
児童養護施設で暮らす子どもたちの多くは、高校卒業と同時に施設を退所し、自立した生活を始めることが求められます。しかし、突然の自立にはさまざまな壁が立ちはだかり、不安や孤独も襲います。そこで、「リユース企業」としての強みを活かして支援を行っているのが、社会問題解決型組織を掲げる株式会社エコリングです。同社は、家財道具やノートPCの寄付といった物資支援にとどまらず、社会に出る若者たちに伴走する「信頼できる大人」として関わり続ける「天使園プロジェクト」を展開しています。本記事では、その具体的な支援の仕組みと、実際の取り組みの様子を紹介します。
施設を巣立つ若者へ。自立と希望を届ける「天使園プロジェクト」の背景
社会問題解決型組織であるエコリングでは、事業活動を通じて社会課題の解決に取り組んでいます。その一つが、18歳を迎えて児童養護施設から社会へと巣立つ子どもたちに向けた独自の支援プロジェクト「天使園プロジェクト」です。
本プロジェクトは、社会福祉法人天使園が運営する児童養護施設「今井城学園」から旅立つ子どもたちに、エコリングで取り扱っている家具・家電等の商材を寄付し、社会に出て一人立ちできるように支援することを目的に、2020年にスタートしました。
現在、支援の柱となっているのが「物資提供」と「外貨募金」の2つです。物資提供では、エコリングが買い取った商材の中から、自立や新生活のために必要な家財道具をプレゼントしており、活動開始以来、累計17人分を寄付してきました。
外貨募金においては、店頭で募っている外貨募金を日本円に換え、卒業して巣立つ子どもたちに新品のノートPCを購入してプレゼントしています。お客様や店舗スタッフも参加できるこの外貨募金は、地域の善意が子どもたちの未来の学びに直結する仕組みとなっています。2019~2024年度の回収金額は3,664,503円に達し、これまでに27台のノートPCを届けてきました。

門出の不安をやわらげる。リユース企業だからこそできる伴走
プロジェクトが発足した背景には、施設を巣立つ子どもたちが直面する厳しい現実があります。
多くの子どもたちは18歳(高校卒業時)で施設の退所を求められます。保護者のサポートを受けられる子どもに対し、施設を巣立つ子どもたちは、突然すべての責任を背負って自立して社会に出ることを余儀なくされるのです。
身元保証人がいない中で部屋を借りたり、敷金・礼金、家具・家電の購入費用を退所時の貯金や自立支援金で賄ったりと、最初に生活を立ち上げる壁がはだかります。また、施設での集団生活から一転して一人暮らしが始まることで、孤独や孤立に陥る子どももいます。また、児童養護施設の子どもたちは一人ひとり異なるバックボーンがあり、簡単に大人を信用することができない子どももいます。その中で、頼る先がいないために孤立するケースもあります。
そこで、子どもたちが社会に出て生活していくうえで、希望をもって未来に歩んでいけるようにしたい。その想いから、エコリングにできることを模索した結果生まれたのがこのプロジェクトなのです。
リユース企業としてエコリングの商材で支援を行うとともに、普段は学校や施設の職員の方としか接することがない子どもたちへ、大人と触れ合う機会を提供します。そこで何よりも大切にしているのが、子どもたちにとっての「信頼できる大人」となることです。
本プロジェクトは、エコリングにとって単なる慈善活動ではありません。「何かをしてあげる」という上からの関係ではなく、子どもたちに伴走し、見守る、「信頼できる大人」の一人として関わり続け、子どもたちに物心共に豊かになってほしいと考えています。
この取り組みは、彼らが社会へ出る際の「孤立」や「不安」をやわらげ、リユース企業の強みを活かし、施設を巣立つ子どもたちの新たな門出を支えています。
また一見すると、買い取ったものを「販売」して利益を得るビジネスと、無償で「寄付」を行うことは正反対の活動に思えるかもしれません。しかし、子どもたちの支援をするこの活動は社員一人ひとりの視野を広げ、人としての心の成長につながり、それが結果として企業としても個人としても物心共に豊かになるという好循環を生み出すとエコリングは考えています。
「ただ物資を送るだけ」にしない。体験を通じた“自立”へのエール
家財道具などの寄付は、以下のような流れで進みます。
- 欲しいものリストの作成: 施設の子どもたちに、新生活で必要なものをリストアップしてもらいます。
- 商材の確保: エコリングのネットワークを活かし、要望に沿った商材を確保します。
- マイエコリングでの確認: 集めた商材をマイエコリングの店舗で入念に確認します。
- お渡し:子どもたちにお仕事体験をしていただいたのち、商材をお渡しします。
※マイエコリング:買取・販売併設店舗
必要なものを、必要な形で、タイムリーに確保して届けるというリユース企業としての強みが、生活立ち上げにおいて、取り組みの実効性に直結しています。
また寄付の際に工夫していることが、「ただ物資を送るだけ」で終わらせないことです。子どもたちは、エコリングから単にモノを与えられるだけではありません。倉庫やマイエコリング店舗に行き、買い取られた品物がどのように流通していくのかというシステムを学ぶ機会を設けています。
自身で活動に参加することで、お金やモノの大切さを肌で感じ取る。また、エコリング社員から直接仕分けの方法やリサイクルの意義を教わることで自然と交流が生まれ、そこが「信頼できる大人」と繋がる場になります。これは、彼らが社会に出てから必要となるコミュニケーションを体験する貴重な機会でもあります。
誰かから何かを与えてもらうだけでなく、与えられたものを自分たちの力で活用できるものへと変えていく。それこそが仕事の本質であり、企業として提供できる教育の一つだとエコリングは考えています。こうした体験を通じて、「自分たちで何かを成し遂げた!」という達成感や自信を、子どもたちの未来へつなげたいという願いが込められています。
【2025年度の活動の様子】販売店舗での就業体験
2025年度は児童養護施設 天使園今井城学園と児童養護施設まつば園より10名がマイエコリング立川店に訪れてお仕事体験を実施。その後、パソコンの贈呈と、自立(一人暮らし)のために必要なものを選んでいただき、プレゼントしました。
お仕事体験では、洋服の陳列を行います。並べ方のルールが記してあるノートを見ながら、お客様が見やすく、手に取りやすい状態に服を並べていきます。同じ系統の色の服をまとめ、綺麗なグラデーションになるように入れ替えを行うほか、柄や服の向き、ボタンが留まっているかも細かくチェックします。

陳列作業は、店舗のスタッフもサポートします。複数の色や柄が入った服や、判別が難しい色などは、大人と相談しながら一つひとつ並べていきます。「タンクトップはどうしたらいいですか?」「右と左で色や柄が違うものはどうしたらいいですか?」など、子どもたちは積極的に質問しながら仕事を進めていました。
服や古着が好きな子どもも参加しており、普段なかなかできない体験を楽しんでいる様子も見られました。

1階と2階のフロアをグループごとに担当し、100着以上並ぶラックが見違えるほど綺麗になりました。


お仕事体験の後は一人ひとりに手渡しでのパソコン贈呈に加え、自立のために必要なものを選んでいただきました。新生活で着る服や一人暮らしで使うための家電など、それぞれの新たな生活を想像しながら商材を選んでいる様子が見られました。
担当者の香川さんは、「短い時間ですが、子どもたちとのコミュニケーションをしっかり取りながら、喜びを感じてもらえる体験にすることを大切にしています」と話します。

当日、プロジェクトに同行した各児童養護施設の代表者からも感謝と期待の声が寄せられています。
児童養護施設 天使園今井城学園 矢野さん

「このプロジェクトを通じて、子どもたちには社会性を身に着けてほしいと考えています。中には大人のことをすぐには信じられない子もいますから、こうして大人と関わる経験を通じて、エコリングさんだけでなく関わってくれる人たちを信じられるようになっていってほしいです。
また、これまで5年間このプロジェクトに参加していて、エコリングさんからいただいたパソコンを卒園生が今もしっかり活用しているんです。モノの大事さを学ぶことにしっかり繋がっていることも感じています」
児童養護施設まつば園 園長 山川さん

「他の施設の子どもたちとも顔を合わせることで、同じ境遇の中で頑張っている子どもたちがいることを知って『みんなも頑張ってるんだな』と仲間意識を持てる機会にもなっていると思います。
そして、エコリングさんのように自分たちのことを見ていてくれる、フォローしてくれている大人がいることを体感していると思うので、卒園していく子供たちには、自分たちにはこういう応援者がいると心強く思って、社会に羽ばたいていってほしいです」
支援の輪を全国へ。続く仕組みとして育てたい
お客様からの寄付や社員らのサポートによって、子どもたちの明るい未来を支える本プロジェクト。社会問題の解決に向けて、これからも続く仕組みとして育てていく方針です。最後に、このプロジェクトのリーダーを務める、サステナビリティ推進部 課長の香川さんに展望を伺いました。
エコリング サステナビリティ推進部 課長 香川さん

「子どもたちが社会に出て壁にぶつかった時、『あの時エコリングであんなことしたな』と思い出してほしいです。温かい気持ちや、こうしてサポートする大人の存在があることを思い出してほしいと思います。
今は関東だけですが、今後は本社のある関西やそれ以外の地域、日本全国へとこのプロジェクトを広げていきたいです。そして、私たちの事業が直接社会貢献につながっていることを実感しながら働く社員たちも増えていってほしいと思います」
◎企業情報
株式会社エコリング
本社所在地:兵庫県姫路市御国野町 御着352番地
代表取締役社長:川端宏
URL:https://ecoring.co.jp/



