「シェアリングエコノミーを推進しようという動きを感じる」と語るのは、株式会社カスタメディア執行役員CSOの中谷浩幸さん。
同社は、「シェアでエコな社会」を目指して多種多様なマッチングサイトの構築と運用を手がけてきました。
とある中央省庁向けマッチングサイトの構築をきっかけに同社とつながった株式会社NTTデータ経営研究所マネージャーの實方裕真さんは、現在は新たな経済・社会への「過渡期にある」と分析します。
多要素認証、ブロックチェーンといったテクノロジーの発展が目ざましい昨今、Web3、DAO(分散型自律組織)、現実を自由にシミュレート出来る仮想の時空からなるメタバースの世界観で展開するコミュニケーションが現実味を帯びています。
官公庁から民間まで数々のクライアントとの協働の実績を誇る両社の2人が、両社のつながりから、共に実現したい未来像、今後の展開までを語り合いました。
現場感覚とスピード感、的確な判断で「一緒に考えられる関係」を築けた
實方
株式会社NTTデータ経営研究所(以下、NTTデータ経営研究所)の地域未来デザインユニットでマネージャーをしております、實方と申します。
2002年4月に入社して以来、一貫して調査・コンサルティングに携わっています。これまで、官公庁やNTTグループを始めとする民間事業者の調査案件、コンサルティング案件に関わって参りました。
中谷
株式会社カスタメディア(以下、カスタメディア)で執行役員兼CSOをしております、中谷です。2019年11月に弊社に入社して4年目になります。
現在、2021年8月に発足したBizDev(ビズデブ、事業開発)部門で、シェアリングエコノミー、マッチングサイトの構築を通してプラットフォーマーの支援を担っています。
また、部門責任者として、お客様が使用される外部サービスや新機能開発のプランニング、社内外の体制構築も担当しております。
早速ですが、両社のつながりのきっかけは何だったのですか?
實方
中央省庁向けのマッチングサービスの運営に際して、マッチングサイトの構築および運用をカスタメディアに委託させていただきました。
そもそものきっかけは、弊社のチームメンバーのひとりがカスタメディアの手掛けたマッチングサイトを見つけてきたことです。
お坊さんと生活者とのマッチングサイト「ブッタスク」を拝見して、「こんなサービスがあるのか!」と興味を持ち、検討に入りました。
他にもいろいろなサービスを検討しましたが、他分野における実績も豊富であること、また柔軟性が高くスピーディに対応してくださる印象を抱いたことから、カスタメディアへの委託を決めました。
カスタメディアのスピード感や他分野での実績を評価されたのですね。
實方
そうですね。いろいろとやり取りさせていただく中で、立ち上げ段階からかなりウマが合ったと感じております。
カスタメディアはシェアリングエコノミーを標榜されていて、実際に多様なサービスのシェアリングやマッチングで実績を積んでおられます。
通常はAmazonのようにゼロから専用のサービスを立ち上げて大きくしていくことが一般的ですが、カスタメディアさんは裏方として各種サービスを顧客のニーズに合わせて構築できる力をお持ちです。
そのようなサービスを提供できる企業自体が、2019年、2020年当初は少なかったと思います。
中谷
今回ご協力させていただいたお仕事では、要望や使い勝手を伺った上で、いち早くカスタマイズしたシステムを構築し、ローンチするお手伝いをさせていただきました。
マッチングシステムで実現したい全ての要件を満たそうとすると、いわゆるスクラッチ開発、イチから作ることになります。
会員登録ではどのような項目を設定するか、ID・パスワードはどういった形式にするべきか、ログインできなくなったときのリマインドメールを発行するかどうかなど、いろいろな機能の積み重ねでひとつのシステムができています。
ただ、スクラッチで構築しようとすると、時間的な制限や人的コストなど、さまざまな制約に直面します。
その点、弊社は、一通りのマッチングの流れがすでに用意されているところに、設定したい項目をカスタマイズしたシステムを構築することができます。
特に官公庁の案件であれば、稼働実績の報告を含めた運用段階での考慮事項も出てくるので、そこもカスタマイズすることになります。
半ばスクラッチの要素もありつつ、必要な機能を追加したシステムを形にできることこそが、弊社の強みだと思います。
實方
今回は、既存のサービスの切り替えから新サービスの構築、提供、報告までを1年(単年度)で終えなければならない状況でした。
そのスピード感に合わせていただけるだけで、すでに安心感をもってご一緒できました。
中谷
スピーディに進められた要因としては、實方さんを始めNTTデータ経営研究所の皆さんがシステムへの造詣が深く、要件定義も決定しやすかったという要素が寄与していました。
要件を決めるにあたり、いかに公平性を担保するか、両社でやりとりを尽くしましたね。検索結果の表示順など「あるべき姿」について議論しながら進めていきました。
實方
中谷さんは営業担当者であると同時に、技術面もしっかり理解されています。
「どのくらいのスピード感で要件を満たすか」といった現場感覚も持ちあわせておられるので、的確にご判断いただけます。「一緒に考えられる」関係性を、当初から築けていたと思います。
中谷
技術者目線では「こちらの方が作りやすい」ということが出てくるものです。しかし私は、「システムは使う人、運用する人がいてなんぼ」だと思っています。
ただ、限られた時間の中でどこを優先するかは、しっかり判断しなくてはなりません。「この部分は段階を踏んで後々実現しましょう」というように、調整が必要な場面が出てきます。
そうした局面で、NTTデータ経営研究所の皆さんが柔軟に対応してくださったことも、非常にありがたかったです。
實方
マッチングサービスをローンチした後も、カスタメディアにはいろいろと相談にのっていただきました。
弊社は、事務局としてユーザーのニーズをマッチングするために「こういう打ち出し方をすればユーザーが増えるのではないか」「こうすればマッチングコンバージョン率が上がるのではないか」など、試行錯誤を重ねます。
マッチング件数を伸ばすためのこのような試みの過程で、カスタメディアには多大なご協力をいただきました。
「今、伸びているサービスは?」自治体もシェアリングエコノミーに注目
實方様は、カスタメディアとの取り組み以前からマッチングやシェアリングエコノミーに関心をお持ちだったのですか?
實方
個人的に大きな関心を持っていました。ですから、カスタメディアのサービスラインアップや方向性にも共感しましたし、アイデアマンでいらっしゃる社長とも「話が合う」と感じました。
いろいろなマッチングサービスをサポートされているカスタメディアさんに是非お聞きしたいのですが、「このようなサービス、コミュニティが伸びている」という例はありますか?
例えば「共感できるライフスタイルや価値観のもとにユーザーとサプライヤーが集い、一度きりの匿名のやり取りではなく顔の見える継続的な関係性を育てていけるサービスは伸びている」というような傾向は、ありますでしょうか。
中谷
シェアリングエコノミーの課題のひとつが、関係性が近くなったときにいかに不正利用を防止するかということです。これは難しい課題なのですが、それでも伸びているプラットフォームは確かにあります。
例えば、「隙間時間に仕事を受ける」というようなプラットフォームが伸びています。そこではお金のやりとりが発生するわけですが、依頼者からプラットフォーマーに支払いがあった後に役務者が役務を遂行し、売り上げを立てる仕組みが確立しています。
このように、不安を払拭する仕組みが明確にあれば、利用者も探すコスト、交渉するコストをかけずに安心して利用できます。今後はもっと使いやすいサービスが生まれてくるでしょう。
自治体向けの例もあります。弊社が関わった事例では、長野県伊那市のシェアリングエコノミープラットフォーム「こころむすび」のシステム提供をお手伝いさせていただきました。
ここでは、例えば不用になったチャイルドシートを欲しい方に譲れる仕組みや、生活の中でCO2削減に貢献するエコ活動を行うと「松の木〇本分のCO2削減効果」と分かるようなコンテンツなどを展開しています。
實方
その取組、とても素晴らしいですね。ご紹介いただき、ありがとうございます。貴社には、自治体とプラットフォーマーをつなぐ裏方としてかなりの活躍をされているというイメージを抱いています。
中谷
そうですね、弊社は前面に立つ企業ではありません。プラットフォーマーにどんどん前に出ていただきたいと思っています。
特にここ数年、弊社が提案できる場は広がってきています。シェアリングシティ関係の案件など、国の取り組みとしてもシェアリングエコノミーを推進しようという動きを感じています。
Web3、DAO、MFA……過渡期にある今、2人が描く未来の青写真とは?
たしかに、外部環境が追い付いてきている兆しがありますね。お二方とも、「シェアリングエコノミーでこんな未来を実現できる」という青写真があればお聞かせいただけますか?
實方
中谷さんが挙げられた事例の次の段階として、Web3(ウェブスリー)やDAO(分散型自律組織)、現実を自由にシミュレート出来る仮想の時空からなるメタバースといった世界観があって、すでに過渡期にさしかかっています。
そのような世界観のもと個人同士がつながってしまえば、もはやマッチングプラットフォームは要らなくなってしまうという矛盾も、当然抱えるわけです。
しかしやはり、「出会う場がない」「個人が欲しいものや提供したいものをやり取りする場が欲しい」といったニーズは依然存在します。
したがって、プラットフォームを継続的に維持しながら個人同士がつながれる未来が訪れることでしょう。あるいは、プラットフォームがもっと個人に寄ってくるようなことが起こると考えています。
カスタメディアさんはきっと、新技術を駆使しながらより信頼感のあるマッチング機能の構築・維持を続けていかれることと思います。
私もそのような経済・社会に参画したいですし、プラットフォームを横につなげていくことで同じような価値観を持つ人たちがつながりやすくなる構想が見えてくると良いですね。
中谷
他のプラットフォームとつなげるところまでは至っていませんが、弊社が構築したシステムがもっと広がれば、例えば「このIDひとつあれば、あれもこれもできます」と言えるような世界を実現できます。
Googleなどが一部実現されている世界観です。最近であれば、多要素認証(MFA)の技術の発達に注目しています。
弊社ではまだ一部のお客様に二段階認証を可能にした段階ですが、多要素認証や共通のIDといった技術は各プラットフォーマーへの支援にもつながる技術だと思います。
それでは、今後両社の関係をどのように発展させていきたいとお考えですか?課題も含めてお聞かせください。
中谷
ニーズはリアルなお客様から出てくるものです。
いろいろな企業とリアルにお付き合いされているNTTデータ経営研究所とのつながりを通して、さまざまなお客様の考え方を吸収させていただけるのは役得だと思います。
今後もさまざまな無理難題を投げていただき、一緒に考えていければと思います。
實方
貴社も弊社もBtoBが主になりますので、最終的にコンシューマーにリーチすることが目下の課題です。
個人的にも、コンシューマーをうまく支援したいという想いがあります。貴社に技術面でサポートいただくことで、実現できたら良いですね。
また、通貨に関しても貴社と連携したいです。ブロックチェーン、仮想通貨、暗号資産などでサービスをやり取りできるようになれば、そこにコミュニティが育っていきます。
貴社のようにプラットフォームの裏方を担う方々も、コミュニティの成長とともに発展できるのではないでしょうか。
中谷
そういった動きの片鱗はあります。例えば、実際にプラットフォーム上で発生したポイントをAmazonやPayPayのポイントとして受け取れるといった連携の実績があります。
決済系のプラットフォームや暗号通貨のプラットフォームをAPIで接続できれば、ほどなく実現できます。
弊社は専門家ではないので他社と連携しながら展開する部分ではありますが、最終的にコーディネートさせていただいて、幅広くカバーするシステムを構築できると自負しております。
實方
「カスタメディアは日本ならではの新技術を駆使する担い手」
實方
カスタメディアさんは、日本ならではのシェアリングエコノミーの在り方、マッチングや新たなWebサービスといったものを構築していくサービサーだと認識しています。
世界の中で、日本ならではの新しい技術・サービスを創出する担い手として期待を寄せています。
中谷
弊社としては、實方さんを始め、最先端の統計やコミュニケーションデザインに第一線で取り組まれている方々の頭の中をのぞかせていただいて、そのアイデアを世に放っていける拡声器のような役割を果たせたらと思っています。
實方
貴社はいろいろなお客様と新たなサービスを次々と構築されているので、「今こんなことをしています」と教えていただければ心強いですし、弊社としても応援していきたいです。
中谷
Webサイトやサービスを作るだけでなく、運用も手掛けているという点が、弊社の強みのひとつです。
弊社の立ち位置にいると、実際に利用している方々から「こうして欲しい」というフィードバックが寄せられたり、どのような使われ方がされているか見えやすかったりと、利用者からの声が集まりやすい恵まれた環境にあります。
当然、経験値も上がります。標準的な機能のアップデートも重ねつつ、次のお客様、また次のお客様へと、集合知を提供させていただきたいと思っています。
弊社の代表・宮﨑が常々申しているとおり、「シェアでエコな社会」の実現に寄与したいです。
両社が築かれた関係値の先に、新たな社会の在り方を垣間見ました。本日はありがとうございました!
◎対談者 プロフィール
・中谷浩幸(なかたに・ひろゆき)
株式会社カスタメディア 執行役員 CSO。
レンタルサーバー会社や大手企業へのWEB コンサルティング、マーケティング及びWEB システム構築のソリューション事業の経験を経て、2009年11月より株式会社カスタメディアへ入社。セールス・マーケティング部門を統括し、シェアリングエコノミーやマッチングサイト構築を通じたプラットフォーマーへの支援、外部パートナーとの連携の推進や、新規機能開発のプランニングを含めた社内外体制の構築を行っている。
・實方裕真(じつかた・ひろみち)
株式会社NTTデータ経営研究所 地域未来デザインユニット/マネージャー。
一橋大学大学院社会学研究科修了 社会学修士。2002年4月入社。国土交通省においてG空間政策に従事(2007年~2009年)。
一般社団法人社会調査協会会員、専門社会調査士、専門統計調査士。日本システム・ダイナミクス学会会員。
◎企業概要
・会社名:株式会社カスタメディア
・HP:https://customedia.co.jp/
・代表:宮﨑 耕史
・大阪本店:〒530-0017 大阪府大阪市北区角田町1番12号 阪急ファイブアネックスビル
・神戸本社:〒651-0086 兵庫県神戸市中央区磯上通6-1-17 Wembley BLDG4階
・東京支店:〒160-0023 東京都新宿区西新宿3丁目5番1号 新宿セントランドビル9F
・設立:2008年6月18日
・事業内容:ソフトウェア開発、SaaS事業、プロモーション事業、コンサルティング事業
・社名:株式会社エヌ・ティ・ティ・データ経営研究所
英文表記 NTT DATA INSTITUTE OF MANAGEMENT CONSULTING, Inc.
・HP:https://www.nttdata-strategy.com/
・設立:1991年(平成3年)4月12日
・本社:〒102-0093 東京都千代田区平河町2-7-9 JA共済ビル9階・10 階
・TEL:03-3221-7011(代表)
・Fax:03-3221-7022
・シンガポールオフィス:9 Raffles Place, #18-20/21 Republic Plaza II, Singapore 048619
・バンコクオフィス(ASEAN Business Sector):6th Floor, Column Tower, 199 Ratchadapisek Road, Klongtoey, Bangkok 10110, Thailand
・代表者:代表取締役社長 山口重樹
・事業内容:
・企業経営および行政に関する調査研究ならびにコンサルティング業務
・情報および通信システムの企画・開発に関する調査研究ならびにコンサルティング業務
・経済、社会、産業、文化等に関する調査研究ならびにコンサルティング業務
・前各号に関連する教育研修・セミナーの実施・運営、情報の提供ならびに刊行物の出版
・前各号に付帯する一切の業務