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不法侵入でモンゴル保護区を焼失させたKDDI子会社モビコム社長、本当の理由は秘境での魚釣り疑惑

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モビコム社長
モビコム越智社長、Youtubeより。同社はモンゴルの近代化に寄与した側面も大きく、これまでは評価も高かったという。が、今回しでかしたことはどうしようもなく、現地で煮るなり焼くなりしていただくしかない……

見渡す限りの緑が広がる美しい大草原が、一瞬にして地平線の彼方まで続く黒焦げの焦土と化した。

いま、親日国として知られるモンゴルを舞台に、日本を代表する通信キャリア大手KDDIの看板を根底から揺るがす未曾有の国際スキャンダルが吹き荒れている。

 

発端となったのは、KDDIの連結子会社であり現地シェア首位を誇る通信会社「モビコム(MobiCom)」トップの車輪から上がった火の手だ。火災は猛烈な勢いで広がり、ついには隣国・中国の国境にまで到達。両国の消防部隊や国境警備隊が緊急の防火線を構築して総力戦を展開する事態へと発展した。

鎮火までに要した期間は、発生から実に8日間。モンゴル災害管理当局が集計した被害面積は約53万ヘクタールに達し、これは東京都の約2.4倍、韓国・ソウル市の約8.7倍という途方もない広さの大地が焼き尽くされた計算になる。

マフラーから上がった業火…最高等級の聖域「8割」が焦土に

 

大火災が発生したのは、モンゴル東部ドルノド県ハルハゴル郡に位置する「ヌムルグ自然保護区」だ。この地は、学術研究以外の立ち入りが法律で固く禁じられている厳格保護区のようだ。

現地当局の調査によると、事態の引き金が引かれたのは10月8日のことだった。モビコムの越智康博最高経営責任者(CEO)をはじめとする日本人役員陣や現地スタッフを乗せたオフロード車が、この保護区内の草原深くに侵入。

乾燥した気候と吹き荒れる強風のなか、過熱した車体下部のマフラーに枯れ草が巻き込まれて発火した。火の手は瞬く間に制御不能の猛火となって地平線を呑み込み、固有の動植物が無数に息づく極めて生態的価値の高い聖域の約80%を灰燼に帰せしめたのである。

 

「電波調査」という苦しい釈明の裏に…囁かれる“幻の怪魚釣り”

一国の通信インフラを牛耳るトップが、なぜ一般人の出入りが厳しく禁じられた聖域に車を乗り入れていたのか。

火消しに走るモビコム側は「国境地域の通信網調査に向けた現場点検(フィールドテスト)のためだった」と釈明している。

しかし、そもそも基地局整備の計画すら存在しない手つかずの保護区核心部に、なぜ社長自ら高級オフロード車で乗り入れる必要があったのか。現地ではその苦しい言い訳を額面通りに受け取る者は皆無に近い。

手つかずの大自然が残るヌムルグ保護区は、釣り人の間で“幻の大魚”と称される絶滅危惧種「アムールイトウ(タイメン)」の生息地として知られる。

関係者の間では、電波調査というのは大惨事を引き起こした後に急造された隠れ蓑に過ぎず、実態は違法なレジャー目的――アムールイトウの釣りや狩猟を楽しむための密侵入だったのではないかという疑惑が濃厚に囁かれている。

業務を装った幹部らの個人的な道楽の果てに起きた失火だとすれば、企業の社会的責任を踏みにじる前代未聞の暴挙と言わざるを得ない。

 

「重大環境犯罪だ!」ナンバー晒され、中国国境まで波及した猛火

この惨状に対し、現地メディアは連日トップニュースで猛烈な批判を浴びせている。地元有力メディア『eguur.mn』などは、火元となった越智CEOらの車両について、日産パトロールの車種からナンバープレートに至るまで克明に晒し上げ、日本人トップらの責任を直撃した。

さらにモンゴル国営モンツァメ通信によると、モンゴル政府はこの事態を単なる過失事故ではなく重大環境犯罪と規定し、警察・環境当局による合同捜査に着手。大規模な消火活動に投じられた費用や生態系復元にかかる費用の全額について、巨額の損害賠償を請求する方針を固めている。

さらに被害の規模は国境を跨ぎ、国際的な緊張感をも生み出した。中国の新華社通信などは、火の手が中国の内モンゴル自治区国境へ迫った緊迫の一部始終を詳報している。猛火から逃れようとした野生動物たちが国境を越えて中国側へ雪崩を打って逃げ出し、両国の部隊が必死に延焼を食い止める異例の事態となった。

現地のテレビ中継では、現場からリポーターが「国民の怒りはすでに頂点に達している」と悲痛な面持ちで伝え、隣国まで巻き込んだ生態系破壊に対して国民感情は沸騰している。

 

ビデオ謝罪も火に油…モンゴル近代化への貢献企業が招いた落日

世論の猛反発を受け、モビコムの越智CEOはビデオメッセージを公開して自らの失火を認め、公に謝罪した。しかし、一度失われた生態系と聖域の尊厳は戻らない。現地SNSでは「動画一本で済む話ではない」「国の宝を遊び半分で焼き払った罪をどう償うのか」と、火に油を注ぐ結果となっている。

モビコムは1996年、当時のKDDや住友商事、現地財閥ニューコムの合弁として産声を上げ、モンゴルのモバイル通信を切り開いてきた絶対的エース企業だ。2016年にKDDIが連結子会社化し、国民的決済アプリ「MonPay」を普及させるなど、モンゴルの現代化を象徴するインフラとして絶大な信頼を集めていた。

 

それだけに、現地国民が受けた失望と裏切りの念は計り知れない。自らの車輪から放たれた火種によって、築き上げてきた信頼を灰にしてしまったモビコム。親会社であるKDDIの企業統治(ガバナンス)を含め、国境を越えた責任追及の嵐は今後さらに激しさを増していきそうだ。

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寒天 かんたろう

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ライター歴26年。月刊誌記者を経て独立。企業経営者取材や大学、高校、通信教育分野などの取材経験が豊富。

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