
地方独立行政法人神戸市民病院機構は7月13日、神戸市立医療センター中央市民病院と神戸市立医療センター西市民病院で、画像診断レポートに記載された肺の異常所見が診療につながらず、肺がんの発見が遅れた医療事故が2件あったと発表した。神戸新聞とMBSニュースによると、患者はいずれも男性で、肺がんはステージ4まで進行し、手術による根治が困難な状態となった。
西市民病院は4月3日にも、別の患者の肺がんを見落とした医療事故を公表していた。約3カ月後に新たな2件が明らかになり、神戸市民病院機構は過去5年分の画像診断レポートを点検する。
「肺がん疑い」、見落とされ1年半経過
報道によると、中央市民病院の事案では、2024年6月に脳梗塞の疑いで緊急搬送された80代男性のCT画像診断レポートに、放射線科医による「左上葉肺がん疑い」の所見が記載されていた。しかし救急科や脳神経内科の医師らがこれを見落とし、精密検査や専門診療科への紹介が行われなかった。
男性は約1年半後の2025年12月、胸水がたまったことをきっかけに肺がんと診断されたが、がんはすでに脳などに転移し、手術による根治が困難な状態まで進行していた。
胃がん術後の「フォローが必要」も見落とし
西市民病院の事案では、2019年5月に胃がんの摘出手術を受けた70代男性の術後定期フォローとして行われた2024年4月の画像検査で、「右肺尖の小結節に対するフォローが必要」との所見がレポートに記載されていたが、担当医が見落とした。
男性は2025年12月に右肩の痛みで整形外科を受診し、2026年1月の画像検査でも肺の影が確認されたものの、右肩関節周囲炎と診断された。最終的に肺がんと判明したのは2026年5月で、がんは骨に転移していた。
肺がんは「がん死亡原因の第1位」
見落とされた肺がんは、日本人のがんによる死亡原因の第1位で、国立がん研究センターの統計では年間約7万6000人が亡くなっている。早期に発見して手術できれば根治も期待できる一方、進行すると治療の選択肢は狭まり、遠隔転移のあるステージ4では手術による根治は難しくなる。だからこそ、目的の異なる検査で偶然写り込んだ早期の病変(偶発所見)をどう診療につなげるかが、患者の予後を大きく左右する。
全国で繰り返される「報告書の確認不足」
画像診断レポートの見落としは、この2病院に限った問題ではない。
日本医療機能評価機構は、画像診断報告書の確認不足による事故が2015年から2018年の間だけで37件報告されたとして医療安全情報で注意喚起を行い、厚生労働省も再三にわたり対策を促してきた。緊急搬送時など、依頼した医師が当初の目的(今回であれば脳梗塞)に関する所見だけを確認し、偶然写り込んだ別の異常(偶発所見)まで目を通さない――という構造的な落とし穴が背景にあると指摘されている。
対策として、レポートの未確認を電子カルテ上で検知して主治医に警告する仕組みや、重要所見を放射線科医から直接主治医へ通知する体制づくりが進められているが、導入状況は施設によって差がある状況だ。



