
国民民主党が7月15日に参議院へ提出した「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」の改正案が批判を浴びている。党は「エロ広告規制法案」と呼び、子どもに性的広告を見せないための制度と説明するが、条文は性表現だけに限定されていない。
音喜多駿前参院議員、作家で医師の知念実希人氏、漫画家の森川ジョージ氏らも相次いで懸念を表明した。「表現規制ではない」とする党側の説明と、実際の条文が持つ範囲の差が炎上の中心となっている。
対象は国が指定する大規模プラットフォームの広告
改正案は、総務大臣と経済産業大臣が事業規模などを基準に「大規模デジタルプラットフォーム提供者」を指定する仕組みを設ける。
指定された事業者には、広告に「青少年有害情報」が含まれる場合の閲覧防止措置について、実施要領の策定と公表、国民からの連絡を受け付ける体制の整備、対応状況の年1回の公表を義務付ける。
新設される罰則は、指定後の届出をしなかった場合などの50万円以下の罰金と、行政への報告を拒んだ場合などの30万円以下の過料だ。広告表現そのものを理由に投稿者や制作者を処罰する条文ではない。
「エロ広告」だけではない青少年有害情報
現行法は「青少年」を18歳未満と定め、「青少年有害情報」の例として、犯罪や自殺を直接誘引する情報、性行為や性器などのわいせつな描写、殺人や虐待などの著しく残虐な描写を挙げている。
改正案は性的広告だけを対象とする独自の定義を設けず、この「青少年有害情報」をそのまま使用した。さらに、「青少年有害情報に準ずる程度に青少年の健全な成長を著しく阻害するおそれが大きいと認められる情報」についても、同様の措置を講じる努力義務を置く。
小林さやか参院議員は、表現自体ではなく広告が表示される先を制限する制度だと説明した。しかし、条文には「準ずる情報」の定義や具体例がなく、性的広告だけの法案とは読めない。
音喜多駿氏「看板と中身が違う」 知念実希人氏・森川ジョージ氏も反発
音喜多駿前参院議員は7月18日、法案全文を検討した記事を公式サイトに掲載した。規制対象が作品自体ではなく広告である点を確認したうえで、性表現だけに限定していない条文を「看板と中身が違う」と批判した。
小説家で医師の知念実希人氏はXで、発議者の伊藤孝恵参院議員による「今回はエロ広告に特化した内容」との投稿を引用リポストし、「デマじゃないですか?」と指摘。
漫画家の森川ジョージ氏は、本件に反対する武蔵野市議・やぶはら太郎氏の投稿に「曖昧な線引きで翻弄されるのは嫌」と引用リポストした。
発議者・伊藤孝恵氏の「業界団体も存在しない」は不正確
発議者の伊藤孝恵参院議員は、マスメディアと異なりネット広告には自主規制がなく、業界団体も存在しないと説明した。
しかし、ネット広告の業界団体として一般社団法人日本インタラクティブ広告協会(JIAA)が活動している。JIAAは2000年にインターネット広告倫理綱領を制定し、不適切な広告を排除する広告掲載基準も策定。2022年には性的表現やセクハラ広告を含む不適切な広告事例集を公開し、2025年5月にも性的表現を含む広告の掲載・配信について注意喚起を出した。
自主基準に法的な強制力はないが、「自主規制も業界団体も存在しない」との説明は、公開されている活動実績と一致しない。
民間団体の評価が事実上の基準になる懸念
改正案は、プラットフォーム事業者の対応状況を第三者として評価する民間団体や、青少年のネット利用について調査研究を行う民間団体を、国や自治体の支援対象に加える。
これらの団体に広告削除を命じる法的権限や認定権限が与えられるわけではない。一方、評価基準や評価への異議申立て手続きは条文に示されていない。音喜多氏は、基準の曖昧な努力義務、対応状況の公表、国が支援する民間団体の評価が組み合わさることで、その団体の判断が事実上の広告審査基準になると批判している。
第221回国会は7月25日まで 修正や撤回の発表なし
参議院の議案審議情報では、改正案は参法第19号として7月15日に提出された。7月16日現在、委員会への付託や本会議での議決は記載されておらず、成立した法律ではない。
第221回国会の会期は8日間延長され、7月25日までとなった。国民民主党は7月20日までに、批判を受けた法案の修正や撤回を発表していない。
玉木雄一郎代表は2021年、アニメ、漫画、ゲームなどの振興を後押しし、表現の自由を最大限尊重すると発信していた。今回の法案との整合性を疑う反応が、従来の支持層からも出ている。



