
名古屋地検は7月10日、名古屋市中区の名古屋流町郵便局でクマよけスプレーを噴射したとして威力業務妨害容疑で逮捕されたベトナム国籍の男性(22)を、軽犯罪法違反に罪名を変更した上で不起訴処分とした。地検は「威力業務妨害罪ではなく軽犯罪法違反罪が成立すると判断し、事案の軽重や犯行後の状況などの情状を考慮した」と説明している。
翌11日未明には、千種区今池のバーで20代の女性客が店外で催涙スプレーを噴射し、客と従業員約20人がせき込む事案が発生したが、関連を示す情報はない。
名古屋流町郵便局で8人体調不良、5人を搬送
最初の事案は7月1日午前11時50分ごろ、中区金山4丁目の名古屋流町郵便局で発生した。CBCテレビなどによると、局内にいた8人がのどの痛みなどを訴え、このうち男女5人が搬送された。いずれも軽症で、郵便局は同日の営業を取りやめた。
男性は翌2日、威力業務妨害容疑で逮捕され、「私のやったことで間違いありませんが、誤ってスプレーのレバーを引いてしまった」と供述したと報じられた。一方、メ~テレは捜査関係者への取材として、防犯カメラに男性が知人とふざけ合いながら自ら安全ロックを解除し、噴射したとみられる様子が映っており、警察が故意とみて捜査していたと伝えている。
名古屋地検は7月10日、罪名を威力業務妨害から軽犯罪法違反に変更し、不起訴処分とした。地検が公表したのは、軽犯罪法違反罪が成立すると判断したことと、事案の軽重や犯行後の状況などを考慮したことまでで、示談や弁償の有無など具体的な事情は明らかにしていない。
翌朝は今池のバーで女性客が噴射、約20人せき込む
7月11日午前4時10分ごろ、千種区今池5丁目のアミューズメントバーで、20代の女性客が店外で催涙スプレーを噴射した。女性は「知人にスプレーの効果を見せるため噴射した」などと説明している。店内にいた客と従業員約20人がせき込んだが、全員が避難し、けが人は確認されていない。消防などが出動し、警察が当時の状況を調べている。
名古屋流町郵便局の事案に関する名古屋地検の処分翌朝に同じ市内で別のスプレー事案が起きたため、Xでは両件を結び付ける投稿も見られたが、関連を示す情報は確認されていない。
名古屋地検が公表した不起訴理由
「不起訴」は、検察官が刑事裁判を請求しない処分であり、裁判所が言い渡す「無罪」とは異なる。不起訴には、犯罪の成立を認定する証拠が不十分な「嫌疑不十分」や、犯罪の成立が認められても犯人の性格、年齢、境遇、犯罪の軽重、犯行後の状況などを考慮して起訴を見送る「起訴猶予」などがある。
名古屋流町の事案で、名古屋地検は軽犯罪法違反罪が成立すると判断した上で、情状を考慮したと説明した。ただし、不起訴の類型を「起訴猶予」と明示してはおらず、本人の反省や示談、弁償が進んでいたとする情報も公表されていない。
不起訴処分については、その犯罪の被害者や告訴・告発をした人などが検察審査会に審査を申し立てられる。また、申立てがなくても、検察審査会が新聞記事などを契機に職権で審査を始める場合がある。
催涙スプレーの携帯と使用は別に判断
軽犯罪法1条2号は、正当な理由なく、人の生命や身体に害を加えるために使われる器具を隠して携帯する行為を処罰対象としている。一方、最高裁は2009年、具体的な事情の下で、防御目的による催涙スプレーの携帯には「正当な理由」があったとして無罪を言い渡した。護身用の携帯が常に軽犯罪法違反になるわけではない。
催涙スプレーを噴射した場合は、使用態様や被害の結果によって暴行罪、傷害罪、威力業務妨害罪などの対象となり得る。郵便局の事案は不起訴処分となったが、バーの事案は警察が状況を調べている段階にあり、同じ結論になるとみなすことはできない。



