学校にインターネットが本格的に普及し始めたのは2000年ごろです。
YEデジタルは、中小企業向けにインターネットに必要な機能を一つにまとめた「オールインワンサーバー」を提供しており、その経験から得た通信やセキュリティの技術を活かして、1990年代後半から教育現場のICT化支援を開始しました。
教育現場では、文部科学省のICT環境整備方針に従い、新たな対応が次々と求められています。
YEデジタルは、これらに伴う手間やコストの負担を軽減し、ICT化に対する不安や不便、不満を解消する「安心・安全な学校インターネット環境の提供」をミッションとし、製品機能の強化や各自治体への提案に取り組んでいます。
いよいよ始まる、学校での本格的な“通信教育”
学校におけるICT活用の始まりは1980年代のパソコン教室整備にさかのぼります。
1つの教室にデスクトップPCがおよそ20~40台設置され、児童生徒はタイピング練習ソフトや教材ソフトを使いながらパソコンに親しむことが求められました。
2000年代初頭には、その学校インターネットの整備がほぼ完了しました。
2019年には文部科学省が「GIGAスクール構想」を示し、公立小中学校に1人1台のタブレットが配布され、授業でのICT活用に適したネットワーク環境の整備が急速に進みました。
教育の目的が、“ICTを使う”ことから、“ICTを活用して学ぶ”に変わったのです。
しかし、通信回線や校内無線LAN環境、端末管理、セキュリティ対策などがひととおり整った一方で、ICT活用の面では、授業で使用するコンテンツが十分ではなく、本格的な活用は一部の先進的な学校にとどまっていました。
そのような状況の中、2024年4月から学習者用のデジタル教科書の本格的な導入が始まりました。
デジタル教科書は、クラウド上の配信サーバーにアクセスする形で使用されます。さながら“通信教育”の仕組みです。
懸念される通信遅延。授業に集中できないリスク
そのような仕組みで提供されることから、デジタル教科書は動画や音声などを活用して理解を深められるという特長があります。
一方、学校では授業中、先生の指示で児童生徒が一斉にデジタル教科書にアクセスするため、通信回線や配信サーバーに大きな負担がかかってしまうという問題も抱えています。
デジタル教科書配信に関わる企業などの努力により、軽量化が進んでいるものの、このような一斉アクセスが発生すると、回線の負荷が増大し、授業の進行に支障をきたす恐れがあります。
具体的には、「ページの読み込みに時間がかかる」「コンテンツが表示されない」などの問題が生じ、児童生徒が授業に集中できなくなる可能性があります。
最悪の場合、授業準備に時間がかかり、授業が成立しない事態も考えられます。
現場の先生方は、児童生徒の興味を引きつけ、集中させ、新たな知識を吸収してもらうために日々努力されていますが、本来支えるべき教科書が足を引っ張るリスクがあるのです。
学校ICT先進地域、鹿児島市教育委員会の取り組み
鹿児島市教育委員会は1987年、他自治体に先駆けて学校ICT推進センターを設立し、地上波デジタル放送対応テレビや電子黒板の設置、教育用コンピュータの整備などを積極的に進めてきました。
2020年から本格的に始まったGIGAスクール構想の下でも、児童生徒1人1台の端末を用いた「学習者用デジタル教科書」や学習コンテンツの活用に意欲的に取り組んでいます。
しかし、デジタル教科書やデジタルドリルを使用する際に一斉にインターネットにアクセスすると、回線に負荷がかかり、通信遅延が発生していました。
そのため、デジタル教科書の活用には、先生方が手間を取られずスムーズに授業を行える環境が必要であると考え、2023年に通信負荷軽減対策に取り組むことにしました。
単に通信回線を増強する方法もありましたが、それだけでは広い学校内で発生する回線速度のムラの問題は解決できないとそれまでの経験から認識していたため、他の方法で対策を検討する事にしました。
その結果、鹿児島市教育委員会が着目したのが「キャッシュ機能」です。
鹿児島市教育委員会が注目した「キャッシュ機能」とは?
一般的によく耳にする「キャッシュ機能」とは、PCのブラウザの機能で、一度表示したページのデータを一時的に保存し、再度同じページにアクセスした際に保存したデータを表示することで、インターネット通信を減らし、表示速度を向上させる仕組みです。
ここでの「キャッシュ機能」はサーバー機能を指します。
ブラウザと同様に一度表示されたページのデータをサーバー内に一時的に保存し、そのサーバーに接続するPCが同じページにアクセスする際には、保存されたデータを表示することで通信量を削減し、表示速度を向上させることができます。
学校では多くの児童生徒が同じデジタル教科書やデジタル教材を使用するため、「キャッシュ機能」による大きな効果が期待されます。
YEデジタルが開発した「キャッシュ機能」により約90%の通信量を削減
YEデジタルはスムーズな授業づくりを支援するため、授業におけるインターネット利用の現状を把握し、従来のキャッシュ機能を強化しました。
学習者用デジタル教科書はHTTPS通信で提供されますが、従来の「キャッシュ機能」ではキャッシュ対象がHTTPサイトに限定されていました。
デジタル教科書以外にも、授業でよく使われるNHK for Schoolや、学校に導入されている端末のChrome OSアップデート・Windows更新プログラムもHTTPSサイトから提供されるため、学校内で発生するさまざまな“一斉アクセス”の通信負荷を軽減できるよう、HTTPS通信を対象とする「キャッシュ機能」を開発したのです。
鹿児島市内の小中学校にYEデジタルの「キャッシュ機能」を設置して2023年5月から実施した検証では、デジタル教科書だけでなく、デジタルドリルの「キャッシュヒット率は平均90%以上」を達成しました。
それにより通信負荷が軽減され、授業が止まるリスクが大幅に削減されました。
また、先生方の調べものも快適に行えるようになり、想定外の効果が得られたことも評価され、鹿児島市では2023年11月から市立の小中学校38校(実証校2校を含む)において、本格的な利用が開始されました。
ICTを活用し自ら学ぶ場への転換を、教育現場の負担なく
YEデジタルが提供するのは「キャッシュ機能」だけではありません。
1人1台端末時代の「GIGAスクール構想の実現・拡充」に向けたICT環境の導入・運用・管理を支援するために、学校インターネット環境に必要な各種サーバー機能や、文部科学省の「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン(令和6年1月版)」に掲載される基本的なセキュリティ機能を1台で提供し、さらにローカルブレイクアウト(インターネットブレイクアウト)構成にも対応可能な学校ネットワークアクセス装置「NetSHAKER W-NAC」を提供しています。
ICT利用が浸透することで、児童生徒は自分の特性を生かしながら自ら学びすすめることができるようになります。
教育の質が変わっていく中で、通信が遅かったり、セキュリティに不安があったりする環境ではあってはなりません。不安定な環境は教育現場に余計な負担を増やすだけとなってしまいます。
YEデジタルは、35年以上に渡り学校向けにサービスを提供しています。常に学校市場が目指す方向と現場の状況に目を配り、ICTを活用した豊かな学びの場づくりを支援し続けます。
◎会社概要
会社名:株式会社YEデジタル
URL:https://www.ye-digital.com/
代表取締役社長:玉井 裕治
設立:1978年2月1日
資本金:747百万円(2024年5月31日現在)
従業員数:連結 721名(2024年3月1日現在)
事業内容
2003年、東証2部(現スタンダード市場)に上場。DX支援を中心に事業を展開。1978年の創業から46年目を迎える。
学校向けサービスは「実績35年以上」。学校にインターネットが接続されるようになった2000年前後から、パソコン教室整備向けのセキュリティ製品を提供し、安心・安全な通信環境づくりを支援しています。
◎執筆者プロフィール
寺西 輝高(てらにし てるたか)
株式会社YEデジタル マーケティング本部 事業推進部長
教育市場のマーケティング担当として長らく、教育現場におけるICT化を推進し、特に学校向けのインターネット環境整備支援に注力しています。
「未来の学びをつなぐ架け橋」として、教育現場が抱える課題を解決するためのソリューションを提供することを使命とし、児童生徒が自ら学び、自ら成長できる場であり続ける教育環境づくりに邁進しています。