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法人のサステナビリティ情報を紹介するWEBメディア coki

社会福祉法人和みの会「和みの園」

https://nagominosono.jp/

〒245-0065 神奈川県横浜市戸塚区東俣野町1705番地

多様な人々が集う地域の拠点に

ステークホルダーVOICE 経営インタビュー
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社会福祉法人和みの会「和みの園」施設長木内菜穂子さん

「介護だけじゃない社会性を育んでもらいたい」と、職員たちへの想いを語るのは、社会福祉法人和みの会「和みの園」の木内菜穂子施設長。

横浜市戸塚区にある特別養護老人ホームには、利用者や職員だけでなく、その家族、地域の若者、親子などが、世代を超えて出入りし、制度のはざまに陥った人々にとっての“居場所”としても機能しています。


そんな“開かれた”介護施設「和みの園」には、民間業者、NPO法人、医師、学生など幅広い業界の人たちや、志を胸に秘めつつも迷いを抱えた「背中を押してほしい」人たちが、次々と訪れます。


「人と人とのつながりの力が地域を底上げする」と強調する木内施設長に、地域の交流拠点ともいうべき場所が生まれた背景と、その社会貢献活動について伺いました。

「最期までここで暮らしていただきたい」との想いで創設された老人ホーム

まずは、御社の事業内容についてお聞かせください。

木内

「和みの園」は、まだ「お看取り」という言葉も一般的でなかった2001年、横浜市戸塚区に1法人1施設の特別養護老人ホームとして立ち上がりました。

個室と2人部屋のみの、従来型と呼ばれる80床の施設で、「最期までここで暮らしていただきたい」という想いのもと、創設されました。

私自身は、まず介護職として当施設に入り、施設長になってからは14年目を迎えました。当施設で働く前は、高齢者向けの病院で相談員として勤務していましたが、そこでは今で言う身体拘束的なことが行われていて、違和感がありました。

そんなとき、今の理事長のお父様が当施設のコンセプトを考案され、私にも声がかかりました。

「和みの園」は、ご覧のとおり広い廊下があって、開放感のある施設です。預けてくださるご家族も、「ここに預けて本当に良かった」と感じてもらえるような場所です。

私は幼い頃、共働きの両親に代わって祖父母に育ててもらった背景もあり、「最期まで安心して暮らせる場所を作ることが、祖父母に対しての恩返しにもなるかもしれない」と感じました。

当施設は、「快適な生活環境と満足感を提供し、ご家族の方々にも安心できる施設運営を目指します」という運営理念を掲げています。

特別養護老人ホームとして、自宅での介護が難しい方が24時間体制の介護サービスを受けながら生活をする「本入所」を中心に、短期入所(ショートステイ)、予防短期入所といったサービスを提供しています。

通常の特別養護老人ホームと異なる点は、1階のラウンジを活用して地域交流カフェ「カフェなごみ」や「つどい食堂」といった活動を展開してきたことです。学生さんや地域の方々が訪れることのできる施設見学会や勉強会も、定期的に実施しています。

このように、地域に“開かれた”社会福祉法人である点は、当施設の大きな特色だと思います。

木内施設長の雰囲気からも、温かみのある「和みの園」の様子が伝わってきます。

木内

今でこそ活気のある施設になりましたが、じつは創設当初は「仏作って魂入れず」というような状態だったんです。

せっかく開放的な建物ができたのに、空き部屋が物置きと化していたり、職員の表情も今とは全然違っていたりして、「何のために作ったんだろう」と思ってしまうような有様でした。


「和みの園」ができた当初、私は別の部署を担当していて、もう1棟施設を建てようとしていたのですが、こっそり「和みの園」に介護職員としてもぐりこんだのです(笑)


そこから7、8カ月ほど休みなく働いて改革に取り組み、約1年半で売上も1億円ほど回復させました。

職員の志や家庭の状況に耳を傾け、「離職率の低い介護現場」を実現

介護施設

どのように立て直しを図られたのでしょうか?

木内

まず実施したことは、職員との面談でした。「介護の仕事がしたくてこの世界に入ったはずなのに、なぜこんなふうになってしまったの?」、「職場に来て楽しい?」といった問いかけから始めて、給料や職員の家庭の状況まで、じっくり耳を傾けました。

当時まだ「ワーク・ライフ・バランス」という言葉はありませんでしたが、職員たちが働きやすいシフトに組み替えたり、休暇を取りやすくしたり、きちんと生活できるようお給料を上げたりしました。


そうすると徐々に、私の背中を見てくれた職員たちが「もっと頑張れるかもしれない」という想いを口に出してくれるようになって。

今の世の中、介護職の離職率はとても高いのですが、当初から奮闘してきてくれた職員たちの多くが今も一緒に働いていて、非常に離職率が低い介護現場だと自負しています。

施設長になってからは体を壊してしまい、いろいろありましたけれど、職員たちのおかげで私も育つことができたと、感謝しています。

「介護に携わることを誇りに」。職員たちの「介護だけじゃない社会性」を育む

和みの園の職員の方々

職員の方々に対しては、どのような声かけや育成をされているのですか?

SDGs8働きがいも経済成長も
SDGs8.働きがいも経済成長も
木内

介護職は3Kのイメージが強いですが、私は当施設の職員に対して、「介護職に携わることを誇りに思ってほしい」という想いを抱いています。介護職員たちに、外に出ても堂々と働けるような「介護だけじゃない社会性」を育んでもらいたい。

職員たちは、想いがあっても「伝える」ことが不得意なので、3分間のプレゼンを宿題にするなど、自分のやりたいことを語れるようなトレーニングを課しています。


居酒屋で酔っているときでも、スマホを眺めながらでもいいので、自分の想いを語れるような練習を積んでほしい。介護業界の内外を問わず、実現したい夢があればそれを人に語り、想いを伝えられるようになってほしいと思います。


職員を育てる中で一番に意識していることは、理念の共有です。


一人ひとりと面談をして話を聞き、褒めるところは褒めて叱るところはきちんと叱ることも意識していますが、中心にあるのは「快適な生活環境と満足感を提供し、ご家族の方々にも安心できる施設運営を目指します」という運営理念。


施設長として職員の信頼を得ることも不可欠です。

理念共有と信頼関係は両輪のようなもの。理念が浸透できていて、かつ信頼関係があるからこそ、職員が迷ったときには「施設長だったらどうするだろう?多分こうやるだろう」というふうに考えてくれます。

だからこそ、敢えて施設長室は作らずに、職員が出勤してきて最初に通る玄関のすぐそばに 私のデスクを置いています。

職員が来ると必ず、挨拶、感謝、声かけを交わせるようにしたいので。そんな気持ちで職員と接していますが、よく「お母さんみたい」と言われます(笑)

◎cokiの視点
SDGs目標8は、すべての人のための持続的、包摂的かつ持続可能な経済成長、生産的な完全雇用および働きがいのある人間らしい仕事を推進している。

「和みの園」は、若者や女性職員も多い介護業界において、地域との関わりを感じながら主体性をもって働ける職場づくり、組織運営、人材育成を推進し、経済的安定と働きがいをもたらしている。

専門性にとらわれない地域交流の場づくり。横のつながりから生まれる可能性も。

地域の方々が交流できる場

「カフェなごみ」や「つどい食堂」をはじめ、地域の方々が交流できる場づくりにも尽力されています。
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SDGs1貧困をなくそう
SDGs1.貧困をなくそう
SDGs02, 飢餓をゼロに
SDGs2.飢餓をゼロに
SDGs10人や国の不平等をなくそう
SDGs10.人や国の不平等をなくそう
木内

地域交流カフェ「カフェなごみ」は、5年ほど前にスタートした取り組みです。私が職員たちとお茶会や食事会を催していたのが始まりで、あるとき職員から「地域の方々も呼ぶと楽しいのでは」という声があがって外にも開かれた場になりました。

当施設の1階ホールを利用して、ご家族や地域の方を呼んだり、近隣の特別養護老人ホームの施設長さんにもお声がけして交代で開催したりといったところから始めていきました。


回を追うごとに、ボランティアの方々や医師をされている方もいらっしゃって、皆でいろいろな話をしたり、私が作るケーキを食べていただいたりと、本当に楽しい時間と空間が生まれています。

カフェなごみ
木内

また、「カフェなごみ」の話を耳にされた特別支援学級の親御さんや先生たちが、お子さんを連れてこられるようになりました。

車椅子だと、喫茶店で楽しむのにも難しさがあるのですが、「カフェなごみ」では、食べやすいゼリーやプリン、とろみのあるジュースなどを作って提供しました。

同じ場所で、「つどい食堂」も開催しています。「つどい食堂」には、虐待にあった子どもたちが来てくれたり、引きこもりの若者が手伝いにきてくれたりと、さまざまな背景、状況にある人同士が関われる場所になっていきました。


単に「みんなで食べて美味しい」というだけではなく、人と人との交流が生まれ、そこからあらゆる可能性が広がる場だと思っています。


町内の方々がお米や野菜を持ってきてくださり、楽しく調理していたのですが、開催できない間は使いきれないので、ひとり親家庭の団体さんに寄付したりしています。

「カフェなごみ」や「つどい食堂」を始めて地域の人同士がつながるきっかけができました。

当施設には、お子さんを預かるスペースもあって、こうした活動をしていると行政から「保育園にしないか」、「学童にしないか」といった提案があったり、生活困窮の課題解決の場にしないかといったお話があったりします。

しかし私としては、「いろいろな人たちが地域に一緒に暮らしている」ということを発信したくて、敢えて専門性にとらわれない場づくりを念頭においていました。


専門性を敢えておかないことで、縦割りではなく、横のつながりが生まれています。誰もが同じ空間で、一緒に食べたり飲んだり、話をしたりできる、そんな場所へと発展しました。

行政からの提案を受けた場合と違って、補助金はいただけませんが、多様な人と人とのつながりによってさまざまなことがうまく循環し、幸い、自然と利益も生まれています。

ちょうど軌道にのったところでコロナ禍に入ってしまったのは非常に残念ですが、もう少しの辛抱だと思っています。職員たちにとっても、一緒に地域との交流を考えるきっかけになりました。

◎cokiの視点:SDGs目標2は、飢餓に終止符を打ち、食料の安定確保と栄養状態の改善を達成するとともに、持続可能な農業を推進している。

「和みの園」では、「つどい食堂」などの場づくりを通して、虐待の状況にある地域の子どもや若者が訪れ、食事をとる。米や野菜などの食材の中には、地域の農家から届くものもある。

このような活動は、地域で食材をまかない、飢えをなくす取り組みにつながっている。

また、SDGs目標10は、国内および国家間の格差を是正することを目指している。


「和みの園」は、制度のはざまにある人々に支援を届け、居場所をつくる取り組みを推進している。そこでは、年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、あるいは経済的地位その他の状況に関わりなく、多様な人々が交流する。


そんな「和みの園」の活動は、すべての人々の能力強化及び社会的、経済的及び政治的な包含を促進していると言える。

「人と人とのつながりの力」で地域を底上げ。「救われた」との言葉も。

施設2
施設3

さまざまな境遇にある方々にとっての“居場所”を提供すると同時に、人と人とのつながりが生まれる拠点になっているのですね。

SDGs17パートナーシップで目標を達成しよう
SDGs17.パートナーシップで連携を達成
木内

地域に開かれた場所になれたのは、地域のみなさまと一緒になってやってきたからこそ。底上げできるコミュニティを作っていくことは、とりわけコロナ禍で難しくなっています。

一方で、こんな時期だからこそ、企業同士の力、人と人とのつながりの力が、地域を底上げできると信じています。


「和みの園」も、誰もが出入りできる“居場所”にしたことで、何人かの方々から「救われた」との言葉をいただきました。


社会福祉法人は、身近なようでなかなか開かれた場所になりにくいです。しかし、職員と地域とをつなげてみたら、「あの施設はなんか面白そうだ」と、いろんな方々が訪ねてきてくれるようになりました。


施設の外の方々が関わることで、私たちが不器用だったり知識が及ばなかったりする部分を補強してくださり、実現したり事業につなげたりしてくれます。私たちがやりたくてもできないことについて、バトンを渡すことができるのです。


逆に、背中を押してもらいに来る方もおられます。皆さん本当は「自分はできる」と知っているけれど、ただ背中を押してもらうために、ここを訪れるのだと思います。


こうしてつながった方々も、将来的に「和みの園」を潤してくださいます。このような、人とのつながりがあってこそ、1法人1施設という小さい法人ながらもしっかり運営していけています。人とのつながりがとてもありがたく、感謝しています。

◎cokiの視点
SDGs目標17は、持続可能な開発に向けて実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップの活性化を目指している。

「和みの園」は、民間企業や大学、NPO法人などとの連携を通じて、地域交流の場を創出している。こうした活動は、さまざまなパートナーシップの経験や資源戦略を基にした効果的な公的、官民、市民社会のパートナーシップを奨励・推進し、パートナーシップを活性化していると言える。

人の挑戦を応援したい、背中を押したいと考えるようになったきっかけがあったのですか?

木内

施設長になってから、大病を患ったのです。そのとき、「明日がないならできることをやろう」という決意のようなものが生まれましたね。

本来は1カ月半ほど休まないといけないところを、2週間で退院させてもらって、忙しく働きました。東日本大震災のときにも、周囲の方々にものすごく助けられました。


限りある時間が与えられているのなら、いろいろな人にチャンスを与えよう、何かあれば私が責任と覚悟をもって救ってあげようという気持ちで、ここまで来ました。


やってはいけないこととか、本当にやめたほうがいいと思うことにはストップをかけますが、迷っている人のことは鼓舞して背中を押したいと思っています。

人材育成事業も視野に。多様な人々が“宝物”を残してくれる場所へ。

介護だけじゃない社会性

最後に、今後の課題と展望について教えてください。

木内

これからは、介護職を誇りに思える人材育成事業にも取り組みたいです。以前から抱いていた、「“介護だけじゃない”社会性」を育むことにもつながりますし、職員たちに活き活きと働いてもらいたい。

当施設には、NPO法人、株式会社、これから起業したい方々など、幅広い業界のさまざまな職種の方々が訪ねてきてくれます。


これまでは、私が話を聞いたり、聞いた後で職員に引き継いだりしていましたが、最近では職員が積極的に「面白そう」と一緒に話を聞きにきてくれるようになりました。


これからも、いろいろな方が「和みの園」を訪ねて来てくださり、私たちや職員にいろんな“宝物”を残していってくれる、そんな場所でありたいと思います。

◎企業概要
・施設経営法人:社会福祉法人 和みの会
・法人所在地:〒245-0065 神奈川県横浜市戸塚区東俣野町1705番地
・代表者:理事長佐藤健一
・事業内容:特別養護老人ホーム・短期入所生活介護・介護予防短期入所生活介護「和みの園」運営
・施設名称:特別養護老人ホーム「和みの園」
・介護保険事業所番号:1471000644号
・施設所在地:〒245-0065 神奈川県横浜市戸塚区東俣野町1705番地

◎プロフィール 
社会福祉法人和みの会「和みの園」 木内菜穂子施設長

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ライター:

1985年生まれ。米国の大学で政治哲学を学び、帰国後大学院で法律を学ぶ。裁判所勤務を経て酒類担当記者に転身。酒蔵や醸造機器メーカーの現場取材、トップインタビューの機会に恵まれる。老舗企業の取り組みや地域貢献、製造業における女性活躍の現状について知り、気候危機、ジェンダー、地方の活力創出といった分野への関心を深める。企業の「想い」と人の「語り」の発信が、よりよい社会の推進力になると信じて、執筆を続けている。

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