
水揚げされたばかりの魚に触れ、選別し、そして味わう。子育て情報サービス「いこーよ」を運営するアクトインディ株式会社が、千葉県鋸南町の保田漁業協同組合と連携し、保田漁港を舞台にした小学生向けの「水産・食体験プログラム」を初めて実施した。
漁港を教育資源として活用し、子どもたちが水産流通の仕組みや食の大切さを学ぶ試みである。
海や漁業に触れる機会の減少
近年、子どもたちが海や漁業に触れる機会は減少しており、水産物がどのように生産・流通され、食卓に届くのかを知る機会も限られている。魚を食べることはあっても、それがどこから来るのかを実感する場面は少ない。
一方で、漁港は水揚げから流通までを支える拠点であるとともに、地域の産業や食文化、そこで働く人々の営みを知ることができる貴重な学びの場でもある。アクトインディは、こうした漁港の特性を活かし、子どもたちが実際の現場で学ぶ機会を創出することで、漁港が持つ教育資源としての価値を広げる取り組みを進めている。
選別から入札まで、漁港の仕事を体験
プログラムの第一弾は7月3日、練馬区立光が丘秋の陽小学校6年生65名を対象に実施された。子どもたちは、魚の選別や入札など漁港で行われる仕事を体験しながら、水産流通の仕組みを学んだ。
当日はアジやイワシなど身近な魚に加え、ホシザメやアカエイといった定置網漁ならではの珍しい魚も水揚げされ、子どもたちは口の形や体の模様を夢中になって観察した。選別体験では、水揚げされたばかりの魚を種類ごとに仕分ける作業に挑戦し、特徴を見分ける難しさや、正確かつスピーディーな作業が求められることを学んだ。漁協職員へのインタビューでは、「どんな魚がよく獲れますか」「仕事で一番大変なことは何ですか」と積極的に質問する姿が見られた。

獲れた魚が料理になるまで
体験後は、漁協直営の食事処「ばんや」へ移動し、アジやシイラのフライ、タチウオのつみれ汁など、地元で水揚げされた新鮮な魚を使った料理を味わった。食事の前には、スタッフから料理に使われている魚の特徴や調理方法についての説明があった。
子どもたちは、漁港で実際に触れた魚が料理になるまでの過程を思い浮かべながら食事を楽しんだ。漁港での体験から食事までを一貫して経験することで、水産業を支える人々の仕事や、魚が食卓に届くまでの流れへの理解を深めた。同校の前多紀子校長は「実際に魚に触れ、匂いを感じるなど、五感を使った経験は子どもたちの心に長く残る」と振り返り、昼食では普段の給食以上によく食べ、ほとんどの児童が完食したという。
「海業」による漁港の価値創出
この取り組みは、漁港を漁業の拠点にとどめず、教育や観光などの新たな価値を生み出す場として活用する「海業」の推進という文脈にも位置づけられる。保田漁業協同組合の村井繁夫代表理事組合長は、子どもたちが実際に魚に触れ、楽しみながら体験する姿を見られたことを喜び、地元の魚を味わうことで海の恵みを身近に感じてほしいと語る。
漁業を取り巻く環境が変化するなか、漁港や地域の資源を活かした新たな取り組みに挑戦しながら、地域や漁業の未来につながる活動を続けていきたいとする。獲る場所であると同時に、学ぶ場所にもなる。漁港の新たな可能性を探る試みだ。
都内7校での実施を予定
本プログラムは、来年1月までに都内の公立小学校の5・6年生を対象に、計7校で実施する予定である。今後も教育機関や地域と連携し、漁港を活用した体験機会の創出を進めていく。
子どもたちの学びを深めると同時に、地域の活性化にもつなげる。魚が食卓に届くまでの道のりを自分の目で確かめた経験は、食を大切にする気持ちや、水産業を支える人々への理解を育む。教育と漁港をつなぐ試みが、どこまで広がるかが注目される。



