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第14回)マススポーツイベントのSDGs 東京マラソンの取り組み

サステナブルな取り組み SDGsの取り組み
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酒井氏

毎年3月の第1日曜日に開催され、国内外から38,000人ものランナーが集う東京マラソン。私たち東京マラソン財団は、その運営を担うほか、さまざまなランニングイベントを通じた、スポーツを楽しむ場の提供、市民の健康づくり、スポーツボランティアの育成に取り組んでいる。昨年からはオリンピック・パラリンピック東京大会の「ソフトレガシー(無形資産)」として国立競技場発着の東京レガシーハーフマラソンを開催している。

ランニングイベントで持続可能な社会構築に貢献を

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東京マラソンでもSDGsの取り組みがスタートしている

スポーツとSDGsの関係性については、国連が「持続可能な開発のための2030アジェンダ宣言」で言及。「スポーツが寛容性と尊厳を促進することによる、開発及び平和への寄与、また、健康、教育、社会包摂的目標への貢献と同様、女性や若者、個人やコミュニティの能力強化に寄与することを認識する」と掲げられている。私たちもこうした認識に基づいて、ランニングイベントを通じて持続可能な社会の実現に向けどのような取組みを行っていくのか、そしてその取組みに参加者や関係者の皆さんを巻き込んでいくのかを考えながら運営にあたっている。

マラソン大会は、多くの参加者や観衆、関係者が一堂に会するマスイベントの一つであり、運営に投入する物資とその物量に応じた廃棄物が発生する。東京マラソンほどの規模のランニングイベントとなるとその物量も膨大なものとなる。例えば、給水の紙コップひとつとっても、大会当日用に主催者が準備する個数は92万個に達する。

大会で使用されるものは、開催のために準備され、その日一日使用して廃棄されるものも多い。廃棄物の削減はもちろん、環境負荷の少ない物資の使用やリサイクル、リユースを進めることが、SDGs的観点だけでなく、大会の持続可能性の点からも重要だ。

ランナーの脱ぎ捨てた防寒着をリユース

衣類をリユース
衣類をリユース

例えば、大会では多くのランナーが、寒さを凌ぐため、スタートまで防寒着を着用し、レースが始まるとそれを路上に脱ぎ捨てていく姿が恒例となっていた。脱ぎ捨てられた衣類は回収し廃棄されていたが、これらの中にはまだ使えるものも多数含まれていることから、東京マラソン2018から回収・選別し、リユースする取組みを行った。リユースに回された衣類は3,500kgに及び、これらは世界15か国以上で古着として販売され、必要とされる方々に届けられることとなった。

 今後はリユースだけでなく、回収した衣類を再繊維化する取組みの実施も検討している。

また、大会当日に沿道を彩る大会フラッグのリサイクルもしている。大会フラッグには大会ロゴと年号が記載されているため、これまでは大会期間の数日間掲出したのち廃棄していた。しかし、現在はこれを回収して障がい者就労施設に委託し、バッグや小物入れに縫製してもらって財団のオンラインショップでアップサイクル製品として販売している。販売による収益の一部は東京善意銀行に寄付し、社会福祉施設等で活用いただくとともに、微力ながら障がい者雇用にも貢献する仕組みとなっている。

SDGs関連の団体へのチャリティも

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サイクルグッズの販売も

東京マラソンを特徴づけるもう1つのSDGsの取組みが、東京マラソンチャリティである。東京マラソンチャリティは、財団に登録したSDGsに資する取組みを実施する認定NPOや公益法人への寄付を促す仕組みだ。各団体への寄付金額に応じて寄付者は任意で東京マラソンへのチャリティランナーとして出走できる。

登録している団体は、海外で活動する団体から国内の地域で活動する団体まで多岐にわたり、来年3月の東京マラソン2024チャリティでは、39の団体が参加し、これらの団体への寄付金は過去最高の8億円以上にのぼった。一回の大会チャリティで100億円近い寄付金を集めるロンドンマラソンチャリティなど、東京マラソンも加盟するアボット・ワールドマラソンメジャーズの他大会のチャリティに比べると、8億円というのは、決して大きな数字ではない。だが、欧米発の「スポーツを通じた社会貢献」という文化が徐々に浸透してきていると認識している。

給水用の紙コップ問題などマラソンイベントの課題はなお多く

最後に東京マラソン財団が昨年11月からスタートした、ランニングと環境に関する新たな取組み、グリーンマイレージプログラムについてご紹介したい。このプログラムは、ランニングイベントの参加者全員の総走行距離をマイル(1.6km)換算し、1マイルあたり100円を緑の創出や保全を行う団体の活動に財団から寄付する仕組みだ。

夏の猛暑日の増加や冬の雪不足などにより、ランニングをはじめとした屋外スポーツの実施環境は、地球温暖化の大きな影響を受けている。プログラムの目的は、スポーツを楽しむ環境を守ることやランナーへのスポーツと環境に関する啓発で、趣旨に賛同する他の主催者によるランニングイベントも対象としている。プログラムの第1号の協力企業には、走る場としての道との親和性、開発と環境保全の両立という観点から日本道路株式会社に手を挙げて頂いた。今後も企業の協力も得ながら、対象イベントを増やし、ランナーの環境保全に対する意識向上に努めていきたい。

ランニングイベントには、大会での給水用の紙コップの問題など、コスト面での制約がある中で取り組むべき課題はまだまだある。全国で開催されるマラソン大会の数は100を超えると言われており、個々の大会での取り組みの影響は小さくとも、それぞれの大会がSDGsの課題に取り組めば大きなインパクトがある。私たちの取り組みがその大きな流れを作る一端となればと願っている。

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ライター:

1973年東京都生まれ。慶應義塾大学文学部卒業後、(株)日立製作所、東京都庁を経て、2014年より一般財団法人東京マラソン財団所属。現在、経営企画室長。

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