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なぜ日本の自衛隊はインドネシアへ? マレーシアを覆った国境を越える煙の正体

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140万人の子どもが学校に行けず、隣国では非常事態 日本のCH-47が加わった消火作戦の現在

マレーシア山火事に自衛隊出動
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マレーシア・サラワク州の町で、空気の汚染指数が500を超えた。

健康な人でも屋外活動を控える水準で、学校は閉鎖。住民は窓を閉め、空気清浄機を動かし、ぜんそくの患者は息苦しさに耐えた。煙の発生源は、隣のインドネシアだった。

 

森林と泥炭地の火災から出た煙が風に流され、国境を越えてマレーシアへ。さらにフィリピンにも届いた。インドネシア国内では、約140万人の児童・生徒が学校に通えず、遠隔授業を余儀なくされた。

この事態を受け、日本は自衛隊の大型ヘリコプター3機をインドネシアへ派遣した。

では、なぜ日本が行く必要があったのか。現地では何が起きているのか。そして、自衛隊は何をしているのか。

 

マレーシアで非常事態が宣言された

インドネシアとマレーシアは、ボルネオ島を共有している。島の南側・大部分を占めるインドネシア領は「カリマンタン」と呼ばれ、北側の一部がマレーシア領のサラワク州とサバ州だ。

今回、日本の自衛隊が向かったのは、インドネシア領カリマンタンである。しかし、火災の煙は国境を気にしない。

マレーシアのサラワク州セリアン地区では、9月4日に大気汚染指数が519に達し、非常事態が宣言された。非常事態は9月7日に解除されたものの、煙害が終わったわけではない。サラワク州では、9月7日から11日まで12地区の647校が一時閉鎖された。

Al Jazeeraは、クチンに住む母親の証言を伝えている。視界は約1キロまで落ち、生後10か月の娘は肺の感染症から回復できず、息ができなくなって救急外来へ運ばれたという。

同紙は、今回の煙害を2015年以来、最悪の事態と報道。マレーシア保健省の発表として、8月23日から29日の1週間で、ぜんそくの患者が219人から1811人に、結膜炎の患者が146人から720人に増えたと伝えた。

マレーシアにとって、これは「隣国の山火事」ではない。自国民の健康、学校、行事、行政機能を止める危機である。

 

煙はフィリピンにも流れた

フィリピンの気象当局も、カリマンタンから煙の粒子が流れ込む可能性を指摘した。マニラ首都圏では空気が悪化し、ケソン市は9月1日、公立校の対面授業を停止した。

ASEAN=東南アジア諸国連合は、南部地域に越境煙霧への最高レベルの警報を出した。

煙が届いた距離は、火災現場から800キロ以上。火災の影響は、インドネシア、マレーシア、ブルネイ、シンガポール、フィリピンへ広がった。

 

インドネシアでは、学校と病院が同時に圧迫された

ロイターによると、インドネシアでは9月2日時点で、6州の約143万人の児童・生徒が遠隔授業に移った。対象となった学校は約1万2874校に上る。さらに、インドネシア保健省の発表では、呼吸器疾患の患者が9月1日の約5万900人から、9月9日には約11万3300人に増えた。煙にさらされた住民は7州で1250万人を超えたという。

政府は約100万枚のマスク、数百台の酸素濃縮器を送り、医療関係者を被災地域へ派遣した。

火災の規模も大きい。インドネシア林業省によると、今年1月から7月までに森林・土地火災で焼けた面積は約20万2000ヘクタール。シンガポールの約3倍に相当する。

背景には、エルニーニョ現象による高温と乾燥がある。だが、天候だけが原因ではない。泥炭地の排水、農地やパーム油プランテーションの開発、土地を開くための野焼きも、火災を広げる要因と指摘されている。

泥炭地は、地中に枯れた植物が積み重なった土地だ。乾燥すると地下まで燃える。表面の火を消しても、地中でくすぶり続けるため、消火が難しく、煙も長く残る。

 

そこで日本の自衛隊が派遣された

インドネシア政府から支援要請を受け、日本政府は8月28日、国際緊急援助隊の派遣を決めた。

海上自衛隊の輸送艦「くにさき」は8月30日に日本を出港。陸上自衛隊のCH-47チヌーク輸送ヘリ3機を積み、9月10日に西カリマンタン州メンパワのキジン港へ到着した。

CH-47は大型の輸送ヘリだ。今回の任務では、消火用の水を運び、地上部隊が入れない森林や泥炭地へ飛んで、上空から水を投下する。

ロイターは、ヘリが西カリマンタン州の州都ポンティアナックを拠点に飛行試験を行い、9月12日から19日に活動する予定だと報じた。日本から派遣される要員は180人と、インドネシア側の説明を伝えている。

重要なのは、自衛隊が火災全体を指揮するわけではないことだ。消火作戦の主役はインドネシア側であり、日本のヘリは地上部隊が近づきにくい場所を空から支援する。

 

12日、防衛省が「指揮所開設」を発表

防衛省・自衛隊は12日、インドネシア空軍のスパディオ基地に、日インドネシア派遣部隊指揮所を開設したとSNSで発表した。投稿には、インドネシア軍関係者と日本の隊員が打ち合わせをする様子が掲載され、「インドネシア国防省と緊密に連携し、山林火災被害の拡大防止に向けて全力で取り組む」と記されている。

これは、単に日本のヘリが現地に到着したという段階から、日本側とインドネシア側が同じ拠点で作戦を調整する段階に入ったということだ。

防衛省は、今回の活動について、自衛隊の装備を使った国際緊急援助としての海外消火活動は初めてだと説明している。

 

日本だけではない国際消火作戦

インドネシアは、日本以外の国や外国登録の航空機も受け入れている。

現地のCNN Indonesiaによると、運輸省は外国登録航空機35件の使用を許可した。対象は、オーストラリア、ロシア、米国、ウクライナ、ニュージーランド、ラオス、ベトナム、カナダに関係する11社、計36機のヘリだという。AP通信は、日本、米国、ロシア、オーストラリア、カナダ、ウクライナなどの航空機が消火活動に関わっていると報じた。

マレーシアも被害を受けるだけではない。インドネシアに航空消火能力を提供する考えを伝え、国境付近で人工降雨を行うため、自国の航空機を使う計画も進めた。

インドネシア国内では、地上部隊に加え、空中消火や人工降雨のための航空機が活動している。日本のCH-47は、この国際的な消火体制の一部である。

 

この派遣が持つ意味とは?

今回の派遣は、戦闘のための海外派遣ではない。相手国の要請を受け、人命救助と災害対応のために自衛隊の装備を使う活動だ。

ただし、安全保障と無関係でもない。煙害や大規模火災は、国境を越えて学校、病院、交通、経済を止める。将来、こうした災害が増えれば、隣国同士が情報、人員、航空機を融通できるかどうかが被害を左右する。

日本とインドネシアは今年5月、人道支援と災害救援を含む防衛協力の取り決めに署名している。今回の派遣は、その協力を実際の現場で試す機会でもある。

日本のヘリが到着したこと自体は大きな一歩だ。しかし、評価が決まるのはこれからだ。いつ放水を始めたのか。どの地域で火を抑えたのか。日本とインドネシア、さらに他国の航空機が安全に連携できたのか。

 

マレーシアの住民が青空を取り戻し、インドネシアの子どもたちが学校へ戻れるのか。今回の海外消防活動の意味は、その結果によって初めて問われることになる。

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ライター:

新聞社・雑誌の記者および編集者を経て現在は現在はフリーライターとして、多方面で活動を展開。 新聞社で培った経験をもとに、時事的な記事執筆を得意とし、多様なテーマを深く掘り下げることを得意とする。

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