
2023年や2025年に過去最多の人身被害を記録し、今や私たちの生活を脅かす深刻な社会問題となっているクマ被害。国民の関心も非常に高く、ガイドライン改定案には458件ものパブリックコメントが寄せられた。こうした状況を受け、環境省は2026年4月に「特定鳥獣保護・管理計画作成のためのガイドライン(クマ編)」を改定した。長年「保護」に重きを置いてきた国の対策は、この改定によって大きな転換点を迎えている。
「守る」から「減らす」へ!国の本気度が伺える個体数管理
最大のポイントは、クマ対策の基本方針が「維持・増加」から「維持・減少」へと大転換したことである。これまでのガイドラインでは、クマは自然増加率の範囲内で捕獲上限を定め、「維持・増加」させる保護が推奨されていた。
しかし、新たなガイドラインでは、深刻な軋轢を減らすため、個体数が多い地域では明確な目標個体数を設定し、個体数を適正に減少させる「個体数管理」へと舵を切った。さらに、都道府県ごとのバラバラな対応から脱却し、国が主導して全国統一的な手法で広域的な個体数推定を進めるという、国の本気度が伺える内容となっている。
生活圏に侵入するクマは「原則捕殺」!新導入のゾーニング管理とは
今回の目玉とも言えるのが、人とクマの生活圏を明確に分ける新たな「ゾーニング管理」の導入だ。人の生活圏である市街地や農地を「排除エリア」と明確に位置づけ、ここに侵入するクマや、農作物等に執着し深刻な被害を与えるクマを「問題個体」と定義した。
住民の安全確保を最優先とし、被害が深刻化する前に迅速に事態を収束させるため、これらの問題個体は「原則捕殺」することが適当であると明記されている。加えて、排除エリアへの侵入を未然に防ぐため、その周辺に「管理強化エリア」を新設し、定着防止を目的とした積極的な捕獲やヤブの刈り払いなどを徹底することとなった。
最終手段の「緊急銃猟」と、真の狙いである「完全なるすみ分け」
また、2025年の法改正により創設され、同年9月に施行された「緊急銃猟制度」についても、今回のガイドライン内で整理されている。人の日常生活圏にクマが現れ、一定の条件を満たせば、銃器を用いた対処が可能になった。しかし、国は銃による対処に安易に頼るべきではないと強く釘を刺している。平時から放任果樹の伐採や生ゴミの適切な処理といった誘引物の管理を行い、電気柵を設置するなどして、人とクマの「すみ分け」を実現することが最大の目標とされているのだ。
今回の改定は、単にクマを全滅させるわけではなく、地域個体群の安定的な存続を大前提とした上で、私たち人間の安全を確保するための「攻めの管理」へのシフトと言える。クマとの共存は、もはや「山奥でひっそり暮らしてもらう」ための厳格な境界線作りにかかっている。各都道府県がこのガイドラインをどう特定計画に落とし込み、運用していくのか、今後の動きから目が離せない。



