
東京都中央区京橋に位置する「足と爪の専門店みんなのあし」は、「フットケアを身近に」「みんなのあしを守りたい」という想いを掲げて2021年9月1日にオープンしたサロンだ。日本人の足の健康意識の低さを変え、病気や手術を減らすという社会課題の解決を目指し、独自の「足の健康を取り戻す3本柱」に沿ったケアを展開している。本記事では、すべてのスタッフが国内資格を取得している専門性の高さや多職種との連携、そして障がい者ケアやセラピスト育成を見据えた持続可能なビジネスモデルへの挑戦について紹介する。
日本人の足の健康意識とみんなのあしが向き合う社会課題
2足歩行を行う人間において、唯一地面に接している部位が足である。これは建物で言うところの基礎(土台)であり、「第2の心臓」として血液循環にも大きく貢献している超重要部位だ。しかし、現代の日本においては、自分の足が健康なのか、正しい足のサイズや靴の選び方、履き方も知らないまま、合わない靴で足を傷つけて生活している人がほとんどである。
足の構造が崩れれば、体は必ずなんとかバランスをとろうとゆがむため、足のトラブルは全身症状に関係する。高齢社会に伴い、足首や膝、股関節、腰、首、肩、外反母趾などの不調によって整形外科は大忙しであり、姿勢の崩れは内臓の圧迫にも繋がっていく。国の医療費を減らすためには足の健康を啓発する必要があり、病気や手術になる前に足から予防できることがたくさんある。
「足と爪の専門店みんなのあし」では、こうした社会課題に対し、人生のどこかで、そしてなるべく早い段階かつ定期的に、専門家に足を見てもらうことを推奨している。お客様の声を聞くと「どこに相談したらよいかわからなかった」「こういうサロンがあることを知らなかった」という意見がいまだに多いため、同店では草の根運動として、いらしたお客様には足の大切さをお伝えしている。さらにSNSでも発信を行い、講演や症例発表の話を頂いたら参加して、少しでも多くの方に知ってもらう啓発活動を大切な仕事の一つとして取り組んでいる。お客様に自身の足のことを知ってもらい、大切に、そして足と仲良く暮らしてほしいという願いが込められている。
足の健康を取り戻す3本柱と具体的なトラブルケア
病気や手術を未然に防ぐため、同店では「足の健康を取り戻す3本柱」を具体的なメニューとして提供している。
1つ目の柱が「トラブルケア」である。その中の「爪ケア」では、分厚く硬くて切れない方、高齢で握力が弱くて切れない方、腰や股関節が悪くて切れない方、おなかが大きくて切れない妊婦さん、脚に麻痺がある方を対象としている。さらに、爪が伸びない方への人工爪の作成、皮膚に差し込みやすいカーブの強い爪のリフトアップ、爪が皮膚に差し込まないための予防ケアを行う。また「皮膚のケア」としてタコや魚の目、かかとのひびわれに対応し、「疲れやむくみケア」としてオイルトリートメントを実施している。さらに「足形トラブルのケア」では、足関節ストレッチ&テーピング、フットピラティス、医師・技師装具士・理学療法士が作成するオーダーインソールを用いて足の機能アップを目指す。
2つ目の柱は「靴・靴下の見直し」であり、靴販売やフィッティング調整を行う。3つ目の柱は「歩行・日常動作の見直し」であり、姿勢&歩行見直し教室やオーダーインソールを活用している。これらを網羅するため、ドイツ式フットケアからフットケア用品販売、靴販売、インソール販売、訪問フットケア、靴のフィッティング、フットピラティス、足部強化&姿勢・歩行見直し教室、医療機関・靴屋・治療家・PTとの連携サービス、フットケアスクール実習所、インターン実施まで多岐にわたる商品やサービスを展開している。

国内資格JPポドロジーの専門性と多職種連携の強み
日本には法的・公的な「フットケア業」という枠組みがなく、医師や専門店、ネイルサロン、リラクゼーションサロン、治療院などさまざまな人がフットケアを行ってきている。国家資格ではないため学ぶカリキュラムもまちまちで、1日で学ぶような教室もあるのが現状だ。
これに対し同店の強みは、ドイツ国家資格の「ポドロギー」をベースに、日本の法律に合わせて体系化した国内資格「JPポドロジー」を、すべてのスタッフが取得している点にある 。その場しのぎのケアをするのではなく、足や皮膚・爪の解剖学知識を生かし、その方の足の環境全体を考えた「トラブルを繰り返さないフットケア」を目指している。トラブル爪の技法も複数あり、希望や症状、生活環境に合わせて用意できる点も特徴だ。
また、足のトラブルは慢性疾患の場合も多く、生活を見直していかなければ解消しないため、専門家が粘り強く伴走・サポートする必要がある。同店では自身で対応が無理なケースにおいては多職種連携を行い、その方の足の健康を諦めない。医療機関や靴屋、治療家、理学療法士(PT)と相互連携してサポートを行っている。さらに、日本フットケア足病医学会に参加して最新のフットケアの勉強をしているほか、ドイツのポドロギーのオンラインセミナーでも最新の勉強をしており、以前ドイツに行って実習していた経験も含めて知識を蓄積し続けている。
全ての人へ届けるバリアフリー店舗と訪問活動の意義
同店が掲げる長期ビジョンの一つが、「フットケアを障がいのある方にも受けてもらえる世の中にしたい」というものである。
以前、障がいのある方々が来店したことをきっかけに、お声をあげにくいだけで足のトラブルはあるのだと気付いたという。そこで「全ての方にフットケアを身近に」を目指すべく、杖や車いすの方もお越しになりやすいよう店内をバリアフリーにし、現在の店舗へと移転した経緯がある。その後、スタッフは視覚障がい・全身障がい・強度行動障がいのそれぞれのガイドヘルパー資格を取得し、障碍者施設や作業所への訪問ケアを実践してきた。高齢者へのフットケアはニーズが表面化しケアをやる人も増えたが、障がい者へのケアはこれからだと感じており、施設でのケア活動やイベントに参加しながら活動を広げようとしている。
ここで大事なことは、単発ではなく続けて介入させてもらうことだ。ボランティアの形では入らせてもらえるかもしれないが、人のホスピタリティだけに頼っていては他に続く人が出てこない。そのため、この活動を一時的なものにせず、ビジネスとして継続して成立させられる永続可能なあり方を模索している。
修行の場を提供し持続可能なビジネスモデルへ挑む
同店の裏コンセプトは「みんなのあしはみんなのみせ」を継続し形にすることである。いろんな人が使ってくれるとよいと考え、居心地のよいリビングをテーマに店づくりを行った。この「いろんな人」にはお客様だけでなく、フットケアを生業としたい人も含まれている。
代表者は専門校での講師業務も長く務めているが、卒業した後に臨床を積める修行の場が必要であると考え、その目的も兼ねて店を構築した。そのため、普段は企業に勤めて副業として月に2・3日の時短シフトのみで入るスタッフや、看護師や介護士をしながらフットケアをできるようになりたいというメンバーがスタッフとして集まっている。シフトは基本の曜日を決めているものの、休みや出勤自体は自由である 。現在はスタッフ6名、外部委託5名、部屋貸し3名という体制を敷いている。
実際にこのような形態で運用してみると、経営上のバランスが難しく、だから誰もやっていないのかと気付いた一面もあるが、これを続け継続可能なやり方を見つけることを目指す。スタッフの自己実現の場としてもらいながら、良いフットケアセラピストを世に輩出していけるビジネスモデルを作りたいと考えている。日本国内ではニーズに対してフットケアができる人がまだまだ足りていないため、同店はこの挑戦を続けていく。




