
タニタが2月に開始した置き社食サービス「タニタカフェ at OFFICE」が、予想を超える反響を呼んでいる。導入からわずか3日で200件の問い合わせが寄せられ、健康志向の高まりと新しい働き方への対応が求められている現状を浮き彫りにしている。
タニタが目指す「食と健康」—オフィス向け社食サービスの全貌
健康総合企業タニタは、オフィス向けの置き社食サービス「タニタカフェ at OFFICE」を2月に開始した。オフィスに専用の冷凍庫を設置することで、タニタカフェのヘルシーな食事を従業員が自由に選べるという新しい形の社食だ。
企業側の導入コストは、初期費用6万6000円、月額4万9500円(いずれも税別)で、商品代は別途必要。利用者は冷凍庫から食事を選び、PayPayで決済後、電子レンジで温めるだけ。メニューはショートパスタ、カレー、スープ、スイーツなど8種類を基本とし、今後季節限定メニューの追加も予定されている。
導入のターゲットは50人以上の事業所で、関東1都7県(東京、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、神奈川、山梨)がサービス提供エリア。しかし、開始直後から全国各地の企業からの問い合わせが相次ぎ、すでに拡大の検討が始まっているという。
きっかけは機内食—タニタが蓄積した冷凍食品のノウハウ
タニタがこのサービスを開始するに至った背景には、機内食開発の経験がある。2021年から2023年にかけてJAL国際線の機内食を監修し、冷凍食品でもおいしさや食感を維持する技術開発に取り組んできた。
この経験を活かし、2022年末には自社で冷凍弁当の製造・販売を開始。試験的な取り組みとしてスタートしたものの、予想以上の好評を得たことで、「この技術をもっと多くの人に届けられないか」と考え、今回の置き社食サービスへと発展した。
タニタの企業文化—健康を軸にした経営戦略
タニタは「社員の健康が企業の成長につながる」という理念のもと、従業員の健康管理にも積極的に取り組んでいる。同社では、社員全員が体脂肪計付きヘルスメーターを日常的に活用し、健康状態を可視化する文化が根付いている。また、昼食にはカロリー制限を設けた「タニタ食堂」のメニューを導入し、健康的な食生活の実践を奨励している。
この健康経営の一環として生まれたのが「タニタカフェ at OFFICE」だ。社内での成功体験を外部に提供することで、企業全体の健康意識を向上させることを目指している。
タニタの強みは?—他社と差別化する独自のポイント
現在、オフィス向けの置き社食サービスは複数の企業が展開しているが、タニタならではの強みは「賞味期限の長さ」と「豊富な野菜の使用」にある。
タニタの置き社食のメニューは、製造から最長11カ月の賞味期限を持つ。食品ロス対策が求められる中、この長期保存が可能な仕組みは、企業にとって大きなメリットとなる。また、メニューには6~9種類の野菜をふんだんに使用。単に健康的な食事というだけでなく、食感を楽しめるよう野菜のカット方法や加熱具合にも工夫を凝らしている。
なぜタニタはオフィス向けサービスを選んだのか?—変化する働き方と新たな市場
近年、リモートワークの普及やフリーランスの増加により、従来のオフィス環境は大きく変化している。社員食堂の維持が難しくなった企業も多い中、タニタは「健康経営」という視点から、オフィスでの食事環境を改善するサービスを打ち出した。
特に、オフィス回帰の動きが一部の企業で見られる中で、「従業員の健康管理を企業がどう支えるか」が課題となっている。そこで、タニタはオフィスに専用の冷凍庫を設置し、企業の負担を最小限にしながら従業員に健康的な食事を提供できる仕組みを考案した。
さらに、今後の展開として、シェアオフィスやコワーキングスペース、さらには個人向けの販売チャネルの可能性も模索しているという。タニタの置き社食が、従来の「企業向けサービス」から「新しい働き方に対応する食のインフラ」へと発展する可能性は高い。
今後の展開—全国展開と企業の健康経営支援
タニタは今後、9月頃をめどに対象エリアを拡大する計画だ。また、企業の健康経営を支援するため、管理栄養士による健康コラムの提供や、従業員の健康行動を促進するポイント制度の導入も検討している。
この動きは、従業員の健康意識向上だけでなく、企業の福利厚生の強化にもつながる可能性がある。働き方が多様化する中、タニタが提案する新しい食事のスタイルが、今後どこまで浸透するか注目される。