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キングダム作者・原泰久氏が追悼コメント発表 『満州アヘンスクワッド』作画・鹿子さん死去

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キングダム
原泰久氏 Xより

大ヒット漫画『キングダム』の原作者である原泰久氏が22日、自身のXを更新し、訃報が公表された『満州アヘンスクワッド』作画担当の鹿子さんを追悼した。鹿子さんは11月8日、脈絡膜悪性黒色腫のため亡くなっていたことが同日、編集部から発表されている。37歳だった。

 

原泰久が明かした「キングダムを支えたエース」

原氏はXで、鹿子さんがかつて自身のアシスタントを務めていたことを明かし、「キングダム作画を本当に支えてくれたエースでした」と表現した。この言葉は単なる賛辞ではなく、長期連載の現場を知る者だからこそ発せられる、具体性を伴った評価と受け止められている。

『キングダム』は、週刊連載作品の中でも屈指の作画密度とスケール感を誇る。数万規模の兵がぶつかり合う戦場描写、複雑な陣形、武将たちの心理を映す表情の積み重ねは、作家一人の力量のみで成立するものではない。アシスタントの技術力と判断力が、作品全体の完成度を左右する。

原氏が「エース」とまで言い切った背景には、鹿子さんが単に作業をこなす存在ではなく、構図や画面構成を理解し、制作現場の負荷を引き受けられる人材だったことがあるとみられる。締め切りとクオリティの両立が常に求められる連載現場において、全面的に信頼を置ける存在は貴重だ。

「皆が彼のことが大好きでした」という言葉も象徴的だ。これは技術面だけでなく、人柄や現場での立ち振る舞いを含めた評価であり、制作チームの中で不可欠な存在だったことを物語る。鹿子さんが後に作画家として独立し、独自の世界観を持つ作品を世に送り出したことは、こうした経験の積み重ねが確かな土台となっていたことを示している。

 

闘病中も前向きに向き合った創作への姿勢

原氏は追悼コメントの中で、鹿子さんの闘病中の様子についても具体的に触れた。

「闘病中も何度か会い連絡を取り合っていましたが、最後まであきらめず前向きに戦っていました」という一文は、私的な励ましを超え、創作に向き合う姿勢そのものを伝える証言だ。

漫画家にとって、病と制作は切り離せない問題である。特に週刊連載や長期連載に関わる作家は、体力と集中力を消耗しながら筆を進める。その中で重い病を抱えつつも、創作の現場と完全に断絶しなかった点に、鹿子さんの覚悟がにじむ。

原氏が記した「よく頑張ったな、お疲れ様でした」という言葉には、結果ではなく過程を見つめる視点がある。完成原稿の有無ではなく、最後まで描く側として立ち続けた姿勢そのものへの評価だ。

鹿子さんは生前、自身に万一のことがあった場合について編集部に言葉を託していた。そこから浮かび上がるのは、病状が進行する中でも、物語の行方と読者の存在を意識し続けていた創作者の姿である。原氏が「最後まであきらめなかった」と表現した背景には、こうした行動の積み重ねがあったとみられる。

 

ヤングマガジン編集部が発表した訃報と評価

鹿子さんの死去については、『ヤングマガジン』編集部が22日に公式発表した。発表では、「『満州アヘンスクワッド』の漫画担当である鹿子先生が2025年11月8日に脈絡膜悪性黒色腫のためご逝去されました。37歳でした」と説明し、功績への感謝と哀悼の意を示した。

『満州アヘンスクワッド』は、原作を門馬司氏が手がけ、近代史を背景にした過酷な物語と緊張感のある展開で支持を集めてきた。鹿子さんの作画は、暴力性や人間の業を正面から描き切る力強さが評価され、作品の評価を大きく押し上げていた。

 

生前に託された「完結させてほしい」という意思

編集部は今後の連載についても言及した。「鹿子先生からは生前に『自分の身に何かあった場合は代筆の方を立てて物語を完結させてほしい』という言葉を預かっておりました」と明かし、作画担当は未定としながらも、連載を完結まで導く方針を示した。

作者急逝により未完となる作品が少なくない中で、鹿子さん自身が完結を望んでいた点は重い。今回の判断は、商業的な事情以上に、作者の意思を尊重する姿勢を明確にしたものと受け止められている。

 

SNSに広がる追悼と連載継続への支持

一連の発表を受け、SNS上では追悼と惜別の声が広がった。原氏の投稿を起点に、漫画家や編集者、読者まで反応が連鎖し、制作現場の舞台裏に光が当てられる形となった。

目立ったのは、感情的な言葉よりも、具体的な仕事ぶりや作品評価に言及する声だった。

「キングダムの作画を支えていた人物だと知り衝撃を受けた」

「満州アヘンスクワッドの画面構成は唯一無二だった」といった投稿が相次いだ。

編集部が示した連載継続方針についても、「代筆でも最後まで読みたい」「作者の意思を尊重してほしい」と肯定的な受け止めが多い。一方で、代筆作家への負担や作画再現の難しさを懸念する声もあり、現場の困難さを理解した上での議論が見られる点が特徴的だ。

追悼と継続支持が同時に語られている状況は、作品だけでなく、その背後にいる作家や制作体制まで含めて受け止める、読者側の成熟を映し出している。

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ライター:

千葉県生まれ。青果卸売の現場で働いたのち、フリーライターへ。 野菜や果物のようにみずみずしい旬な話題を届けたいと思っています。 料理と漫画・アニメが大好きです。

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