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有限会社勝山電気工事

https://www.katsuyama-ew.com/

〒370-3103 群馬県高崎市箕郷町下芝658

0279-75-2474

中小企業は、ここまでやれる。勝山電気工事が群馬・高崎で実装する、採用と組織のアップデート

ステークホルダーVOICE 経営インタビュー
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有限会社勝山電気工事 宮島茜氏
有限会社勝山電気工事 取締役・取締役・経営企画室室長 宮島 茜 氏(画像提供:有限会社勝山電気工事、以下同)

群馬県高崎市に本社を構える有限会社勝山電気工事。1986年創業、総勢30名の電気工事会社で、ここ1年弱、求職者の年間応募数が2件程度であったところから20件へと跳ね上がる変化が起きている。

仕掛けたのは、現社長・勝山敦氏の次女であり、取締役・経営企画室室長を務める宮島茜氏だ。これまで社長が一人で担っていた採用を、現場社員と次期社長を巻き込むフローへと再設計し、中高生インターンやSNS運用といった施策を次々に実装。創業者・勝山友丕氏が築き、現社長のもとで育まれてきた社風の上に、いま静かな組織変革が進んでいる。

 

家業に戻った経営企画室長。「父が耕した土に、花を咲かせる」役割

群馬県高崎市箕郷町。ホテル、工場、病院、学校といった施設の電気設備工事を、打ち合わせから設計、施工まで一貫して手がける有限会社勝山電気工事は、1986年の創業以来、地域に根ざして歩んできた総勢30名の電気工事会社だ。2026年には創業40年を迎える同社は、「誠意を持ってお客様に寄り添う、ホスピタリティの精神」を社風の核に据えており、いま静かに、しかし着実な組織変革が進んでいる。

有限会社勝山電気工事 外観
有限会社 勝山電気工事 本社 外観

その推進役を担うのが、現社長・勝山敦氏の次女であり、取締役・経営企画室室長を務める宮島茜氏だ。中学・高校生の頃から「ゆくゆくは父と一緒に会社の経営がしたい」と考えていたという宮島氏は、新卒で不動産会社の営業職に就き、結婚と出産を経た後、2021年10月に正式に勝山電気工事へ入社した。現在は、採用戦略の立案から広報、新規事業の創出、バックオフィスの強化までを担っている。

有限会社勝山電気工事 宮島茜氏

宮島氏
「これまで社長が、時間をかけて会社という土壌を耕してきてくれたんです。そこにどう花を咲かせるかということが、いま私に与えられている役割だと思っています」

その象徴の一つが、2023年9月にオープンした自社カフェ「ple cafe」だ。宮島氏が入社後に立ち上げを担当し、現在も会社の隣で営業を続けている。地域とのつながりを生む拠点であると同時に、来客との打ち合わせや後述する人材育成の場としても機能している。宮島氏が手がけた最初の「花」とも言える存在だ。

そして2026年11月、勝山電気工事は大きな節目を迎える。現社長・勝山敦氏から、血縁外の専務取締役・大西拓氏へと社長が承継されるのだ。同社は「役員や現社長の後任を親族から選ぶのではなく、やる気と実力を兼ね備えた適職者を従業員の中から選出する」という方針を明確に打ち出しており、宮島氏自身は今後設立予定のホールディングス親会社の経営を担っていく構想だという。

経営企画室長としての宮島氏が、入社後まず本格的に着手したのが、採用フローの抜本的な見直しだった。その背景には、長年同社が抱えてきた構造的な課題があった。

ple cafe
同社がプロデュースしているカフェ ple cafe(ぷるかふぇ)
 

「社長の目、腐っちまったんか」現場の一言から始まった、採用フローの見直し

かつての勝山電気工事の採用は、年に1件か2件の応募に対し、社長が一人で面接して合否を決めるというシンプルな形を取っていた。応募ルートは、求人広告のほかに、社屋外への張り紙や、社長自身が日常のなかで声をかけてきた縁などが中心。実際、2026年から社長を引き継ぐ大西氏も、10年ほど前にそうして入社した一人だ。

転機となったのは、ある日、現場の職人から漏れた一言だったという。

「ある時、現場の職人さんが、『社長の目、腐っちまったんか』みたいなことを言い出したらしくて。何かと思ったら、『最近社長が入れる人、ちょっとうちとは合わないんじゃないか』という内容でした。それを聞いて社長は、社員を増やすということに対して、これまで現場の人たちを巻き込まずに自分一人で判断してきたことに気づいたそうです」

そこから採用フローの再設計が始まる。現在に至るまで、勝山電気工事の採用フローは3度のアップデートを経ている。

まず取り組んだのが、「窓口は社長が担うが、面接は現場社員に任せる」という形だった。当時の中堅社員が面接官を務める設計である。しかし、この形にも限界があった。社員が「話していて印象が良ければそのまま採用する」という運用になりがちで、現場とのミスマッチの解消にはなかなか至らなかったという。

そこで導入されたのが、社長がまず「会社見学」という形で求職者と一対一で対面し、創業以来の価値観を丁寧に伝える方法だ。そのうえで、その想いに共感した人だけが社員との面接へと進むという二段構えの設計である。

有限会社勝山電気工事 宮島茜氏

「思いを一番強く持っているのは社長なので、そこで一度しっかり伝えて、一緒にやりたいと言ってくれた人だけ面接に進めるという形にしました。社長との対話は面接とは異なるため、なぜ転職活動しているのかといった質問は一切していませんでした」

その後の2年間で、30歳以下の若手社員が3名入社することになる。応募に至った経緯はそれぞれ偶然の縁だったが、社長から直接、会社の想いや働き方の方針を聞いたうえで入社を決めた点は、3名に共通していたという。

応募経路もまた、勝山電気工事が地域でどう見られているかを物語っていた。1名は同業他社からの転職で、毎日ルート営業で同社に出入りしている仕入れ業者の担当者経由での紹介。1名は、群馬の知人に「電気工事屋でいいところを知らないか」と相談したところ、勝山電気工事を勧められての応募。残る1名は、社屋の「求人募集中」の張り紙を見ての応募だ。業界の取引先からも、地域の知人からも、自然と同社の名が挙がる。地域に根ざして40年近く歩んできた会社の信頼が、応募経路の多様さに表れていた。

 

応募が年2件から20件へ。経営企画室が引き出した、外部との縁

採用フローを整える一方で、宮島氏は会社の認知度そのものを上げる取り組みにも着手していた。そのきっかけとなったのが、2024年から始めた中高生向けの職場体験プログラムの受け入れだった。

宮島氏自身の母校である中高一貫校の職員から「職業体験を始める」という話を聞いたことが発端となり、まずは2024年夏、中学3年生2名の受け入れからスタート。彼らには自社カフェ「ple cafe」の数字改善を課題として与えた。

続いて同年秋には、高崎北高校の1年生6名を受け入れ、「勝山電気工事の採用戦略を考える」という課題に取り組んでもらった。社員数や組織図、売上計画といった情報を惜しまず開示する一方で、「こういう人が欲しい」「ここをこう見てほしい」といった方向づけは一切しない。

勝山電気工事 職業体験 配布資料
職場体験の高校生と行った「採用戦略会議」で実際に使用した資料

体験中の3日間、宮島氏は毎日中間発表の場を設け、出てきた案に対して「この視点が足りないかもしれない」「この角度ではどうか」と問いを重ねる壁打ち役に徹したという。答えはあくまで生徒たちが自分で導き出す。そう線を引いた伴走だった。

3チームのプレゼンから出てきた案のうち、宮島氏が実装に踏み切ったのは3つだった。大学体育会の部活動と企業をスポンサーで結ぶサービス「ブカスポ」の活用、SNSの本格運用、そして近隣の工業高校のインターンシップ受け入れ。いずれも、最終的な判断と実装は経営側が責任を持って行った。

勝山電気工事 職業体験生が作成した資料
生徒が発表したプレゼン資料の中の1ページ

その「ブカスポ」を1年間運用する過程で、宮島氏は思いがけない縁にも巡り合う。サービスを通じて知り合った、インスタグラムで活動するインフルエンサーから「企業のSNS運用代行を始めたい」という話があり、その第一弾の顧客として勝山電気工事を担当してもらうことになったのだ。2025年9月から本格的にインスタグラム運用を開始すると、それまで年に2件か3件しかなかった応募が、わずか4〜5か月で20件にまで増加した。

ただし、宮島氏はこの数字を単純に喜んでいるわけではない。

「ただ増えたという段階で、誰でも入れようとは思っていなくて。今すごくいい雰囲気になってきているところで、合わない人を入れてしまうのはもったいない。だから採用フローも、もう一度ちゃんと考え直そうという話をしました」

 

「ここで合わなければ採用を見送る」現場が決める、6項目のチェックシート

応募数の急増を受けて整えられたのが、現在の3段階面接フローだ。まず社長が一対一で会社の想いと方針を伝える。続いて、次期社長の大西氏が面接官として進行役を務める二次面接が行われる。そしてこの面接には、現場で第一線を担う若手社員が同席する仕組みになっている。

同席するのは、勤続5〜10年程度、年齢30歳前後の中核人材3名だ。いずれも、自分の職人としての技術を磨くだけでなく、会社の次世代を担う立場として期待を寄せられたメンバーである。

「いま働いているみんなに対しても、求職者の人は君たちが一緒に働くことになる人なんだよ、という意識を持ってもらいたかったんです。10年前にあったような、現場と新入社員のあいだに溝が生まれてしまう状態には、絶対にしたくなくて」

面接で使われるチェックシートには、現場社員が回答する6項目が並ぶ。

「一緒に働く姿が自然にイメージできたか」「指導したら伸びそう、伸ばしたいと思えたか」「誠実さ・素直さがあったか」「勝山電気工事の価値観に合っているか」「この人なら任せていけると感じたか」「現場の雰囲気を壊さない、むしろ良くしてくれそうか」。そのすべてが「YES」でなければ、内定は出ない。経営陣ではなく、現場の判断が絶対の重みを持つ。

「大西専務はOKだったけれど、社員が『ちょっとイメージが湧かない』と判断して見送ったケースもあります。そこで経営側が押し切ってしまったら、彼らに任せている意味がなくなってしまう。だからこそ、現場の意見は絶対に尊重しています」

20件の応募から、内定に至ったのは3名。実際に入社したのは1名だった。応募数の増加に飛びつかず、ふるいを丁寧にかける姿勢が、ここに表れている。

入社後の伴走体制も整えた。先輩社員が一対一でOJTを担う「BB(ビッグブラザー)制度」と、別部署のメンターが月一回のランチ面談を行う「メンター制度」を2025年度から導入。会社の隣にある自社カフェ「ple cafe」が、この月一面談の舞台として活用されている。

勝山電気工事 ple cafe
 

社長が一人ひとりと向き合った、経営の数字との対話

採用と人材育成の改革は、もう一つの変化と並行して進められていた。会社全体の業績への、丁寧な向き合い直しである。

2023年頃、社長交代の時期が見え始めた頃のこと。高崎市の電気工事会社のランク分けにおいて、勝山電気工事は最上位のAクラスに位置していたが、そのポジションを維持し、次の代へ確かな形で会社を渡していくためには、組織全体として売上をもう一段引き上げる必要があった。社長は、そこに強い危機感を抱いていたという。

ある日の全体会議で、社長は工事担当者ごとの売上一覧を全員に共有した。一人ひとりに対して、自分の担当分が会社全体のなかでどのような位置を占めているのか、利益にどう貢献しているのかを、数字で見える形にして共有していったのである。

「『本当にみんなでやらないと達成できないし、みんなにしっかり還元することも難しくなる』という話を、社長が丁寧に伝えていったんです」

大規模商業施設のメンテナンスなども一手に担う同社にとって、提案次第で受注できる仕事はまだまだあるはずだった。「お客様の困りごとに、もう一歩踏み込んで提案すれば応えられることがあるはずだ」。社長は、現場一人ひとりと向き合い、対話を重ねていった。経営として向き合うべきフェーズに、会社全体が踏み出した瞬間だった。

その対話を経て、勝山電気工事は評価制度の明確化にも踏み込んでいった。年2回・各2か月分のボーナスに加えて決算賞与も支給され、最高額は100万円に達するという。

「『評価Sの人は何パーセント、評価Aの人は何パーセント』というように、その年の決算賞与に充てられる金額を、明確に制度化された評価に応じて分配する仕組みにしています。頑張った分がちゃんと数字で返ってくる。ですから、前向きな人がしっかり結果を出せる雰囲気になっていって、売上も伸びている状態です」

評価と還元の透明性が、現場の挑戦を後押しする。挑戦が成果を生み、成果が報酬として返ってくる。この循環が、いまの勝山電気工事の根幹を支えている。

 

中学生が、高校生インターンの設計図を描く。地域と未来を巻き込む採用観

採用フローの再設計と並行して、宮島氏が続けてきたのが、先にも触れた職場体験プログラムの受け入れだ。2024年度に始まったこの取り組みは、年度をまたいで継続している。ただしこれは、採用戦略の柱というよりも、「会社のブランディングと5年後10年後を見据えた長期的な接点づくり」という位置づけで進められている。

象徴的なのが、2025年夏に行われたインターンの内容である。前年秋に高校生から提案された「工業高校のインターン受け入れ」を実装するにあたって、宮島氏は体験に訪れた中学3年生に対し、「工業高校生向けインターンのプログラムを考える」という課題を出した。中学3年生たちは社員全員の前でプレゼンを行い、「電気工事の楽しさを、職人さんとの交流を通じて感じてもらうべき」という結論を導き出したという。

職場体験に訪れた中学生が作成した資料

「『この子たちが一生懸命考えてくれたプログラムなら協力しよう』という雰囲気に、社員たちもなったんですよね。私が『工業高校の子たち7人来るから協力してください』と言うのとは、現場に伝わる熱量がぜんぜん違って」

2025年10月、実際に工業高校から7名のインターン生がやってきた。中学生が設計したプログラムに沿って、3チームに分かれて会議室の壁に「壁面電気工事アート」を制作。

勝山電気工事 インターン生の作品
社員とインターン生が協力して制作した「壁面電気工事アート」

職人が一人ずつチームに付き、必要な部材を倉庫から探したり、買い出しに同行したりしながら、3日間の実技体験が進んだ。最終日に行ったアンケートで「勝山電気工事に入りたいか」と問うたところ、7名中4名が「はい」と回答したという。

「『いい会社だった』『寄り添ってくれた』とインターン生が言ってくれれば、それは家族や地域の人、先生、同級生にも波及していくわけです。中小企業こそ、5年後10年後を見据えて、会社のファンやつながりがある人たちを増やしておくことが大事だと思っています」

採用フローの再設計、現場社員を巻き込んだ面接、評価と還元の透明化、地域の学生との長期的な接点づくり。いずれの取り組みも、派手な打ち手ではない。しかし、一つひとつが「人にどう向き合うか」という問いに対する、勝山電気工事なりの誠実な答えとして積み上げられている。

創業から40年。「ホスピタリティの精神」を社風の核に据えて歩んできた同社で、宮島氏と次期社長・大西氏、そして現場の若手社員たちが、次の世代の組織のかたちをいま少しずつ形にしている。創業者から受け継がれた土壌の上で進む静かな変革は、規模の大小を超えて、地域に根ざす中小企業が次の一手をどう打つかという問いに対する、一つの実践例として受け止められるはずだ。

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ライター:

Sacco編集・ライター。企業に直接出向く取材が中心。扱う記事はサステナビリティ、ウェルビーイング関係が多め。

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