
食品ロスを減らしながら、支援を必要とする人へ食を届ける。その担い手を、行政でも一企業でもなく区民が中心となってつくり上げた。
社会福祉法人豊島区民社会福祉協議会内に立ち上がった「フードバンクとしま」が8日に開所式を開き、翌9日から正式に事業を始めた。区民・団体・行政・地域のつながりから生まれた、全国でも先進的な食のセーフティネットだ。
保管場所も人も足りなかった、これまでの限界
同法人によると、豊島区民社会福祉協議会は2021年10月から「フードバンクあったか豊島」を運営してきたが、保管スペースや運営人員、財源の不足から食品の受け入れを拡大できないという課題を抱えていた。一方、区内で子ども食堂やフードパントリーを運営する地域団体からは、物価高騰で食支援のニーズが増大しているのに安定的な食品確保が難しく、活動の継続が困難だという声が上がっていた。
そこで2025年2月からフードバンクの勉強会を開催。豊島区から保管場所の無償貸与が得られることになり、区民・地域団体とともに新たに「フードバンクとしま」を設立する運びとなった。現場の困りごとから出発し、行政が場所を提供し、区民が担い手となる。立ち上げの経緯そのものに、このフードバンクの性格が表れている。開所式は8日に区民ひろば長崎で開かれ、翌9日から食品の受入・保管・提供を通じた区内の食のセーフティネット構築事業が本格的に始まった。
「食のセーフティネット」を支える3つの柱
フードバンクとしまは3つの柱を掲げる。第一は食のセーフティネットだ。企業・個人・行政からの食品寄付を一元管理し、子ども食堂やフードパントリー、困窮世帯へ安定供給する、豊島区全域の食支援ネットワークの「核」となる。
第二は区民・団体・地域の連携で、それぞれが実務を担う持続可能な運営モデルを目指す。第三は多様な支援が交差する場であること。子ども、高齢者、障がいのある人、外国ルーツの人など、地域に暮らす誰もが「食」を通じてつながり支え合う、地域共生の実践の場と位置づける。立ち上げには生活困窮者支援のTENOHASIや子どもを見守る豊島子どもWAKUWAKUネットワークなど、区内で活動する複数のNPOが名を連ねた。孤立した若者の居場所・住宅・仕事を支えるサンカクシャなども関係団体として加わり、食を入り口にしながら、子ども・若者・困窮者支援の現場が一つのネットワークでつながる構図だ。
日本一の人口密度のまちが全国の先頭に立つ理由
豊島区は日本一の人口密度を誇る都市型自治体であり、多様な世代・国籍・文化が共存するまちだ。多彩な地域活動の実践を分かち合う土壌があり、2026年2月には東京都で初めて「全国校区・小地域福祉活動サミット in としま」を大正大学で開催し、北海道から沖縄まで約600人が参加した。
「食」「地域連携」「多様な支援」が一体となったフードバンクとしまの運営モデルを、同協議会は、全国の都市型自治体が直面する課題への豊島区からの一つの解答だとする。都市の過密と多様性は、孤立や困窮を生みやすい一方で、支え合いの担い手も多く抱える。その両面を地域ぐるみの仕組みに変えようとする試みだ。
「寄付してもらう」から「共に地域をつくる仲間に」
運営にあたり、フードバンクとしまは「寄付してもらう」ではなく「共に地域をつくる仲間になる」関係を大切にするとしている。食品の寄付、食品仕分けや配送のボランティア、運営資金の支援など、さまざまな形での参加を呼びかけている。 物価高騰が家計を圧迫し、食の支援を必要とする人が増える一方で、まだ食べられる食品が大量に廃棄されている。その需給のミスマッチを地域の手で結び直すフードバンクは、食品ロス削減と困窮者支援を同時に担う仕組みでもある。区民が主体となって築いた豊島の挑戦は、行政の制度だけでは埋めきれない隙間を地域の力で支える、地域共生社会のあり方を考える上で示唆に富む。



