
IKEAでは、従業員のことをワーカー(Worker)ではなくコワーカー(Co-worker)と呼んでいます。コワーカーとは、「共に働く人」という意味です。この言葉からも分かる通り、IKEAは従業員がお互いに協力し合い心地良く働ける環境づくりに注力しています。
この記事では、そんなIKEAのSDGsへの取り組みについてご紹介します。
平等な社会の実現に注力するIKEAの特徴とは?
IKEAで働く人たちは、IKEAに対してこんな意見を持っています。
- 人に対して温かい、良い意味で変わった企業
- 外見ではなく、中身を見てくれる
- ダブルワーク可能で、フレキシブルに働ける
(IKEA コワーカーストーリーより)
ダブルワークが可能というのは、現在ではあまり珍しくなくなってきましたが、IKEAの場合は短時間正社員という働き方ができ、週平均20〜30時間をIKEAで働き、それ以外の時間を別の仕事に当てることができます。
この取り組みは、IKEAのコワーカーにとって居心地の良い職場環境を作る上でのほんの一例に過ぎません。ここでは、IKEAの特徴となる事柄を3点にまとめてご紹介しますので、ぜひチェックしていただけたらと思います。
顧客もコワーカーもサプライヤーも、すべてを平等に考えるIKEAのビジョン
「より快適な毎日を、より多くの方々に」。このIKEAのビジョンは、顧客に向けた言葉であることはもちろんのこと、コワーカーやサプライヤーとしてIKEAに関連する人たちに向けられた言葉でもあります。
IKEAは商品やサービスを提供する領域を超えて、IKEAビジネスという存在を通して社会にポジティブな影響を与えたいと考えている会社です。そのため、IKEAでは優れた製品をお手頃な価格で提供するだけでなく、誰もが平等に暮らせる社会の実現に注力しています。
IKEAで働くすべての社員は無期雇用契約
IKEAでは、2014年9月から導入された人事制度によって、有期雇用を廃止しました。つまり、IKEAで働くすべての人が無期雇用契約を結ぶこととなり、65歳まで働くことが可能となりました。
また、無期雇用契約の導入に加えて福利厚生の統一化を実施。その結果、IKEAで働くすべての人が同じ福利厚生を受けられるようにもなりました。
IKEAでは、パートナーの定義を配偶者だけでなく12ヶ月以上同じ住所に住居登録している者と定義しており、この福利厚生は法律婚・事実婚・同性婚の区別なく受けられます。例えば、結婚はしていなくてもパートナーが出産した場合には、育児休暇の取得対象となります。
平等が人権の中心だと考えるIKEAならではの取り組みではないでしょうか。
IKEAのコワーカーの99%が正社員
IKEAのコワーカーの99%が正社員だということをご存知でしょうか。
この数値は、2021年度時点の非正規雇用労働者の割合が36.7%(参照元:厚生労働省)の日本としては、とても高い数値です。
では、なぜIKEAではこのようなことを実現できるのでしょうか。
その要因の一つとしては、多様な働き方を選べることにあると言えます。IKEAでは、同じ正社員でも以下の働き方から選ぶことが可能です。
- 39時間/週(フルタイム)
- 25〜38時間/週(週平均30時間)
- 12〜24時間/週(週平均20時間)
フルタイム(上記「1.」)以外は短時間正社員と呼び、プライベートや趣味、ダブルワークなどワークライフバランスを考えて選択できます。また、希望があれば短時間正社員とフルタイム正社員の移動も可能です。
IKEAのSDGsの取り組み
では、IKEAのSDGsへの取り組みをご紹介します。
IKEAのサステナビリティは、多くの企業で実施されているようなリサイクル事業や環境に配慮した素材の使用にも力を入れています。
しかし、中でもコワーカーの働き方やジェンダー平等など、人権に関わる取り組みが特徴的です。
ここでは、平等こそが人権の中心と考えるIKEAだからこその取り組みをご紹介します。
コワーカーの公平性と平等性への取り組み




IKEAでは、代表取締役社長 兼 Chief Sustainability Officerであるペトラ・ファーレ氏が、国際女性デーに合わせてジェンダー平等に関するビデオメッセージを配信しています。2022年時点のホームページに掲載されているメッセージでは、「IKEAが考える平等とはジェンダー・カルチャー・考え方などに関わらず、お互いに尊重し合い受け入れること」だと伝えています。
その中でもIKEAでは女性の活躍に力を入れているとのこと。実際にジェンダーバランス50:50を達成し、2021年7月には女性管理職の割合が51%となりました。この51%という数値は、同業者であるニトリや良品計画と比較しても高い割合です。(以下の表参照)
企業名 | 管理職全体に占める女性の割合 |
IKEA | 51.9%(2021年10月時点) |
株式会社良品計画 | 39.1%(2022年8月末時点) |
ニトリ | 40%程度(2030年代の達成目標) |
同一賃金国際連合(EPIC)の一員として男女平等の賃金を約束



IKEAは同一賃金国際連合(EPIC)のメンバーとして男女平等の賃金を実現するために、IKEAの親会社Ingkaグループはすべての国でジェンダー平等の枠組みを開始しました。その結果、2014年9月よりフルタイム・パートタイムの差別なく同一賃金・同一労働を適用しています。
これは、IKEAが大切にしているEquality at Work(イクォリティ・アット・ワーク)を実現した一つの取り組みです。すべてのコワーカーに正社員の待遇を保証し、多様な働き方を認めています。これは、日本の大企業の中で「同一賃金・同一労働」を適用した初めてのケースとなり、同業他社であるニトリや良品計画では実施されていない取り組みです。(参照元:厚生労働省)
自分のライフステージにあったキャリアを選べる


IKEAでは、キャリアパスは指示されず、自らライフステージに合わせたキャリアを希望することが可能なのだそう。ただ、このことについては他の企業でも取り入れられつつある取り組みでもあります。
そのような中で、IKEAの特徴としては「ジャングルジムキャリア」という考え方を持っていることです。ある女性マネージャーは、子育てと同時にマネージャー(管理職)からコワーカーへ移動し、子育てが落ち着いた段階で再度マネージャーへチャレンジし復帰したそうです。
その他にも、別の部署への移動も可能ですし、日本・海外問わず希望を出すことができます。つまり、自身のライフステージに合わせて上にも下にも横にも、まるでジャングルジムで遊ぶかのようにご自身のキャリアパスを選択できるということです。
この取り組みは、昇進・昇格という価値観の強い日本の企業ではなかなか見られないキャリアパスの作り方だと言えます。
まとめ
この記事では、IKEAの特徴やSDGsへの取り組みをご紹介しました。平等こそが人権の中心だと考えるIKEAのサステナビリティは、ニトリや良品計画が実施するSDGsへの取り組みと比較してみると、ダイバーシティ(多様性)・インクルージョン(多様性の受け入れ)に大きな特徴があることが見て取れます。もし、自社の多様性を強化したいという場合は、ぜひIKEAの取り組みを参考にしてみてください。