
社会福祉事業者として過去最大の経営破綻が、最悪の結末を迎えようとしている。
就労支援事業を展開する「絆ホールディングス」などグループ5社が、大阪地裁から更生手続きの申し立てを棄却され、破産手続き開始前の保全管理命令を受けた。負債総額は実に約289億5361万円に上る。
絆HDのこの倒産劇は単なる経営不振による倒産ではない。その裏には、社会的弱者である障害者を利用し、国からの給付金を不正にむさぼるという極めて悪質な実態があった。
なぜこれほどの巨額負債を抱えたのか、そして消えた給付金はどこへ行ったのか。同社の底知れぬ悪辣さを紐解いていく。
障害者を金づるにした非道な錬金術
2012年に結婚相談所として設立された絆ホールディングスは、その後、放課後等デイサービスや就労支援事業へと急激に事業を拡大させた。関係会社を次々と設立し、2023年3月期には約24億円の収入を計上するまでに成長したが、その実態は就労移行支援体制加算の不正受給という砂上の楼閣だった。
同社がどのようにして不正に給付金を得ていたのか。彼らが行っていたのは、本来保護されるべき障害者を単なる金づるとして扱う、巧妙な不正のループがあった。
まず、利用者を自社の正社員として雇用したように装い、就職実績を作って国からの給付金を増額させる。しかし実際には自社で働かせず、他のグループ会社へ形式的に出向させるというたらい回しを行っていた。
さらに、事業所側が手厚い給付金を受け取るための条件期間を満たした途端、利用者を正社員からパート雇用へと無情にも格下げする。
そして最終的には雇用契約そのものを終了させ、再び就労支援の利用者に戻すことで、今度は利用者に対する給付金を再び国から受け取るという悪辣なサイクルを繰り返していたのだ。
真剣に自立と就労を目指していた障害者たちは、会社の実績作りのために利用された挙句に放り出され、貴重な就労機会の損失と自己肯定感の低下という深い傷を負うことになった。
1340人が突然の解雇!給与未払いで提訴される地獄絵図
会社の悪辣さは、今年3月に大阪市から加算金を含めた約110億円の返還を求められ、指定取り消しの行政処分を下された後の対応にも表れている。
絆ホールディングスは、健常者・障害者を合わせた利用者およびスタッフ計1,340名を一方的に解雇した。さらに給与すら支払わず、本来行うべき再就職や転所の支援も完全に放棄。突然生活の糧を奪われ、路頭に迷うことになった元従業員ら12名からはすでに提訴されており、現場は文字通り阿鼻叫喚の地獄絵図と化している。福祉を掲げる企業として、到底許される行為ではない。
返還不能な110億円はどこへ?税金が奪われる最悪のシナリオ
読者が最も疑問に思うのは、「不正に受け取った巨額の金はどこへ消えたのか」という点だろう。
110億円もの返還命令を受けながら、法人に資金が残っておらず、会社更生法も棄却されて会社は消滅への道を辿る。国への返済は事実上不可能となった。給付金が法人内にプールされておらずスッカラカンであるならば、その金は役員報酬などの形で経営陣や関係者の懐へ流れていたと考えるのが自然だ。
これだけの大規模な不正を行いながら、金がないから破産して終わらせるという計画倒産まがいの幕引きが許されていいはずがない。110億円が回収不能となれば、そのしわ寄せはすべて税金を納めている国民が被ることになる。利用者、スタッフ、そして納税者を含めた全員が泣き寝入りを強いられるのだ。
福祉制度を食い物に私腹を肥やし、発覚すれば弱者を切り捨てて逃亡を図る絆ホールディングス。そして、この悪質なビジネスモデルを牽引した下川弘美社長の罪はあまりにも重い。会社が消滅しようとも、資金の不透明な流れの解明と、経営トップの徹底した責任追及が社会から強く求められている。



