫やゆすりを意味するエクストーションを組み合わせた言葉で、性的な画像や動画を材料に金銭、追加の画像、銀行口座などを要求する行為を指す。本人が自ら送った画像だけでなく、ビデオ通話を無断で録画された映像や盗撮された画像が使われることもあり、実際には何も持っていない相手が「ウェブカメラを乗っ取って撮影した」とうそをつき、送金を迫る手口まである。

似た言葉にリベンジポルノがあるが、違いは画像の使われ方にある。セクストーションでは、画像を公開すると脅して金銭や新たな画像を差し出させる一方、リベンジポルノは、本人の同意なく性的な画像を第三者へ送ったり、ネット上へ公開したりする行為を指す。もっとも、両者はきれいに分かれるわけではなく、セクストーションの加害者が要求を拒まれた腹いせに画像を拡散すれば、脅迫と公開という二つの被害が重なる。

 

甘い言葉が脅迫へ変わるまで

被害の入口は、いかにも危険そうな裏サイトではない。語学学習アプリで「日本語を教えてほしい」と話しかけられ、SNSでは音楽や学校、仕事の話を重ねる。相手は最初から服を脱げとは言わず、返信を欠かさず、悩みに共感し、恋愛や将来の話まで持ち出しながら、「この人なら信用できる」と思わせてから別のアプリへ誘う。

やがてビデオ通話が始まり、相手が先に肌を見せながら、「二人だけだから」「私も見せたから」と応じるよう促してくる。画面の向こうに映る人物が本物かどうか、映像が録画されていないかを確認するすべはなく、服を脱いだ瞬間から被害者の顔と裸は脅迫の材料へ変わる。通話が終わるころには録画した動画と一緒に家族や友人のアカウントが送り付けられ、先ほどまでの甘い言葉は「今すぐ払え」「拒否すれば全員に送る」という命令へ切り替わる。

その場で被害者の頭を占めるのは、要求された金額よりも、翌日から家族や友人にどう見られるかという恐怖である。好意を裏切られた動揺に、自分にも落ち度があったという後ろめたさが重なり、警察や家族へ相談するという当たり前の判断まで遠のいていく。セクストーションの加害者が狙っているのは性欲だけではなく、被害者が自分を責め、誰にも言えず、画面の中で命令に従い続ける心理である。

 

一度の送金が被害を終わらせない

脅迫された人が最初にすがりたくなるのは、「一度だけ払えば動画を消してもらえる」という期待だろう。しかし、相手が画像を削除したか確認する方法はなく、送金によって伝わるのは、その人が拡散を恐れ、脅せば金を出すという事実だけである。最初は数万円でも、支払えば「別の端末にも残っている」「共犯者が持っている」「完全に消すには追加料金が必要だ」と理由を変え、次の要求が届く。それまでに払った金を無駄にしたくない気持ちも加わり、被害者はもう一度だけと送金を重ねるが、脅迫者に終わらせる理由はない。

さらに金が尽きても支配は止まらず、「これ以上は払えない」と伝えた被害者が銀行口座を貸すよう要求されたケースもあったという。口座が特殊詐欺に使われ、現金を運ぶ受け子やATMから引き出す出し子へ誘われれば、性的脅迫の被害者だった若者が、今度は犯罪の容疑者として扱われかねない。裸の動画をばらまくという一言が、借金、口座売買、闇バイトへと続いていくところに、この犯罪の底知れない怖さがある。

 

「見せた方も悪い」が加害者を助ける

被害が報じられると、「知らない相手に裸を見せる方にも問題がある」「普通なら途中で気付く」という声が並ぶ。性的な画像を送らないことが最大の予防になるのは事実だが、相手に裸を見せることへ同意したからといって、録画、保存、公開、脅迫まで認めたことにはならない。

それでも被害者が「自分から見せたのだから警察には行けない」「親に知られたら叱られる」と考えれば、加害者は画面の中から相手を支配できる。男性の場合は、性被害を訴えることへの恥ずかしさや、「男なら性的な誘いを喜ぶものだ」という決めつけまで重なり、自分が被害者だと認識できないまま金を払い続けることもある。被害者の判断を責める言葉は再発防止につながるどころか、脅迫者が最も欲しがる沈黙をつくる。

セクストーションという独立した罪名はないものの、画像を公開すると脅せば脅迫罪、金銭を渡させれば恐喝罪、追加の画像や銀行口座を差し出させれば強要罪に当たる可能性があり、実際に画像を公開すればリベンジポルノ防止法違反が問題になる場合もある。画像を自分で送ったという経緯は、脅迫する側の免罪符にはならない。

 

相手の顔ではなく「要求」を見る

被害を避けるには、プロフィール写真が本物に見えるか、ビデオ通話で顔が映っているかではなく、相手がこちらに何を求めているかを見る必要がある。知り合って間もないのに別のアプリへ移りたがり、性的な話題を繰り返し、先に画像を送り付けて交換を迫り、顔を映したまま服を脱ぐよう求めるなら、その時点で会話を切るべきである。「二人だけ」という言葉は、録画されていない証明にはならない。

顔を隠せば安全とも限らず、制服、部屋の内装、声、体の特徴、SNSの登録情報が重なれば本人へたどり着ける。身に覚えのない相手から「性的な映像を持っている」とメールが届いた場合も、画像を示さないまま暗号資産や電子マネーでの支払いを急がせるなら、同じ脅迫文を大量に送る詐欺の可能性があり、慌てて返信すれば、その連絡先が現在も使われていると相手へ知らせることになる。

 

脅されたら、払う前に証拠を外へ出す

すでに画像を送ったり、ビデオ通話を録画されたりしても、金を払ってはいけない。追加の画像、身分証明書、銀行口座を求められても渡さず、相手のアカウント名、プロフィール、メッセージ、通話履歴、要求額、送金先、画像を公開すると告げた文章を、日時やURLが分かる形で保存する。その後、アプリやSNSの運営会社へ通報して相手をブロックし、警察や支援団体へ相談する。

すでに送金した場合も履歴を消さず、追加要求には応じない。画像が投稿された場合は、掲載画面とURLを保存してから削除を申請する。ネット上に出た画像を完全に消すことは難しくても、主要な掲載先から早く削除できれば、拡散を抑えられる可能性は残っている。

加害者が握っているのは裸の動画だけではなく、「誰にも言えない」と思い込ませた沈黙である。画像を見せた数分間を責め続けるうちに、金も口座も人生も差し出してしまえば、脅迫者の思うつぼだ。恥ずかしさが消えるのを待つ必要はない。金を払う前に、その画面を閉じて外へ助けを求めるべきである。

 

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ライター:

Webライター。きれいごとだけでは済まない現実を、少し距離を置いて綴っています。

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