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兼松×森永乳業×TOWING、ブラジルで高機能バイオ炭「宙炭」を活用 コーヒー2050年問題に挑むGX共同実証

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「宙炭」施用による土壌改良とGHG削減の実証開始

兼松、サプライチェーンパートナーとの集合写真
サプライチェーンパートナーとの集合写真(提供:兼松)

兼松株式会社は5月22日、森永乳業株式会社および名古屋大学発のグリーン&アグリテックスタートアップ、株式会社TOWINGと共同で、ブラジル・ミナスジェライス州にあるダテーラ農園を対象とした高機能バイオ炭「宙炭(そらたん)」の施用実証実験を開始したと発表した。

この取り組みは、地球温暖化の影響により生産が困難になるとされる「コーヒー2050年問題」への対応策の一つであり、サプライチェーン全体の温室効果ガス(GHG)排出削減を目指すGX(グリーントランスフォーメーション)の一環でもある。

 

土壌の炭素貯留や品質評価など多角的に検証

実証実験では、「宙炭」を農地に施用し、コーヒー豆の収穫量や品質、土壌の炭素貯留量、微生物活性による土質改善の度合いなどを総合的に評価する。成果が得られ次第、実証エリアの拡大を予定しており、長期的には農園全体への応用も視野に入れる。

また、今回の取り組みは、サプライチェーン“内”でのGHG排出削減=「カーボンインセット」の実現にもつながるとしており、企業活動全体の脱炭素化を加速させるモデルケースとなりうる。

カーボンインセットの流れ
カーボンインセットの流れ(提供:兼松)

兼松のGX戦略とスペシャルティコーヒーへのこだわり

兼松は、日本におけるスペシャルティコーヒー輸入の先駆者であり、20年以上にわたりダテーラ農園と取引を続けてきた。2005年には森永乳業のチルドカップコーヒー「マウントレーニア」シリーズ向けに同農園産の豆を供給。2009年からは、100%使用した「マウントレーニア ディープエスプレッソ」を販売している。

同社が2024年から始動した中期経営計画「integration 1.0」では、GXを主要施策の一つと位置づけており、特に「農業・食品GX」に注力。今後も食料サプライチェーンの脱炭素化と資源循環を推進していく構えだ。

森永乳業のScope3削減目標に資する取り組み

 

森永乳業は、2030年度までにScope3におけるGHG排出量を2020年度比で10%以上削減する目標を掲げており、本プロジェクトもその達成に資するものとして位置づけられている。

同社は「自然資本への配慮」を企業責任ととらえ、環境負荷の少ない原料調達や生産支援を進めており、今回の実証実験もその延長線上にある。

TOWINGが提供する「宙炭」の革新性

今回施用される「宙炭」は、TOWINGが開発した土壌改良資材で、未利用バイオマスを炭化し、微生物群を活性化させることで、炭素固定・土壌改良・作物収量向上の三位一体効果を実現する。

宙炭
TOWINGの高機能バイオ炭「宙炭」

一般的なバイオ炭とは異なり、サーキュラーエコノミーへの貢献に加えて、「ネイチャーポジティブ」という観点からも高く評価されており、GXに取り組む企業や自治体からの注目も集まっている。

コーヒー危機と企業連携による新たな挑戦

 

近年、気候変動の影響により、2050年までにコーヒー栽培可能地域が激減するとの予測が国際機関からも示されている。こうした「コーヒー2050年問題」への対応には、農園単体の努力だけでなく、サプライチェーン全体を巻き込んだ連携と技術導入が不可欠だ。

兼松・森永乳業・TOWINGの三者による本実証は、企業間の枠を超えたGXの実装として、コーヒー生産の持続可能性確保と、企業の気候戦略を融合させた先進的なモデルケースとなる可能性がある。

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ライター:

株式会社Sacco 代表取締役。一般社団法人100年経営研究機構参与。一般社団法人SHOEHORN理事。株式会社東洋経済新報社ビジネスプロモーション局兼務。週刊誌・月刊誌のライターを経て2015年Saccoを起業。 連載:日経MJ・日本経済新聞電子版『老舗リブランディング』、週刊エコノミスト 『SDGs最前線』、日本経済新聞電子版『長寿企業の研究』

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