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NPB「審判へのSNS誹謗中傷監視システム」導入が浮き彫りにした、ファンとの深刻な温度差とABS待望論

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NPB 公式X
画像出典:日本野球機構(NPB)公式X

日本野球機構(NPB)は1日、審判員に対するSNS上での誹謗中傷や脅迫への対応強化を目的に、「SNS誹謗中傷監視システム」を導入した。

審判員を言葉の暴力から守るための当然の措置として理解される一方で、ファンの間からは判定の透明性や精度向上を求める声が噴出しており、運営側との深刻な温度差が浮き彫りとなっている。

 

NPBが発表した「審判員を守る」SNS誹謗中傷監視システムとは

近年、国内外のプロスポーツ界において、選手や監督、そして審判員に対するSNSを通じた心ない攻撃は深刻な社会問題となっている。匿名性を盾にした悪意ある言葉の暴力は、対象者の名誉や尊厳を深く傷つけるだけでなく、時には精神的な不調にまで追い込むケースも後を絶たない。競技の公正な進行を担う審判員が、謂れのない脅迫や人格否定の対象となることは決して許されるべきではなく、NPBが組織として彼らを守るための具体的な防衛策に乗り出したこと自体は、時代の要請に応えた当然の処置であり、評価されるべき第一歩である。

同機構が公式ウェブサイトなどで発表した声明文によると、今後はSNS上の投稿を継続的にモニタリングし、悪質な投稿が確認された場合には、プラットフォーム運営会社への通報やアカウントのブロック、投稿の削除要請を行うという。さらに、事案の悪質性によっては警察への被害届提出や法的措置も辞さないという強い姿勢を示した。「すべての関係者が安心してプロ野球の発展に取り組むことができる環境を整備するため」という大義名分に、異を唱える者はいないはずだった。

 

「まずは誤審を減らせ」監視システム導入に対するファンの批判とABS待望論

しかし、この発表が行われたNPBの公式Xアカウントの投稿欄には、ファンの賛同よりも、むしろ怒りや呆れを含んだ冷ややかな声が殺到する事態となっている。

X上のユーザーの反応を確認すると、誹謗中傷そのものを肯定する声は皆無に等しい。だが、圧倒的多数を占めているのは、「監視システムを導入する前に、まずは審判の判定精度を向上させるべきではないか」という、NPBの優先順位への疑問符である。

あるユーザーは、「本気で審判団を守りたいなら、まずABS(自動ストライク・ボール判定システム)をいち早く導入したらどうですか。誹謗中傷の大半は審判団によるあり得ない誤審が起因なのだから」と指摘している。また別のユーザーからも、「まともな判定できるようになってから言え」「誤審を減らす努力をしないでこちら側ばかりを取り締まるのか」「そのようなことをやっている暇があったら、審判のレベル強化、ABSの導入を進めた方がよっぽど野球界のためになる」といった厳しい意見が相次いでいる。

ファンの不満の根底にあるのは、昨今のプロ野球において散見される「不可解な判定」への不信感だ。球審によってストライクゾーンが極端に異なる、あるいは同じ試合の中でもイニングによって基準がブレるといった事象は、長らくプロ野球の「人間味」や「不文律」として片付けられてきた。しかし、中継技術が飛躍的に発達し、視聴者が様々な角度からのスロー映像や球道データをリアルタイムで確認できる現代において、グラウンド上の判定と映像の事実との乖離は、ファンにとって到底納得できるものではなくなっている。

だからこそ、SNS上では「ABS(自動ストライク・ボール判定システム)」の導入を渇望する声が、呪文のように連呼されているのである。すでにアメリカのマイナーリーグや韓国プロ野球(KBO)などで導入・テストが進められているテクノロジーをなぜ日本のプロ野球は頑なに導入しようとしないのか。人間である以上、ミスは起こり得る。だからこそ、テクノロジーの力で審判の負担を軽減し、より正確な判定を下せる環境を整えることこそが、真の意味で「審判を守る」ことに繋がるのではないか。これがファンの共通認識となっている。

 

不透明なリクエスト制度への不満とプロ野球界が直面する根本的解決への課題

さらにファンの怒りの矛先は、「リクエスト(リプレー検証)制度」の不透明さにも向かっている。ある投稿者は、「リクエスト判定結果も誰が見てもアウトをセーフと言ったり、明らかにセーフをアウトにしたり(中略)誰が確認しているのか教えて欲しい」と訴え、また別の声も「そもそもリクエストも誰が判断しているのか公表しない時点でズレている。低レベルな対策」と切り捨てている。

判定に対する異議申し立ての手段として導入されたはずのリクエスト制度が、密室での検証過程を経て、映像とは矛盾するような判定が下されることで、かえって疑心暗鬼を生んでいる現状がある。プロセスがブラックボックス化している以上、ファンがフラストレーションを溜め込むのは必然の理と言えよう。

もちろん、いかなる理由があろうとも、判定への不満を理由に審判員個人を誹謗中傷することは言語道断であり、厳しく罰せられるべきである。ファン側も「健全な批判・議論」と「誹謗中傷」の境界線を強く意識し、自制する倫理観が求められる。

しかし同時に、NPB側も今回のSNS上の反応を、「一部の過激なファンのノイズ」として片付けてはならない。ファンが求めているのは、言論の統制ではなく、野球という競技そのものの納得感と透明性の向上である。

監視システムの導入という「対症療法」は確かに必要だ。しかし、誹謗中傷の温床となっている判定のばらつきや不透明な検証プロセスという根本的な原因に向き合わず、テクノロジーの導入による「原因療法」を先送りし続けるのであれば、ファンと運営側との溝は深まるばかりである。

プロ野球が今後も多くのファンに愛され、感動を与えるエンターテインメントであり続けるために。NPBには、誹謗中傷の取り締まりという強硬策と並行して、ABSの早期導入検討やリクエスト制度の透明化といった、競技の質を高めファンとの信頼関係を再構築するための「本質的な改革」に踏み出す覚悟が問われている。

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ライター:

Sacco編集・ライター。企業に直接出向く取材が中心。扱う記事はサステナビリティ、エンタメ関係が多め。

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