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大阪〜名古屋が5,690円で“プレミアム旅”に 新幹線より安く快適な近鉄特急ひのとりの実力

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ひのとり
特急ひのとり|近畿日本鉄道 公式サイトより

大阪から名古屋へ行くなら新幹線。そう決めている人は多い。たしかに速い。だが、難波のホームに深い赤の車体が入ってくると、その思い込みは少し揺らぐ。近鉄特急ひのとりは、新幹線より時間がかかる。それでも選ばれているのは、安いからだけではない。移動そのものを、疲れる時間ではなく、体を休める時間に変えてくれるからだ。

 

 

新幹線は速い。それでも難波発なら話は変わる

大阪と名古屋を結ぶ交通手段として、東海道新幹線の強さは今も別格だ。新大阪から名古屋までは、のぞみなら約50分。朝の会議、日帰り出張、滞在時間を少しでも長く取りたい旅行なら、新幹線を選ぶのが自然だろう。目的地まで一気に運んでくれる速さは、やはり大きな武器である。

ただ、その速さは新大阪から乗ることが前提になっている。梅田周辺からならまだしも、難波、心斎橋、天王寺、阿倍野方面から動く人にとって、新大阪まで北上する時間は思った以上に重い。地下鉄を乗り継ぎ、人の波に押されながら改札を抜け、新幹線ホームへ向かう。列車に乗るころには、すでに少し疲れている。速さを買ったはずなのに、その前段階で体力を削られるのは皮肉だ。

料金も軽くはない。新大阪〜名古屋の新幹線は、自由席で5,940円、指定席で6,680円、グリーン車なら8,950円ほどになる。急ぐ日なら迷わず払える金額でも、休日の小旅行や帰省、急ぎではない移動では少し考える。そこまで早く着く必要があるのか。もう少し安く、もう少し楽に移動できないのか。その隙間に入ってくるのが、近鉄特急ひのとりだ。

 

大阪難波から名古屋へ。赤い特急がつくる“ちょうどいい余白”

近鉄特急ひのとりは、大阪難波と近鉄名古屋を結ぶ名阪特急である。大阪難波〜近鉄名古屋間を最速2時間5分で走る。新幹線にはかなわない。だが、在来線だけで移動するほど長くもない。乗り換えなしで、座ったまま名古屋まで行ける。この約2時間は、思っているより現実的だ。

大阪難波駅のホームに立つと、深いメタリックレッドの車体が目に飛び込んでくる。通勤電車の色とは明らかに違う。少し重みがあり、落ち着いた赤だ。ドアが開き、車内に足を踏み入れると、駅のざわめきが後ろへ引いていく。派手な演出で押してくるわけではない。それでも座席の広さ、照明の落ち着き、車内の静けさが、これからの移動をただの移動で終わらせない。

料金は、大阪難波〜近鉄名古屋でレギュラー車両が4,990円、プレミアム車両が5,690円。プレミアムでも新幹線の自由席より少し安く、指定席より約1,000円、グリーン車より3,000円以上安い。ここがひのとりのうまいところだ。安いから我慢して乗るのではない。新幹線より時間はかかるが、そのぶん車内でしっかり休める。節約と快適さが、かなり近い場所で重なっている。

 

レギュラーでも十分広い。後ろを気にせず座席を倒せる意味

ひのとりは、どうしてもプレミアム車両に目が行く。だが、レギュラー車両でも十分に快適だ。全席にバックシェルが採用されており、座席を倒しても後ろの乗客に影響しにくい構造になっている。これが長時間の移動ではじわじわ効いてくる。

列車でリクライニングするとき、後ろの人を気にした経験は誰にでもあるはずだ。テーブルを使っていないか、膝に当たらないか、迷惑そうにされないか。ほんの数秒の遠慮なのに、その気まずさのせいで、結局ほとんど倒せないまま過ごすことがある。安く移動できても、首と腰を固めたまま目的地に着けば、得をした気分は薄い。その点、ひのとりの座席は気楽だ。体を深く預け、足元を整え、スマホを充電しながら、流れていく景色を眺める。大阪の街並みが遠ざかり、住宅地を抜け、山あいの風景が近づいてくる。移動時間を削るのではなく、移動時間をどう過ごすか。その発想でつくられた列車だとわかる。

仕事をするにも、休むにも向いている。パソコンを開いて資料を読む。途中で少し目を閉じる。新幹線のように、気づけば名古屋という速さはない。だが、呼吸を整えながら進んでいく感覚がある。名古屋に着いたとき、早かったという驚きはないかもしれない。それでも、疲れが少ない。この差は、所要時間だけを並べても見えてこない。

 

700円差のプレミアム。人気が集まるのも当然だ

さらに特別感を求めるなら、プレミアム車両がある。編成の先頭と最後尾に設けられたプレミアム席は、全席3列シート。シートピッチは130cmで、床を高くしたハイデッカー構造になっている。前方の大きな窓から線路が伸びていく眺めは、ただの移動を列車旅に変える。

大阪難波〜近鉄名古屋の場合、レギュラーとプレミアムの差額は700円。この金額設定が悩ましい。レギュラーでも十分に快適だが、あと700円で、より広く、より落ち着いた席に座れる。旅行の始まりなら財布のひもは少し緩む。帰り道で疲れていれば、なおさらだ。飲み物と軽食を少し控えれば届く差額で、約2時間の居心地が変わる。人気が集まるのも無理はない。

週末の午前便や観光に使いやすい時間帯は、プレミアム席が取りにくくなることもある。先頭側の席や一人掛け席を狙うなら、早めに予約した方がいい。新幹線のように本数の多さで押し切る移動ではなく、乗りたい列車と座りたい席を取りにいく移動になる。この少しの手間も、ひのとりらしい。予約画面を開き、空席を見て、席を選ぶ。そこで移動はもう始まっている。交通手段を選んでいるというより、その日の過ごし方を決めている感覚に近い。

 

安さより、疲れにくさで選ばれている

ひのとりを選ぶ人は、新幹線の速さを知らないわけではない。むしろ知ったうえで、あえて選んでいる。急ぎの出張なら新幹線でいい。だが、すべての移動が時間との勝負ではない。50分早く着くことより、2時間を気持ちよく過ごすことの方が大事な日もある。難波で買い物をしてから名古屋へ向かう人。大阪観光の帰りに、混雑した新大阪まで戻りたくない人。子ども連れで、少しでも座席に余裕がほしい人。ひとりで静かに車窓を眺めたい人。そうした人にとって、ひのとりは節約ルートではなく、疲れを増やさないための選択肢になる。

新幹線は、時間を短くする乗り物だ。一方で、ひのとりは移動時間の質を上げる乗り物だ。どちらが正解という話ではない。何を削り、何を残すかの違いである。速さを取るのか、余白を取るのか。大阪〜名古屋という身近な距離だからこそ、その選択がはっきり見える。

 

大阪〜名古屋移動は、速さだけで決めるともったいない

大阪〜名古屋の移動は、長く新幹線が正解とされてきた。たしかに速さでは圧倒的だ。だが、難波からそのまま乗れる便利さ、料金の抑えやすさ、座席の広さ、後ろを気にせず休める安心感まで含めると、近鉄特急ひのとりはただの代替案では終わらない。赤い車体に乗り込み、座席に深く腰を下ろす。ドアが閉まり、列車が静かに動き出す。新幹線のような鋭い速さはない。それでも車内には、急かされない時間がある。名古屋に着いたとき、早かったとは思わないかもしれない。だが、疲れなかったとは感じるはずだ。

移動を最短で済ませることばかり考えていると、自分の体を置き去りにする。大阪〜名古屋を急いで駆け抜けるのか。それとも少し安く、少し楽に、ちゃんと休みながら向かうのか。新幹線一択で考えていた人ほど、ひのとりを知らないままでいるのは、かなりもったいない。

 

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ライター:

Webライター。きれいごとだけでは済まない現実を、少し距離を置いて綴っています。

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