
福岡県糸島市を拠点に再生科学と地域づくりに取り組む一般社団法人松石量子再生研究所は、5月20日の「世界ミツバチの日」に合わせ、「八百万の蜂プロジェクト」を始動した。
同社によると、一鉢の花から蜜源を増やし、蜂・菌・花・人・地域のつながりを参加型の地図で可視化することで、日本列島の「いのちの道」を育てていくことを目指すプロジェクトだ。
参加型マップ「Bee Map」のベータ版への早期参加者を現在募集しており、7月13日には福岡市の警固神社を会場に関連イベント「REGEN DAY 01 FUKUOKA」も開催される。
蜂が減ることは、食が減ること。生態系全体のつながりが揺らぐ
近年、世界中で送粉者と生物多様性の危機が深刻化している。蜂は花から花へと花粉を運ぶ送粉者の代表格だが、農薬使用の拡大、生息環境の悪化、気候変動といった複合的な要因によって個体数の減少が世界各地で報告されている。蜂が少なくなれば受粉が滞り、植物が実らなくなり、それを食べる生き物へと影響が連鎖する。食卓に並ぶ野菜や果物の多くは、蜂の受粉なしには成立しない。「蜂を守ることは、蜂だけの話ではない」という認識が、このプロジェクトの出発点にある。
花があり、土があり、菌が働き、植物が実り、山が肥え、川や海が豊かになる。蜂はその大きな生態系のつながりを知らせてくれる存在だ。プロジェクト名の「八百万」とは、数えきれないほどたくさんのという意味の言葉で、八百万の神々と同じ日本語の感覚から来ている。八百万の蜂プロジェクトは、減っていく蜂を象徴として、蜂・菌・花・土・人・地域のつながりをまるごと再生していくことを目標に据える。
参加型マップ「Bee Map」で、小さな点を生物の回廊へ
プロジェクトの核となるのが、参加型地図「Bee Map」だ。自宅の庭に蜜源植物の鉢を置いた、学校の花壇に蜂が来た、神社の境内に蝶が舞った。そうした一人ひとりの小さな記録を地図に蓄積し、地域の「Bee Spot」を増やし、やがて「Bee Line」として日本列島をつなぐ生物の回廊へと育てていく構想だ。現在はベータ版で早期参加者を広く募集しており、特別な専門知識や設備は不要で、誰でも参加できる。
家庭、学校、企業、神社、農地、自治体。それぞれが自分の持ち場に蜜源を増やし、その点を地図でつなげていく。参加の間口は意図的に広く設けられており、できる人が、できる場所から、できる形で関わることができる設計だ。従来の環境活動が「義務や正しさ」で人を動かしてきたとすれば、このプロジェクトはむしろ「楽しく、あたたかく、みんなで参加できる再生の祝祭」をキーワードに掲げる。
初期構想ブックを無料配布、7月には福岡で祝祭的イベントも
プロジェクトの現在地と思想をまとめた「初期構想ブック」も制作された。タイトルは『一鉢の花から、日本列島のいのちの道へ——八百万の蜂プロジェクト』。蜂を入口に、食、農業、都市、企業、地域、そして人類を含めた生態系全体と、未来世代のための再生の活動についてまとめた非売品のプロジェクトブックで、希望者にはPDFで無料配布される。申し込みはプロジェクトの問い合わせフォームから行える。
7月13日(月)には、福岡市の警固神社社務所ビル4Fで「REGEN DAY 01 FUKUOKA|蜂と菌からはじまる、再生の祝祭。」が開催される。登壇するのは、ミツバチを通じて人と地球のつながりを伝え続ける船橋康貴氏と、菌・微生物・発酵・土の循環を暮らしや健康の視点からひらく中村弥和氏の2名だ。生物多様性、ウェルビーイング、食、地域、企業の社会善をテーマに専門家との対話を通じて蜂・菌・花・土の循環をわかりやすく届けるトークイベントで、参加申込みはpeatixのイベントページで受け付けている。
サステナブルを超えた「リジェネラティブ」へ。再生という出発点
プロジェクトが大切にするのは、サステナブル(持続可能)を超えた「リジェネラティブ(再生型)」という発想だ。持続可能な活動は「現状を維持する」ことを目標とするが、リジェネラティブは「失われたものを取り戻し、より豊かな状態へ向かう」ことを志向する。松石量子再生研究所の共同代表・松石圭介氏と松石裕子氏は、「このままでは持続可能な活動だけでは間に合わないかもしれない」という危機感を出発点に、再生という言葉をプロジェクトの軸に据えたという。 今、自然のつながりは少しずつ弱くなっている。花が減り、虫が減り、土が痩せ、子どもたちが小さないのちに触れる機会も減っている。八百万の蜂プロジェクトは、一鉢の花を植えるという小さな行動が、蜂や蝶の訪れを呼び、子どもたちの気づきにつながり、地域に会話を生み出し、やがて企業や学校や神社が「いのちの拠点」になるという連鎖を信じる。その小さな点を地図でつなぎ、日本列島の「いのちの道」へ育てていく。壮大なビジョンの入り口は、どこにでもある一鉢の花だ。



