ログイン
ログイン
会員登録
会員登録
お問合せ
お問合せ
MENU

法人のサステナビリティ情報を紹介するWEBメディア coki

シーズアンドグロース株式会社

https://seeds-and-growth.co.jp/

〒103-0012 東京都中央区日本橋堀留町1-4-2 J.NODE日本橋堀留町3階

03-5623-2234

社員の7割が子育て中。シーズアンドグロースがつくる、働きやすさと働きがいを両立する組織

ステークホルダーVOICE 経営インタビュー
リンクをコピー
シーズアンドグロース株式会社河本英之代表(提供:シーズアンドグロース株式会社)
シーズアンドグロース株式会社河本英之代表(提供:シーズアンドグロース株式会社)

「女性は、ライフイベントで一度立ち止まってしまう」。そんな理由で、優秀な人材がキャリアを制限されていく。新卒採用のコンサルティングを手がけるシーズアンドグロースの代表・河本英之氏は、この光景に、ずっと違和感を抱いてきた。

性別や、育児や介護の有無に関わらず、誰もが自分らしく働ける社会をつくりたい。その思いから、同社は、社員の7割以上が子育て中という組織でありながら、一人ひとりが力を発揮できる環境を、自らの手で築いてきた。働きやすさと、働きがい。その両方を、どう両立させるのか。

 

「立ち止まる」を、理由にしない

日本は、多様性という点で、世界に大きく後れをとっている。河本英之氏は、そう考えている。多様性とは、本来、性別だけの話ではない。だが日本では、いまだに男女という切り口ばかりが語られがちだ。そして、その語られ方に、同氏は長く違和感を抱いてきた。

企業の採用を支援する仕事をしていると、経営者の本音に触れる機会がある。表立っては口にしないものの、男性の比率を増やしたい、と漏らす経営者は、少なくないという。理由を尋ねれば、決まって同じ答えが返ってくる。女性は、結婚や出産といったライフイベントで、一度キャリアが止まってしまうから、と。

だが、河本氏が現場で見てきたのは、その考え方とは、まるで逆の現実だった。

シーズアンドグロース株式会社河本英之代表

河本氏
「相手の立場に立って考える力や、細やかな気配り。仕事を進めるうえで欠かせないそうした力を、豊かに持っている方がたくさんいらっしゃいます。それだけの力がありながら、結婚して、出産して、職場に戻ってきたそのタイミングで、出世のルートから外れてしまう。時短勤務になったことで、キャリアが制限されてしまう。素晴らしいはずのライフイベントが、その人の可能性を狭めている。それは、おかしいと思うんです」

かつては、同氏自身も、女性はライフイベントで立ち止まる、という見方を、心のどこかで持っていた時期があったという。だが、この仕事を重ねるほどに、その考えは薄れていった。長い社会人人生の中で見れば、一度立ち止まることなど、大した問題ではない。むしろ問題なのは、立ち止まったことを理由に、その先の道が閉ざされてしまう、社会の側の仕組みではないか。

行き着いたのは、一つのシンプルな思いだった。性別も、育児や家事も、介護も関係なく、誰もが自分らしく働ける社会をつくりたい。河本氏の会社が向き合っているのは、まさにこの一点だ。とりわけ、同社が手がける採用支援の仕事は、相手の気持ちを理解し、丁寧に人と向き合う力が問われる。その力を、存分に発揮できる人たちがいる。ライフイベントを経て、なお高い能力を持ちながら、それを活かしきれずにいる人たち。そうした人が、自分らしく力を発揮できる組織をつくる。その結果として、同社には、子育てをしながら働く社員が、自然と多く集まるようになっていった。

 

働きやすさ「だけ」の会社にはしない

子育て中の社員が多く、柔軟な働き方ができる。そう聞くと、いかにも「働きやすい会社」という印象を受けるかもしれない。だが、河本氏は、その言葉だけで語られることを、強く戒める。

河本氏
「働きやすさが全面に出るような会社には、実はしたくないんです。大事なのは、働きがいと、働きやすさの両立だと思っています。世の中を見渡すと、満員電車に揺られて目がうつろになっている大人がいたり、日曜日の夕方になると、明日から会社に行きたくないと憂鬱になる方がいたりする。でも、そんな社会を、僕は子どもたちに見せたくないんです」

河本氏の語りには、たびたび「子ども」が登場する。子どもたちは、将来なりたい職業を思い描きながら、勉強を頑張っている。社会を良くしたい、こんな仕事で世の中に貢献したい。そんな思いを抱いて育ってほしい。だが、大人たちが疲れ切った顔で働いていれば、子どもは、働くことに希望を持てなくなってしまう。

だからこそ、同氏が増やしたいのは、目を輝かせて働く大人だ。同社が手がける組織や人事のコンサルティングは、企業を元気にし、そこで働く個人を元気にする仕事でもある。その事業を通じて、働くことを前向きに捉えられる大人を、一人でも多く生み出したい。同時に、その理想を、自分たちの会社でも体現したい。可能性を無限に秘めているはずの人が、女性だから、時間が限られているからという理由で、不当に扱われる。そんな状態を、まずは自社から変えていく。

働きやすさは、あくまで手段にすぎない。その先にある働きがいと、両輪でそろって初めて、意味を持つ。河本氏がつくろうとしているのは、楽に働ける会社ではない。一人ひとりが、自分の仕事に誇りとやりがいを感じながら、無理なく力を発揮できる。そんな組織なのだ。

シーズアンドグロース株式会社オフィスの様子
同社オフィス
 

制度は、社員の声から生まれる

働きがいと働きやすさを両立させるために、同社にはいくつもの仕組みがある。だが、それらの制度そのものより、注目すべきは、その生まれ方だ。

まず、働く時間と場所は、柔軟に選べる。フレックスタイム制で、子どもが体調を崩せば、病院へ連れて行くために仕事を中抜けしてもかまわない。週3出社の同社だが、子どもの送迎がある社員は週1の出社となっている。残りの4日は在宅勤務が可能だ。そして、客先や在宅以外での勤務の際に足を運ぶことになるオフィスは、行くのが楽しみになる場所につくり込まれている。酸素カプセルが置かれ、心地よい香りの漂うエリアがある。出社したら、かえって元気になる。そんな空間を目指している。

シーズアンドグロース株式会社酸素カプセル
社内に設置されている酸素カプセル

制度は、それだけではない。同社には、「シン・リフレッシュ宣言」という考え方がある。社員のストレスを、会社が買い取る、というものだ。その柱として、二つの仕組みがある。

一つは、「Make My Time(メイクマイタイム)」。自分の時間を作り出すための制度だ。仕事を懸命にこなしたあと、さらに家事や育児に追われれば、自分の時間はどんどん失われていく。そこで同社は、家事代行サービスの利用料を、月に一定額まで会社が援助する。浮いた時間を、その人自身のために使ってもらう。もう一つは、「Pit in(ピットイン)」。心と体を休めるための制度だ。リラクゼーションやエステ、あるいはカラオケでも、自分が癒されるものに使うお金を、会社が一部負担する。とりわけ、自分で稼いだお金を自分を労うために使うことに、どこか後ろめたさを感じてしまう人にとって、会社が背中を押してくれるこの仕組みは、使いやすい。多くの社員が、これらの制度を活用している。

だが、河本氏がこれらの制度で何より大切にしているのは、その中身以上に、どうやってつくったか、という点だ。

河本氏
「これらの制度は、どこかの会社の真似ではありません。実は最初、私たち経営陣が考えて、ベビーシッターの支援制度を作ろうとしていたんです。ところが、社員に聞いてみると、家事に時間を割かれて負担、子供は自分で見たいから家事代行の方が助かる、という声が返ってきた。ああ、実態は違うんだと。そこから、メンバーの意見を聞きながら模索して、たどり着いたのが、この二つの制度でした」

他社の良い制度を、そのまま持ってくることもできた。だが、それでは二番煎じにしかならない。なぜこの制度を入れたのか、と社員に問われたとき、「よその会社が良かったから」と答えるのでは、社員はがっかりするだろう。そうではなく、「あなたたちの声を聞いて、それに応えたくて作った」と、胸を張って言える。その積み重ねが、企業の文化になり、社員に伝わっていく。河本氏は、そう考えている。制度の形だけを真似ても、その根にある思いまでは、真似できないのだ。

 

経営者が、家事育児を知っている

これほど社員に寄り添った制度を、なぜ実現できるのか。ビジネスモデルや、会社の収益性もあるだろう。だが、河本氏が一番大きいと考える理由は、意外なものだった。経営陣自身が、育児や家事を、身をもって知っていることだ。

シーズアンドグロース株式会社河本英之代表

河本氏
「多くの経営層の方は、女性は大変だよね、と口では言いながら、その大変さを、心底は分かっていないと思うんです。僕には子どもが3人いますが、洗濯当番は、毎日僕です。天候を見ながら、今日は晴れるからおしゃれ着を洗おう、なんて考えるタイプで。実際にやってみると、分かるんですよ。献立を考えるのも大変だし、夜泣きで起こされることもある。それを、仕事に加えてこなしているわけです。その大変さを分かっていない経営層が、あまりにも多いと感じています」

こうした実感は、河本氏自身の暮らし方から来ている。男は外で働いていればいい、とは、同氏はどうしても思えない。子どもの記憶の中に、母親の姿しか残らないような父親には、なりたくない。だから、自ら家事や育児を担う。休日に、ゴルフや飲み会で家を空けることも、まずない。家庭という一つの組織が崩れていては、組織や人事の専門家を名乗る資格はない。河本氏は、そう考えている。この実感があるからこそ、社員が何に困っているのかが、手に取るように分かる。仕事をしている8時間以外の、残りの16時間。その時間の、どこにストレスを感じているのか。そこにまで寄り添えるかどうかが、これからの会社が選ばれるかどうかを分ける、と同氏は見ている。

河本氏
「ブラックボックスの中で、給料を何千円、何万円上げれば社員は喜ぶんだろう、という発想では、もう選ばれない時代だと思うんです。そうではなく、社員が本当は何に困っているのか。仕事以外の時間に、何を負担に感じているのか。そこに寄り添っていかないと、これからの時代、会社として選ばれなくなる。僕はそう思っています」

先ほどの制度が、社員の声から生まれたのも、この姿勢があってこそだ。経営陣が、社員の生活や、仕事以外の時間にどこまで寄り添えるか。それができる経営者は、決して多くない。だからこそ、この一点に、同社らしさが表れている。制度は、その理解の上に築かれた、目に見える形にすぎない。

 

足りないところを、正しく伝える

社員に寄り添うこの姿勢は、そのまま、同社の本業にも生きている。自社を実験台として組織の課題に向き合ってきたからこそ、河本氏の提案には、綺麗事ではない説得力が宿る。シーズアンドグロースが手がけるのは、企業の採用や組織づくりを支援する、コンサルティングだ。

その現場で向き合うのは、しばしば、考え方の凝り固まった経営層である。

とりわけ、年次を重ねた経営者ほど、周りが遠慮して、耳の痛いことを言ってくれなくなる。そのため、自分では気づけない、と河本氏は言う。第三者であるコンサルタントの役割は、そこにある。褒めるだけなら簡単だ。だが同社は、足りていないところを、正しく伝える。ただし、いきなり高すぎる理想を突きつけても、できないと突き放されてしまう。少し変われば手が届く、という目標を設定する。人は、変化して成果が出ると、また変わりたくなる。その良い循環を、丁寧につくっていく。

経営者と向き合う際に、同氏がよく投げかける言葉がある。社長の耳に届いている社員の意見は、全体のほんの数パーセントにすぎない。本音は、まず届かない。社長が忙しそうにしているほど、声はいっそう上がってこなくなる。そうした「社長あるある」を示しながら、では自分ならどう考えるか、を一緒に議論していく。

河本氏
「よく、今の若者は、と言い始める経営者の方がいます。でも、今の時代をつくっているのは、その若者たちなんです。今の若者は、と批判したところで、何も変わらない。だったら、こちらが適応していくしかない。転職もしやすく、ポストや報酬を与えても人が辞めてしまう時代に、どう組織を束ねていくか。それを難しいと嘆くのではなく、面白いと思えるかどうか。そこが、経営者にとって大事なところだと思うんです」

河本氏が経営者に伝えたいのは、一つの理想の姿だ。社長自身が成果を出して事業を伸ばすのではない。メンバーが成長し、みんなが生き生きと働く中で、事業が伸びていく。そういう世界のほうが、ずっと豊かではないか。自社で体現しようとしていることを、支援先の企業にも、そのまま届けている。

こうした支援を可能にしているのが、同社ならではの強みだ。新卒採用のコンサルティングを長年手がける中で磨いてきた、オーダーメイドの設計力である。既存の型に当てはめるのではなく、その企業自身も気づいていない魅力まで掘り起こし、その会社だけの採用のかたちをつくる。この、隠れた魅力を引き出す力が、支援の質を支えている。

その手応えは、顧客との関係の長さにも表れている。5年、10年、時には15年と、同じ企業に伴走し続けることも珍しくない。組織というものは、一つの課題を解決すれば、また次の課題が生まれる。だからこそ、意識の高い企業ほど、その都度より高いレベルの課題に向き合おうと、同社を選び続ける。実際に、同社が採用の全体設計を支援している企業のリピート率は、8割を超えるという。会社のすべてを理解しようとし、次に何が起こるかを見越して動く。その積み重ねが、長い信頼を育んでいる。

シーズアンドグロース株式会社オフィス
ゆったりとした空間で仕事ができる環境が整えられている
 

万能型を手放し、個性を尖らせる

いま、シーズアンドグロースは、大きな転換期を迎えているという。これまで「新卒採用に特化したコンサルティング会社」として歩んできた同社が、採用にとどまらず、研修や人事評価制度、企業理念の策定や浸透まで、組織や人事の全般を扱う会社へと、飛躍しようとしているのだ。

新しい領域に踏み出すには、痛みも伴う。採用だけを手がけてきた社員が、未知の分野を学び直さなければならない。それでも、組織全体に関わるコンサルティング会社へと成長することを、河本氏は次の挑戦と定めている。長年培ってきたオーダーメイドの設計力は、型にはまりがちな研修や人事制度の領域でこそ、際立った強みになる。その勝算がある。

この事業の転換と同時に、同氏は、組織のあり方そのものも見つめ直している。行き着いたのは、意外な結論だった。全部できる人材を、育てようとしない、ということだ。

河本氏
「私自身、これまでずっと、何でもできる人間を育てようとしてきました。でも、これだけビジネスのスピードが上がってくると、そこまで成長するのを待てないんです。それに、正直なところ、16年やってきて、全部できるようになった人間は、決して多いとはいえない。だったら、その考えは手放して、一人ひとりの得意な領域を、とことん伸ばす。そちらのほうがいい。そう考えるようになりました」

採用が得意な人。教育に強い人。企業理念の策定に長けた人。話すのが得意な人と、資料をつくるのが得意な人。それぞれの個性を活かし、役割を分担する。何でもこなす万能型を目指すのではなく、一人ひとりを尖らせていく。AIが急速に進化し、誰もが同じスタートラインに立たされる時代だからこそ、この「個性を活かす」という方針が、より大切になると河本氏は見ている。

こうした挑戦のさなか、同社の業績は、実は今期、初めて苦戦しているという。だが河本氏は、それを悲観していない。

河本氏
「今年は、環境の変化もあり、業績面で課題に直面しました。でも、長い目で見れば、次の飛躍に向けた必要なプロセスだと捉えています」

順調なときには見えないものが、立ち止まったときに見えてくる。同社は、自社を実験台にしながら、事業と組織の両面で、次の一歩を模索している。

 

働くって、何だろう

取材の最後に、河本氏が語ったのは、働くことそのものへの、一つの問いかけだった。いま、自分の仕事にやりがいを感じられずにいる人へ。世代も、性別も、置かれた状況も関係なく、そんな人たちへ向けた言葉だった。

シーズアンドグロース株式会社河本英之代表

河本氏
「皆さんに、働くことをどう考えていますか、と問いたいんです。もし、お金を稼ぐためだけの手段だとしたら、もったいなくないでしょうか。これだけの時間を、人生から投じているわけです。そうではなく、社会とつながり、少しでも人のためになる、世の中の役に立つ。そういうことを、仕事という手段を通じてやっている。そう捉えてほしいんです」

だから、無駄な仕事など、一つもない。その組織が存在している時点で、そこには必ず価値がある。河本氏は、そう語る。まず、自分たちの仕事を、卑下しないでほしい。自分は意味のあることをやっているのだと、信じて働いてほしい。そう思えれば、たとえ会社に行くのが憂鬱な朝でも、「よし、今日も誰かのために」と踏み出せる。一日の終わりに、「今日、誰かの役に立てた」と思える。

そして、その姿は、必ず子どもたちが見ている。

河本氏
「大人が生き生きと働いている姿を見て、子どもたちは、働くって楽しそうだな、早く大人になりたいな、と思ってくれる。そういう社会をつくっていかなければいけないと、僕は思っているんです。自分が生まれた使命として、社会の役に立つ。そして次の使命として、後の世代に、働くことのポジティブな姿を、ちゃんと残して死んでいく。そう考えたら、下を向いてなんて、いられないんです」

働くことを、お金のためだけの営みにしない。社会とつながり、誰かの役に立つ喜びとして、次の世代へ手渡していく。性別も、ライフイベントも、誰かの可能性を狭める理由にはならない。一人ひとりが、自分らしく、誇りを持って働ける社会をつくる。シーズアンドグロースが見据えているのは、目の前の一社を支えることの、さらに先にある景色だ。その景色の中で、子どもたちが、明るい顔で未来を思い描いている。

Tags

ライター:

Sacco編集・ライター。企業に直接出向く取材が中心。扱う記事はサステナビリティ、ウェルビーイング関係が多め。

関連記事

タグ

To Top