SDGs、ESGなどのサステナビリティ経営の取り組み、SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)やGX(グリーン・トランスフォーメーション)などの持続可能な社会づくりへのシフトが加速する中、「サステナブル認証」への関心が高まっています。
企業・団体や、その製品・サービスのサステナビリティを可視化する国際認証・サステナブルラベルをはじめ、さまざまな認証制度があります。
そのため、
「実際に取得できそうな認証はなにがあるの?」
「おすすめの認証ラベル(マーク)は?」
「取得しやすいのはどれ?」
このように迷われる方も多いでしょう。
そこで本記事では、様々な業種・規模の企業でも取り組みやすい「サステナブル認証」についてわかりやすく解説します。ぜひ参考にしてください。
サステナブル認証とは?
サステナブル認証とは、
- 「企業・団体等」の組織が持続可能性を重視した運営体制があるか
- 「製品・サービス」が環境・社会・経済などに十分配慮されているか
といった「サステナビリティ指標」を基準に第三者機関が審査し認証する制度です。
そもそも”認証”とは?
認証とは「一定の行為または文書が正当な手続き・方式でなされたことを公の機関が確認、証明すること」と定義されています。
認証には主に2つの意味があります。英語では、authentication(二者間の認証)、 certification(第三者認証)です。また、IT分野では本人確認や企業やそのウェブサイトなどの正当性や真正性を示すことも認証と言われます。
本記事では、サステナブル経営を推進するための企業・団体等の組織の事業活動やマネジメントシステム、製品・サービスなどを通じた具体的な行動レベルの取り組みや、その計画・報告書などが一定の基準(規格)を満たしていることを、自社以外の第三者機関の審査を受けて証明することの意味で使用します。
サステナブル認証の種類と概要
サステナブル認証には、対象別に見ると「企業・団体」などの組織を対象にした認証、または「製品・サービス」に対する認証があります。
さらには認証を付与する機関別や、認証制度別の種類などがあります。
(1)企業・団体を対象としたサステナブル認証
企業・団体向けのサステナブル認証制度は、組織のマネジメントシステム(運営体制)が機能しているか、第三者機関が一定の基準に基づき評価して、認証審査に合格すると認定証や認証マークの付与、表彰される認証です。
企業認証と呼ばれることもあります。
日本では、経済産業省・厚生労働省・環境省・農林水産省などの省庁・外郭団体が運営する認証制度、民間の企業・団体が運営する認証制度があります。
- 環境分野に特化した「エコアクション21」
- 中小企業向けの「経営革新計画承認制度」
- 人を大切にする「健康経営優良法人認定制度(ホワイト500など)」
- 品質や環境など分野別の「ISO認証」
- 社会性の高い企業向けの「B Corp認証」
(2)製品・サービスを対象としたサステナブル認証
製品・サービス向けの認証は、サステナブルラベル、サステナブル認証マークとも呼ばれます。製品・サービスのブランディングに活用できます。
企業認証とは異なり、製品・サービスが印象の対象になります。主にサプライチェーンの全て、もしくは一部が、環境・社会・経済などに配慮されていることを証明するものです。
- エシカル消費などの参考になる環境に配慮された「エコマーク」
- 農産物の生産・加工・流通に関する公正な取引の「フェアトレードラベル」
- オーガニック食品に関する「有機JASマーク」
(3)認証機関別のサステナブル認証
サステナブル認証を発行する機関はさまざまで、下記の機関があります。
- 国際的な認証機関による国際認証
- 政府・省庁別(環境省、経済産業省、厚生労働省、農林水産省など)
- 地方自治体による認証・認定制度
- 民間の企業・団体による企業経営に関する表彰や認証制度
(4)制度別のサステナブル認証
サステナブル認証を制度別に見ると、承認(認める)、認定(認めて定める)、認証(認めて証明する)という3つの制度があります。
いずれも、認証を取得すると第三者の審査を受けて一定の基準を満たしていることが認めらるため、企業等の社会的な信用の創造、ブランディングによる購買活動の動機付け、ステークホルダーへの情報開示の信頼性を高める広報などにも重要な役割を果たしています。
また、企業間の取引の条件や、省庁や自治体の補助金・助成金や入札参加・応募、金融機関等からのサステナブルファイナンス(融資・投資)の審査時の加点や優遇がある場合もあるため、実務的なメリットもあります。
以下に、企業規模や業種・業態を問わず取得できるサステナブル認証をご紹介します。御社の事業にピッタリの認証制度や、取得できそうな認証制度は、どれでしょうか?
サステナブル認証制度(国際認証)
国際的なサステナブル認証を取得したい場合は、次のようなグローバル基準の認証制度があります。
SDGインパクト認証ラベル(SDGs)
国連開発計画(UNDP:United Nations Development Programme)が定めた「企業・事業体向けのSDGインパクト基準」に基づき、企業・団体がSDGsへの対応状況を第三者機関が認証する制度が「SDGインパクトラベル」です。
企業の意思決定にSDGの視点がどのように反映されているかが認証されます。運用に向けた活動が日本でも開始されており、今後の展開が注目されます。
認証基準となるSDGインパクト基準の主な4つの指標は、戦略、アプローチ、透明性、ガバナンスです。
- 戦略:組織のパーパスや戦略に組み込むこと
- アプローチ:基本要素をアプローチ(執行・管理)に統合する
- 透明性:どのように組織のパーパス、戦略、アプローチ、ガバナンスに組み入れているかを開示し、そのパフォーマンスを報告する
- ガバナンス:コミットメントを、ガバナンスの実践を通して強化すること
ISO認証(国際標準規格)
ISO (International Organization for Standardization:国際標準化機構)は、スイスのジュネーブに本部を置く非政府機関で、世界167の国と地域の標準となる規格を制定しています。
ISOが制定した規格をISO規格と言います。
ISO認証とは、各国の審査登録機関が、企業などの組織の「マネジメントシステム」を、顧客や国、自治体などに代わり審査し、基準(規格)を満たす(適合)と判断した場合に認証される制度です。
認証を取得するには、ISO認証機関の審査を受ける必要があります。企業や団体などの組織が、認証機関の審査を受け、審査登録機関に登録された後に、認証・登録証が発行されます。
ISO認証などのマネジメントシステムの認証の取得が国内外の企業間取引や行政の入札などの条件となる場合があります。
ISOには約2万件の規格がありますので、今回は代表的なISO認証を業種・分野別にご紹介します。
ISO品質マネジメントシステム(QMS)
ISO環境マネジメントシステム(EMS)
- ISO 14001(環境マネジメントシステム:EMS)
- ISO14020(環境ラベルおよび宣言・一般原則)
- ISO14024(環境ラベルおよび宣言・タイプⅠ環境ラベル表示・原則および手続き)
- ISO/TR14069(温室効果ガス-組織のGHG排出量の定量化及び報告)
- ISO/TS14072(ライフサイクルアセスメント)
※ISO14020およびISO14024はエコマーク認定に必要
IT・情報分野のISO規格
- ISO 20000(ITサービス :ITSMS)
- ISO /IEC 27001(情報セキュリティマネジメントシステム:ISMS)
- ISO 27701(プライバシー情報)
※プライバシーマーク認証/JISQ 15001認証は下記参照
- ISO 27017(クラウドサービスセキュリティ)
人材・教育分野のISO規格
企業の社会的責任等に関するISO規格
- ISO 22000/FSSC 22000 (食品安全マネジメントシステム:OHSMS)
- ISO 22301(事業継続マネジメントシステム:BCMS)
- ISO 26000(社会的責任に関するガイダンス:CSR)
- ISO/TS 26030(社会的責任と持続可能な開発-フードチェーンでのISO 26000の使用に関する手引)
- ISO 39001(道路交通安全マネジメントシステム:RTSMS)
- ISO 45001(労働安全衛生マネジメントシステム:OSHMS)
- ISO 50001(エネルギーマネジメントシステム:EnMS)
- ISO 55001(アセットマネジメントシステム:AMS )
ISO認証のサステナビリティ指標例(ISO30414人的資本)
- コンプライアンスと倫理指標: コンプライアンス
- コスト指標:採用、雇用、離職等労働力のコスト
- ダイバーシティ指標:労働力とリーダーシップチームの特徴
- リーダーシップ指標:従業員の管理職への信頼等
- 組織文化指標:エンゲージメント等従業員意識と従業員定着率
- 健康・安全指標:労災等
- 生産性指標:人的資本の生産性と組織パフォーマンスへの貢献
- 採用・異動・離職指標:人事プロセスにおける企業の能力
- スキルと能力指標:個々の人的資本の質と内容
- 後継者指標:承継候補者が育成状況
- 労働力指標:従業員数等
出典:Human Capital Management Standards等
<参考>国際標準化機構
Social Accountability 8000認証(人権に関する国際認証規格)
米国のNGO(SAI:Social Accountability International)による、国際人権宣言、ILO条約、すべての従業員の権利の行使及び保護のための国際規格。
世界中の工場・組織に適用される社会性の高い認証制度ですので海外に製造拠点を持つ企業は取引先や投資家などへの情報開示に活用できます。
取得する際は、主に以下のような要求事項に基づく審査があります。
- 児童労働・支援の禁止
- 強制労働・支援の禁止
- 業務における健康と安全の確保
- 結社の自由・団体交渉権の所持
- 差別の禁止
- 非人道的な懲罰の禁止
- 労働時間の遵守
- 公正な報酬
- マネジメントシステム
<参考>Social Accountability 8000(Social Accountability International)
TCFDガイダンス3.0/気候関連財務情報開示に関するガイダンス(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)
パリ協定の採択を機に投融資先の事業活動に与える気候変動の影響を評価する動きが世界的に広まる中、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」が最終報告書を公表しました。
上場企業を中心に準拠が求められています。日本でもカーボンニュートラル目標)、コーポレートガバナンス・コードの改訂を経て、情報開示の取り組みを拡充中の企業を対象に改訂されました。
上場企業でなくても、事業者がTCFDの情報開示に賛同する旨を事務局に申請することで気候変動影響を考慮した経営を行っていることを示すTCFDマークが取得できます。
「業種別の開示推奨項目」は別冊となっています。
<参考>TCFDコンソーシアム/「TCFDガイダンス3.0」(業種別ガイダンス)
CDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)認証
気候変動や温室効果ガスの排出量に関する公表を求める英国の慈善団体が管理する非政府組織(NGO)。
世界最大の環境データベースを保有しており、2022年度は全世界約18,700社(日本企業1,700社超)の企業が気候変動、フォレスト、水セキュリティに関する情報を開示し、そのうち15,000社がスコアリングを受けました。
認証を取得するには、気候変動等に関する情報開示について質問状に回答して、スコアリング評価を受ける必要があります。日本では75社の企業がAリストとして上位にランクインしています。
<参考>登録企業リスト/CDPジャパンホームページ
SBTi認証(GHG排出量削減目標設定)
Science Based Targets(SBT)は、パリ協定が求める水準に向けて企業が設定する、温室効果ガス(GHG)排出削減目標です。
SBT認証は国連グローバルコンパクトなどが提唱、長期的な科学的知見に基づく目標の設定により認定される制度です。
認定を取得するには、毎年GHGを2.5%以上の削減、5年~15年先の⽬標を設定する必要があります。事業者が直接排出するものだけでなく、サプライチェーン全体のGHG(スコープ3)の削減が必要です。
2023年9月末時点で認定取得済の企業は日本で601社。そのうち約70%の453社が中小企業です。
<参考>環境省「SBTについて」/環境省「中⻑期排出削減⽬標等設定マニュアル」
RE100認証(再生可能エネルギー)
RE100とは、事業を100%再生可能エネルギー電⼒で賄うことを⽬標とする企業連合です。
英国のCDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)とのパートナーシップにより、⽇本ではJCLP(日本気候リーダーズ・パートナーシップ)が窓口となっています。
We Mean Business(WMB:温暖化対策を推進する国際機関やシンクタンク、NGO等が運営するプラットフォーム)の取り組みの⼀つとして実施されています。
2023年12月末時点でRE100に参加している⽇本企業は84社です。
<参考>環境省「RE100について」
WMB(We Mean Business)宣言(温暖化対策推進目標)
温暖化対策を推進する国際機関やシンクタンク、NGO等が構成機関となり運営しているプラットフォーム。
経済(Economy)、エネルギー、輸送 (Transport)、環境と産業の構築(Built Environment & Industry)の4つの領域で以下の6つの活動へにコミット宣言が必要です。
- 科学に基づく排出削減⽬標(SBT) の採⽤
- 再エネ100%⽬標(RE100)
- エネルギー⽣産性の2倍化へのコミット (EP100)
- 電気⾃動⾞移⾏へのコミット (EV100)
- エネルギー⽣産性の2倍化へのコミット (EP100)
- 100%ネットゼロ鉄鋼へのコミット
参加企業は世界で4,655社(2022年)です。
<参考>環境省「We Mean Businessについて」
サステナブル認証制度(サステナブルラベル)
商品(製品・サービス)にサステナブル認証ラベルを付与したい場合は、「サステナブルラベル」があります。
特に食品などは商品パッケージ等に表示される認証マークを参考に購買の意思決定をすることができるため、エシカル消費のマーケティングにも活用しやすいというメリットがあります。
以下に代表的なサステナブルラベルをご紹介します。
<参考>一般社団法人 日本サステナブル・ラベル協会
エコマーク認定ラベル(環境ラベル)
エコマークは、製品・サービスの「生産」から「廃棄」までのライフサイクル全体の環境負荷が少なく、環境保全に役立つと認められた商品に付与される環境ラベル(マーク)です。
世界エコラベリング・ネットワーク(GlobalEcolabellingNetwork:GEN)の監査システムGENECISの認定を受け、国際的な認証ラベルの1つです。日本では公益財団法人日本環境協会が事務局となっています。
ISO14020(環境ラベルおよび宣言・一般原則)およびISO14024(環境ラベルおよび宣言・タイプⅠ環境ラベル表示・原則および手続き)に基づき審査される制度です。
<参考>公益財団法人日本環境協会(エコマーク事務局)
国際フェアトレード認証ラベル/世界フェアトレード連盟マーク(公正な取引)
フェアトレードとは、開発途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することにより、生産者や労働者の生活改善と自立を目指す「貿易の仕組み」のこと。
国際フェアトレード認証ラベル(マーク)を商品に表示することで、人権や環境に配慮したフェアトレード製品であることを消費者に一目で伝えることができます。
認定NPO法人フェアトレード・ラベル・ジャパンは、日本国内において国際フェアトレード認証ラベルのライセンス事業、製品認証事業と、普及推進活動・教育啓発活動を主に行なっています。
フェアトレード認証ラベルを取得するには、事務局による製品認証審査を受ける必要があります。
<参考>認定NPO法人フェアトレード・ラベル・ジャパン
Fair For Life認証ラベル(環境と人権)
スイスのエコロジー団体(IMO swiss AG、the Swiss Bio Foundation)によって2006年に作られた環境と人権を守るための認証基準です。
「Fair for Life認証」は、生産者の尊厳のある生活、生産者と企業、従業員と雇用者、販売者と購入者の間で、公平で平等な関係が保たれていることが認証されます。
対象となる農産物の制限がなく、貿易などの企業取引に関わらない小規模組織の生産者や、先進国などの消費地の販売者も加盟できます。
<参考>Fair For Life
4パーミル・イニシアチブ認証ラベル(農産物認証制度)
「4パーミル・イニシアティブ」は2015年にパリ協定を締結したCOP21を開催したフランスが提唱した国際活動。日本の地方自治体では2020年4月に山梨県が初めて参加した認証制度です。
4パミールとは、世界の土壌表層の炭素量が年4パーミル(0.4%)ずつ増加すると、経済活動等で増加する大気中の二酸化炭素の増加をネットゼロにできるという考え方です。
山梨県では、(1)土壌への炭素貯留量(雑草や堆肥・剪定枝などから製造したバイオ炭など)の実績を算定し基準を満たせる圃場、またはその圃場で生産された農産物とその加工品を認証する「実績認証」(アチーブメント認証)と(2)具体的取り組みについて目標を定め、土壌への炭素貯留量が確実に見込まれる計画を認証する制度です。
認証されると農産物等に県の認証マークを表示できます。
<参考>4パーミル・イニシアチブについて
MSC認証ラベル(海洋水産物)
「海のエコラベル」として知られるMSC認証は、MSC(海洋管理協議会)による認証制度。取得すると持続可能(サスティナブル)な漁業によって獲られた水産物について認証マークが付与されます。
<参考>MSC(海洋管理協議会)
FSC認証ラベル(森林認証)
FSC認証は、環境・社会・経済の視点で管理された森林からの生産物や、低リスクの林産物を使用した製品を消費者に届けるための認証制度です。
FSC認証マークは、管理体制で取り扱っていることが認められた製品にFSCラベルを付けることができます。
<参考>FSC Japan
レインフォレスト・アライアンス認証ラベル(農園認証)
レインフォレスト・アライアンス認証マークは、認証製品または原料が、持続可能性を高める社会・経済・環境の強化につながる手法を用いて生産されたことを示すサスティナブル認証です。
フェアトレードは指定された農産物の取引が対象ですが、レインフォレスト・アライアンス認証は、持続可能な農業・農園管理が対象という違いがあります。
<参考>非営利団体「レインフォレスト・アライアンス」
サステナブル認証制度(環境省)
環境省によるサステナブル認証制度には、エコアクション21があります。営業面のメリットのみならず、取引先や採用活動にも活用でき、中堅・中小事業者でも取得しやすいのがメリットです。
エコアクション21(環境経営認証)
環境省が定めた環境マネジメントシステム(EMS)の第三者認証・登録制度です。
中堅・中小企業でも取得しやすく、自治体の支援制度とも連携しているため、主に取引先の要望、環境負荷やコスト削減、CO₂排出量の削減、社員の意識向上になどを目的に導入されます。
書類審査と実地審査を受けて、承認されると認証・登録証が送付され、ロゴマークが使用できます。
認証・登録事業者数は7,471社(2023年2月)です。
<参考>一般財団法人 持続性推進機構 エコアクション21中央事務局
サステナブル認証制度(経済産業省)
経済産業省・中小企業庁は、中堅・中小企業向けの認証制度が多くあります。
新規顧客開拓、資金調達、採用活動、情報開示、経営計画の策定など、さまざまな経営シーンで実務的に有効な認証制度があります。
認証を取得すると、対外的な信用を高める効果が期待できるのみならず、補助金の申請や企業や行政との取引の推進やファイナンスにも活用できます。
価値協創ガイダンス(サステナビリティトランスフォーメーション認証)
「価値協創ガイダンス」とは、企業がステークホルダーに伝えるべき情報(経営理念やビジネスモデル、戦略、ガバナンス等)を体系的・統合的に整理し、情報開⽰や投資家との対話の質を⾼めるための⼿引です。
⾃社のビジネスモデルや戦略に重要なものを選択し、価値創造ストーリーに位置づけるなどの活⽤が可能です。
「価値協創ガイダンス」を活用してサステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)に関する情報開示資料を作成し、公表する企業は、「価値協創ガイダンス」ロゴマークを統合報告書、アニュアルレポート等に表示することができます。
<参考>・経済産業省「価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス 」
経営革新計画承認制度(経営計画認証)
経営革新計画制度は、中小企業が「新事業活動」に取り組み、「経営の相当程度の向上」を図ることを目的に策定する中期的な経営計画書を国や都道府県の承認を受ける制度です。
国や都道府県に計画が承認されると、国や自治体の経営支援策の対象企業となり、補助金申請時の加点や融資金利の優遇措置などが受けられるなどのメリットがあり、多くの企業が取得しています。
令和3年末時点で全国約10万件が承認されています。承認を取得するには、都道府県等に計画を申請し、審査を受ける必要があります。なお、承認マークは都道府県独自の対応となります。
<参考>経済産業省中小企業庁「経営革新計画承認制度」
事業継続力強化計画認定制度(BCP認証)
中小企業が策定した防災・減災のための計画を、経済産業大臣が「事業継続力強化計画」として認定する制度。
認定を取得すると、認定テーマークが付与され、税制措置、金融支援、補助金の加点などの支援策が受けられます。電子申請システムからの申請が必要です。
<参考>経済産業省中小企業庁「事業継続力強化計画認定制度」
健康経営優良法人認定制度(人を大切にする健康経営認証)
健康経営優良法人認定制度は、人を大切にする経営を率先して実践する法人向けの認定制度です。大規模法人部門(ホワイト500)、中小規模法人部門(ブライト500)、上場企業部門(健康経営銘柄)などがあります。
ホワイト500:健康経営優良法人(大規模法人部門)
『従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる法人』として、従業員や求職者、関係企業や金融機関などから社会的評価を受けることが期待できる制度です。
大規模法人向けがホワイト500です。健康経営を実践する「トップランナー」の役割が求められます。
ブライト500:健康経営優良法人(中小規模法人部門)
中小規模法人向けの健康経営優良法人の認定制度がブライト500です。
自社の健康課題に応じた優良な取り組みを実施する法人が認定されます。地域における健康経営の拡大、その取り組み事例の発信等の役割が期待されています。
中小企業が認定を受けるには、加入している保険者(けんぽ等)が実施する健康宣言事業に参加したうえで、自社の具体的な取り組みを申請し、認定審査を受ける必要があります。
健康経営銘柄
東京証券取引所の上場会社の中から「健康経営」に優れた企業を選定するものです。
健康経営を普及拡大していく「アンバサダー」的な役割として、いかに生産性や企業価値に効果があるかを分析し、それをステークホルダーに対して積極的に発信していくことが期待されています。
<参考>経済産業省「健康経営優良法人認定制度」
DX認定制度(デジタル・トランスフォーメーション認証)
DX(デジタル・トランスフォーメーション)とは、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」
国が策定した「情報処理の促進に関する法律」に基づき策定された「デジタルガバナンス・コード」を踏まえ「企業がデジタルによって自らのビジネスを変革する準備ができている状態」の事業者を認定するものです。
認定事業者になるとDXロゴマークが使用できます。企業規模や業種を問わずすべての事業者が対象で、費用も無料です。令和4年9月時点484社(者)が認定を取得しています。
認定にあたっては、オンライン申請が可能で、通年申請できます。
<参考>経済産業省「DX認定制度概要」/独立行政法人 情報処理推進機構 (IPA)
グローバルニッチトップ企業100選(GNT認証)
グローバルニッチトップ(GNT)企業とは、市場規模は⼩さいながら、世界シェアが極めて⾼い製品や企業を国が表彰する制度です。
日本には、グローバルなサプライチェーンにおいて「なくてはならない」存在となっている企業が多数存在しています。こうした世界に誇る企業を国が選定し、表彰する制度ですので、ブランディングとして有効です。
2020年は249社の公募があり、113社が選定されました。毎年実施されるわけではないため、公募のタイミングをみてエントリーする必要があります。
収益性、戦略性、競争優位性、国際性などの定量・定性的な評価指標に基づき選定されます。選定を受けるためには、中堅・中小企業は、概ね10%以上の世界シェアを保有していることが要件となります。
<参考>経済産業省「グローバルニッチトップ企業100選」/選定企業一覧(2020年)
プライバシーマーク認証/JISQ 15001認証(個人情報を大切にするPマーク認証)
プライバシーマーク認証は、適切に個人情報を保護するマネジメント体制を有する企業等に「プライバシーマーク」が付与され、事業活動で使用することが認められる制度です。
「JIS Q 15001個人情報保護マネジメントシステム」に準拠した「プライバシーマークにおける個人情報保護マネジメントシステム構築・運用指針」に企業等の個人情報保護体制が適合しているかどうかが審査されます。
「個人情報の保護に関する法律」の制定・改正により、社会的な必要性とともに取得事業者数が年々増加し、付与事業者数は、17,222社(2022年9月末)となっています。
<参考>JIPDEC/一般財団法人日本情報経済社会推進協会
サステナブル認証制度(厚生労働省)
人を大切にする経営を実践するには、厚生労働省の認証制度が活用できます。
えるぼし認定・プラチナえるぼし認定(女性が活躍しやすい企業)
「えるぼし認定」とは、女性の活躍に関する優良企業を認定する制度です。女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(「女性活躍推進法」)に基づく基準により認定されます。
えるぼし認定企業のうち、より高い水準の要件を満たす企業は「プラチナえるぼし認定」を受けることができます。
認定を受けると、自社の商品、会社案内、自社のホームページや、求人票などで、えるぼしマークが使用できます。
採用活動に活用できるのみならず、公共調達での加点、日本政策金融公庫などの金利優遇等の措置が受けられます。
認定を取得するには、事業者としての行動計画の策定・届出後、「女性の活躍推進企業データベース」や自社のホームページに情報公開を行い、審査を受けて認定されます。
<参考>厚生労働省「女性活躍推進法特集ページ」/えるぼし認定企業一覧
くるみん認定(プラチナくるみん、トライくるみん)(子育てしやすい企業)
くるみん認定は、「子育てサポート企業」として、厚生労働大臣の認定を受けた企業が使用できるマークです。
プラチナくるみん認定は、くるみん認定よりも高い水準の取組を行っている企業を評価し、継続的な取り組みを促進するための制度です。
なお、くるみん認定基準の改定に伴い、新たに「トライくるみん認定」が創設されました。(トライくるみん認定の認定基準は令和4年度制度改正前のくるみん認定と同様)。
認定の申請にあたっては、事業所の所在地を管轄する都道府県労働局雇用環境・均等部(室)までご相談ください。
<参考>厚生労働省「くるみん認定」/「くるみん認定・プラチナくるみん認定企業」一覧
都道府県労働局雇用環境・均等部(室)問い合わせ先一覧
ユースエール認定(若者の採用・育成に積極的な企業)
ユースエール認定制度は、若者の採用・育成に積極的で雇用管理が優良な中小企業を厚生労働大臣が認定する制度です。
認定を受けることで、ハローワークでの重点PR、認定企業限定の就職面接会等への参加、低利融資、公共調達の加点などの支援を受けることができます。
認定を取得する前に、認定到達度診断もできますので、事前にチェックしてみてください。
<参考>厚生労働省「ユースエール認定制度」/ユースエール企業認定到達度診断
安全衛生優良企業認定(従業員の安全・健康に配慮する企業)
安全衛生優良企業とは、労働者の安全や健康の確保に積極的に取り組み、高い安全衛生水準を維持・改善している企業として、厚生労働省から認定を受けた企業のことです。
認定を受けるためには、過去3年間労働安全衛生関連の重大な法違反がないなどの基本事項に加え、労働者の健康保持増進対策、メンタルヘルス対策、過重労働防止対策、安全管理など、幅広い分野で積極的な取組を行っていることが求められます。
認定を受けると、認定マークを利用することができます。本社所管の労働局への申請が必要ですが、事前診断ができますのでチェックしてみるとよいでしょう。
<参考>厚生労働省「安全衛生優良企業制度」/職場のあんぜんサイト
サステナブル認証制度(農林水産省)
農産物、食品に関しては日本では農林水産省の認証があります。
有機JAS(有機食品の検査認証マーク)
農薬や化学肥料などの化学物質に頼らないことを基本として自然界の力で生産された食品を表す有機JAS認証マーク。農産物、加工食品、飼料、畜産物及び藻類、酒類に付けられています。
有機JASマークが付いていないものには、「有機」「オーガニック」などの表示をすることはできません。
コーデックス(FAO/WHO 合同食品規格委員会)のガイドラインに準拠していますので、アメリカ、欧州、オーストラリア等とほぼ同様の基準に基づいています。
農林水産省共通申請サービス|eMAFFでオンライン申請が可能です。
<参考>農林水産省「有機食品の検査認証制度」/農林水産省共通申請サービス|eMAFF
サステナブル認証制度(地方自治体による認証)
地方自治体(都道府県・市町村)が産学官金連携で地方創生を推進するために、サステナブル認証・登録制度を整備しています。
SDGs登録・認証制度は、金融機関からサステナビリティ・リンク・ローン(SLL)などで事業資金の調達を検討する際の優遇条件になる場合がありますので要チェックです。
SDGs登録・認証等制度(都道府県・市町村等、サステナブルファイナンス等)
地方自治体や金融機関が、積極的にSDGsに取り組む地方企業を認証する制度です。
地方公共団体、地域の経済団体、金融機関、大学等のさまざまなステークホルダーが連携し、地域への資金の還流と再投資による自律的好循環の形成につなげようとする取り組みです。
地方自治体が企業のSDGsへの積極的な取り組み等の非財務情報などを審査し、登録・認証します。
企業にとっては、地方自治体によるSDGs融資などの活用をはじめ、地域金融機関からのサステナブルファイナンス(SDGsやESG関連の投資・融資等)の推進、ビジネスマッチングサービスの提供が受けやすくなります。
認定を取得するためには、各自治体に申請する必要があります。最寄りの自治体がSDGs認証に取り組んでいるかどうかは、登録認証等制度 構築自治体一覧を参考にチェックしてみてください。
<参考>地方創生SDGs金融調査・研究会/地方創生SDGs取組達成度評価項目一覧
登録認証等制度 構築自治体一覧
サステナブル認証制度(企業・団体による認証)
民間企業・団体が運営する認証制度です。企業の取り組みを表彰する制度や、実際のステークホルダーの評価を反映する認証制度などがあります。
B Corp認証(国際認証)
B Corpとは、米国の非営利団体が運営する、社会性の高い会社であることを証明する国際認証制度です。
世界89の国と地域で6266社、日本では14社(2022年8月)が認証されています。企業規模にかかわらず、上場企業から中堅・中小企業・個人事業主も対象となります。
約200の審査項目があり、書類提出、ヒアリングはすべて英語が実施されます。審査基準も厳しく、さまざまな企業努力が求められます。
申請はB corpのホームページからも可能ですが、海外事務局による審査・面接などもありますので、コンサルタント等の申請サポートを受けるほうがスムーズかもしれません。
cokiサステナブル認証(ステークホルダーを大切にする企業認証)
企業認証制度「cokiサステナブル認証」は、「ステークホルダーを大切にする会社」を認証する企業認証制度です。認証された企業には、coki認証マークが付与されます。
お客様、従業員とその家族、取引先、金融機関、株主、地域社会などのさまざまな「ステークホルダーの声(評価)に基づき企業を評価・認証するため、財務諸表には現れない本当の企業の価値や存在意義(公器性)を「見える化」することができます。
企業規模・業種・業態にかかわらず、社会から必要とされる「いい会社」であることを社内外に示すことができます。
審査は、ステークホルダーへのヒアリングやアンケート等の第三者評価が中心です。
ステークホルダーを巻き込んでサステナブル推進活動を展開するため、ESG経営への取り組みの情報公開や、多様なステークホルダーのエンゲージメントの向上を図ることができます。
また、ステークホルダーの声はメディアを通じて口コミ情報として社内外への情報公開に活用できるため、ESG経営に関するIR(情報公開)資料、営業・採用ツールの制作などのサステナビリティ推進部門の活動を効率化することもできます。
申請にあたっては、cokiサステナブル認証にエントリーしてください。
日本でいちばん大切にしたい会社大賞(人を大切にする企業)
法政大学大学院の坂本光司教授が提唱する「人を幸せにする経営」を実践する企業を審査し、表彰する制度です。「人」とは、従業員とその家族、外注先・仕入先、顧客、地域社会、株主です。
応募資格は、過去5年以上、リストラ、労災、一方的な取引先へのコストダウン要求や支払い遅延をしていないこと、障がい者雇用に積極的で、かつ営業黒字であることなどの条件に全て該当している必要があります。
審査には、財務・非財務情報による書類審査と、ヒアリング調査があります。
<参考>「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞
日本経営品質賞(顧客満足度経営)
日本経営品質賞は、「顧客満足」に関する研究・実践を進めていた大手企業や公益財団法人日本生産性本部が中心となり創設された表彰制度です。約25年の歴史があります。
審査は、経験の異なる多様な実務家による審査チームのディスカッションを通じて、顧客価値経営の実現に向けた変革に役立つ評価レポートの作成を通じて審査され、判定委員会、日本経営品質賞委員会を経て、良質なモデルケースとしてふさわしい企業が受賞組織が決定します。
<参考>日本経営品質賞
働きがい認定企業(働きがいのある企業)
世界中で働きがいのある企業ランキングを発表しているGreat Place to Workは、「働きがい」に関する従業員・経営者へのアンケート調査等を実施し、一定水準に達していると認められた会社や組織をメディアで発表する活動を世界約100カ国で実施する専門機関です。
日本では、働きがいのある会社(総合、女性ランキング、若手ランキング、都道府県ランキングなどを発表しています。
エントリーするには、従業員数等に応じて、ライト、ベーシック、スタンダード、アドバンス、プレミアなどの有料メニューに申し込む必要があります。
<参考>働きがい認定企業/2023年版 日本における「働きがいのある会社」 ベスト100
まとめ:企業・団体がサステナブル認証を活用するには?
サステナブル(サステナビリティ)認証とは、
- 「企業・団体等」の組織の運営が持続可能性を重視した体制か
- 「製品・サービス」の環境・社会・経済面のバランスが重視されているか
といった「サステナビリティ指標」を基準に第三者機関が審査し認証する制度です。
サステナビリティ経営への取り組みを情報開示する目的は、企業・団体等が、「社会の公器」として環境配慮、社会的責任、財務的基盤も含めた持続可能性を有することを社会に発信し、ステークホルダーからの評価などのフィードバックを受けながらよりよい方向に発展させていくプロセスです。
サステナビリティレポート等での情報公開は、社会的な存在意義(パーパスや公器性)を表明し、活動実態がそれに伴ったものであることをエビデンスをもって示すことができるため、企業・団体の社会的な信用をより高め、取引や購買活動の動機付となるブランディングにも有用です。
このような意味で、サステナブル認証は、サステナビリティ経営を推進するために欠かせない仕組みと言えるでしょう。
認証制度を自社の戦略に有効活用するためには、
- 自社を取り巻くステークホルダーを巻き込み(参加型)
- SDGsやESGなどサステナブルな取り組みの積極的な情報開示を行い(透明性)
- 社会基準と照らし合わせて自らを評価し、第三者認証を受け(普遍性・客観性)
- ビジネス面での相乗効果を発揮させながら(経済性)
- 長期的な視点で環境変化に適応し、より良い企業へと発展させていく(持続可能性)
このようなアプローチが重要です。
いずれの認証を取得しても、ステークホルダーとのコミュニケーションを通じて収集した声を自社を映す「鏡」として活用し、長期的な視点で環境変化に適応すべく、不断の改善・イノベーションに向けた活動を継続していかなければなりません。
coki(公器)では、ステークホルダーの声(評価)をさまざまな形で可視化することで、サステナビリティレポートやサステナブルファイナンスに活用できる「サステナビリティ推進」に必要な非財務情報の取得、第三者評価、サステナビリティレポートや統合報告書の作成など情報公開までワンストップでサポートすることが可能です。
もし、サステナビリティ認証の取得にお悩みでしたら、下記の無料相談をご利用ください。